地球に住むわれわれにとって、最も身近な天体は月ですが、その内部構造、特に中心の核がどのようになっているのかは、これまではっきりとはわかっていませんでした。しかし最新の研究では、新たな発見が報告されています。
月の内部には、地球の重力との関係で発生する潮汐力によって加熱された液体の外核が存在することが、1990年代の研究で示されています。ただ内核に関しては、それがどれぐらいの大きさで、どのような性質を持つかといった詳細は解明されていませんでした。
フランス国立科学研究センター(CNRS)、コート・ダジュール大学、コート・ダジュール天文台、ソルボンヌ大学、パリ天文台(PSL)などからなる研究チームは、いまから約半世紀前のアポロ計画で行われた、月に人工的な地震(月震?)を起こす実験によって残されたデータと、月の回転の不規則性に関する研究を組み合わせた調査分析を行いました。そして、月の内部構造がどうなっていれば、これらのデータが取得できるかを判断するモデルを構築しました。
その結果、月の内核は月全体の大きさの約15%、直径にして500kmほどの大きさで、ほぼ鉄と同じ密度を持つ固体の金属でできたコアがあることが判明したと、研究チームは報告しています。またチームは、コアのサイズが小さいため、これまでの研究でなかなかその存在がはっきりしなかったとも述べました。
研究チームは、今回の研究結果は、かつて地球の約100倍もあった月の磁場がどのようにして消失してしまったのかを理解するのにも役立つと考えています。
ちなみに、1998年に打ち上げられたNASAのルナ・プロスペクター探査機による磁場・重力場センサーを用いた観測から、月の内部には金属(またはそれと同等の重い物質で形成される)コアがあり、その大きさは約200~500kmと推定されていました。今回の研究結果は、この推定値とも大体合致しているようです。