アップルの初AR/VRヘッドセット、製造コストは約1500ドルでMeta Quest Proの2倍説が浮上

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Kiyoshi Tane

Kiyoshi Tane

フリーライター

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著書に『宇宙世紀の政治経済学』(宝島社)、『ガンダムと日本人』(文春新書)、『教養としてのゲーム史』(ちくま新書)、『PS3はなぜ失敗したのか』(晋遊舎)、共著に『超クソゲー2』『超アーケード』『超ファミコン』『PCエンジン大全』(以上、太田出版)、『ゲーム制作 現場の新戦略 企画と運営のノウハウ』(MdN)など。

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アップルが長年かけて開発したAR/VRヘッドセットは、ようやく6月の世界開発者会議WWDC23にて発表されることが有力視されています。


なにより注目が集まっているのが、その予想価格の高さでしょう。約3000ドル~4000ドル(40万円~54万円)と複数の情報源が伝えており、競合他社のヘッドセット製品をはるかに上回るものです。それでも、非常にリッチな部品をふんだんに詰め込んでおり、この価格でも損益分岐点ギリギリとの報道もありました

実際に、どれほど製造コストが掛かっているのか? 全てのパーツ代や組立費用などを合計すると、1台あたり約1500ドルだと中国の著名なXR(ARやVR、MRを総合した概念)関連アナリストらが主張しています。

YouTuberでVR関連リーカーのBradley Lynch氏は、中国の主要アナリストらがアップル製ヘッドセットのBOM(部品表)コストが約1500~1600ドルと報告しているとツイート。BOMとは「どの部品を使い、どう構成されているか」をまとめたもので、Lynch氏は「Meta Quest 3」に関する情報を発信していたこともあります。


その根拠となるのが、1つは中国Minsheng Electronics(マイクロモーター専門メーカー)が専門家を招いてヘッドセットを分析したというWeChatへの投稿です

それによればマイクロOLEDディスプレイは280~320ドル、14個ものカメラモジュールは160ドル、組立に110~120ドル、外部バッテリーパックは22~25ドル、組立費用は110~120ドル……と足し合わせていくと、部品総コストは1400ドル。これに輸送費を含めると、約1600ドルという見積りです。

またVR/AR/MR業界の研究機関Wellsenn XR(XR技術関連ニュースサイトXR Daily News経由)からのレポートでは1509ドルとの予想で、上記のBOMとほぼ一致しています。

最後に中国の投資家向けポータルSnowball Financeの分析では低めとなっており、輸送費を除けば約1290ドル~1300ドル。ヘッドセットの量産は2023年第3四半期、つまり7月~9月に開始され、製品名は「Apple Reality Pro」になるかもしれないと付け加えています。

また、添付されている予想レンダリング画像も非常に興味深いところです。これまでの「スキーゴーグルのようなデザイン」や「腰に下げる外付けバッテリー」の噂話と合致するものとなっています。

さてLynch氏のツイートに戻ると、このBOMはMeta Quest Proの約2倍だと指摘しています。梱包や輸送費、マーケティング費用を含めても総コストは3000ドルをはるかに下回りそうですが、それでも他のアップル製品よりも低いマージン率(たとえば米国価格1099ドルのiPhone 14 Pro Max(128GB)のBOMは464ドルとの見積もり)に留まるようです。

もっとも、アップルの社内事情に詳しいMark Gurman記者は、アップルはヘッドセット開発に足かけ7年、年間10億ドル以上の予算をかけたと述べていました。それだけの投資を注ぎ込んでいれば、価格3000ドルでも損益分岐点ギリギリという説は納得できそうです。

《Kiyoshi Tane》

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著書に『宇宙世紀の政治経済学』(宝島社)、『ガンダムと日本人』(文春新書)、『教養としてのゲーム史』(ちくま新書)、『PS3はなぜ失敗したのか』(晋遊舎)、共著に『超クソゲー2』『超アーケード』『超ファミコン』『PCエンジン大全』(以上、太田出版)、『ゲーム制作 現場の新戦略 企画と運営のノウハウ』(MdN)など。

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