カリフォルニア工科大、宇宙空間でのワイヤレス送電に初めて成功。地上向け電力信号も確認

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Munenori Taniguchi

Munenori Taniguchi

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カリフォルニア工科大学の宇宙太陽光発電プロジェクト(SSPP)が、1月に打ち上げた宇宙太陽光発電実証機(SSPD-1)が、電力をマイクロ波に変換してワイヤレス伝送する実証機器MAPLEを使い、初めて宇宙空間におけるワイヤレス電力伝送に成功したと発表しました。

地上における太陽光発電は、クリーンエネルギーとして普及しているものの、天候によって発電能力が左右され、夜間は発電できないといった、避けることのできない制約があります。しかし、常に太陽の光を受けることができる宇宙空間でなら、安定で高効率な発電が可能。SSPPは、地上で太陽光パネルを使って発電するのに比べて、8倍もの電力を得ることができる可能性があると述べています。

この安定して作り出される電力を地上で利用するために研究されているのが、マイクロ波を使ったワイヤレス送電技術です。SSPD-1に搭載されているMAPLE(Microwave Array for Power-transfer Low-orbit Experiment)は、柔軟かつ軽量に作られたマイクロ波パワートランスミッターアレイで、宇宙空間におけるワイヤレス送電実験を行うためのものです。

MAPLEは電力をマイクロ波に変換して送出する送信アレイと、約1フィート(30.48cm)の間隔を開けた位置に2つの受信アレイを備えており、太陽光パネルからの電力を送信アレイから送出し、受信側はこれを直流に変換してLEDを点灯します。また送信アレイでは個々の送信機感の干渉を利用して、可動部品なしに電力を伝送するビームの焦点や方向を変えることができます。

今回の発表では、この機能を利用して実際に2つの受信側それぞれのLEDを個別に点灯させられることを確認しました。プロジェクトは、地上でのマイクロ波によるワイヤレス送電は確認済みでしたが、宇宙空間でこれを確認できたのは初めてのことだと述べています。

実験では、MAPLEから地上に向けてマイクロ波信号を送信する実験も行われ、カリフォルニア工科大学のパサデナキャンパスにある受信機でその信号の受信にも成功しています。受信信号はSSPD-1の軌道上の動きにより予想された時間と周波数で観測されました。

なおMAPLEは密閉されていないため、将来の大規模宇宙太陽光発電設備が晒されるであろう、極端な温度変化やその他の宇宙環境下でも、送電が可能であることも確認されました。

現在はまだコストなどの課題のため、この技術を実用化するまでには至りませんが、将来的に実用化されれば、地上で無限に安定したクリーンエネルギーが得られるようになる可能性があります。ワイヤレスで送電できるということには、発電所から遠い地域に電気を運ぶための送電網を敷設する必要がなくなるというメリットもあり、現在でも電気が通っていないような地域の電化もいまよりはるかに簡単になるはずです。

ちなみに、SSPD-1には、MAPLEの他にDOLCEおよびALBAと呼ばれる2つの主要な科学機器が搭載されています。DOLCEはDeployable on-Orbit ultraLight Composite Experimentの略で、6×6フィートの大きさをもつモジュール式宇宙船のアーキテクチャ、パッケージング方式、展開メカニズムを実証するためユニットです。もう一方のALBAは、32種類の太陽電池を搭載し、過酷な宇宙環境で最も効果的に機能する種類がどれかを検証するためのもの。記事執筆時点ではSSPPとALBAの試験は進行中ですが、DOLCEについてはまだ開始していません。ただし、これも数カ月の間には実施され、結果が得られる予定とのことです。

ちなみに、宇宙からのワイヤレス送電については日本のJAXAも実現を目指して技術開発を進めており、2025年度を目標として、宇宙空間から地上への送電実験を行うことを計画しています。


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《Munenori Taniguchi》
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