テスラのイーロン・マスクCEOは、テスラ関連の一部ツイートにつき会社側の事前承認を義務づける米SEC(証券取引委員会)との和解を不服とした異議申し立てを、米第2巡回区控訴裁判所に却下されました。
同法廷の裁判官らは、マスク氏が事前の承認なしにツイートする権利を維持したいと望んだのであれば「(SECの)告発に対して防御する権利」または「別の和解を交渉する権利」があったが、そうしないことを選んだとの裁定を下しています。
この訴訟の始まりは、2018年8月にマスク氏が突然テスラの株式を買い戻して非公開化すると述べ、「そのための資金は確保した」とツイート。しかし非公開化は行われず、SECはマスク氏が投資家を欺いたとして提訴したことです。
結局マスク氏は会長職を辞任して罰金2000万ドルを支払い、それに加えて重要情報を含むツイート等を行う前には社内の事前承認を求められるとの和解に合意しています。ツイートをするに当たりお世話係が必要ということで、「Twitterシッター(sitter)」制度と呼ぶメディアもありました。
しかし2019年2月にマスク氏がテスラの2019年内生産台数に関するツイートをした際、SECは投資家に影響を与える情報にもかかわらず会社側の事前承認を得なかったとして再び提訴。和解に違反したとして法廷侮辱罪だと主張していましたが、同年4月には再び和解に達しています。
そして前回は「誰の承認を得るのか」曖昧だったため、改めて証券分野での経験が豊富な顧問弁護士の承認を得るよう文書に明記した上で、事前承認が必要な具体的な項目(財務状況や合併・買収など)を書き出したことで、マスク氏はそれ以外のことは自由にツイートできる自由を得ているしだいです。
なお2019年の訴訟では、SECは裁判所が命じた事前承認ポリシーが有効になった後も、マスク氏は数ヶ月にわたり承認を得ないままツイートしていたと主張して「唖然とさせられた」と述べていました。
話はそれで終わりではなく、2022年にマスク氏は弁護士を通じてSECが和解を悪用し、米憲法修正第1条が規定する言論の自由を侵害していると主張。そして2018年の和解を無効にすべく上訴をしたものの、米連邦地裁により却下。この判決を不服として、今回の第2連邦巡回控訴裁判所に控訴したという経緯です。
一時は「言論の自由絶対主義者」を自称していたマスク氏だけに、言論の自由を守るために法廷闘争を続けるのかもしれません。しかし、判事らによる「和解が不満であれば、そのときに徹底的に争って和解に達するべきではなかった」という指摘をどう覆すのか、引き続き見守りたいところです。