緑色の象のアイコンで日本でも人気の高いオンラインメモアプリ「Evernote」が、ほぼすべての業務をヨーロッパに移転するため、北米およびチリの従業員のほとんどを解雇したことが報じられています。
これまでサンフランシスコを本拠地として事業を展開してきたEvernoteは「記憶をすべて肩代わりする」「第二の脳」というコンセプトを掲げ、人々の生活から仕事に至るまであらゆる事柄をメモ(ノート)として記録することを目指したアプリケーションです。
しかし企業として成長するにつれ、Evernoteは当初のコンセプトやユーザーのニーズから微妙に外れた「Evernote Food」や「Evernote Hello」といったアプリをリリースしたり、さらにはEvernoteブランドで本物のノートや手帳、財布、衣類やそれらを入れて持ち運ぶリュックといった文具・生活用品を販売し始めたりしてユーザーを困惑させ、その一方で収益の柱であるべきEvernoteアプリはバグの増加やサポート体制の脆弱さといった問題をなかなか解消できていません。
また無料プランで使用可能な連携デバイスの数を著しく制限したり、月間のアップロード容量の制限を厳しくしたことなども、ユーザーにとっては嬉しいものではありませんでした。マイクロソフトのOneNoteなどへの離脱も目にするようになってきました。
その後、2018年には業務コラボレーション機能をもつ「Evernotes Spaces」を発表したものの、この分野ではすでにSlackやG Suite(現Google Workspace)などがシェアを堅固なものにしていました。
方向性の見えないアプリの整理や方針転換などで、Evernoteはこれまでも何度か従業員の解雇を実施し収益の改善を目指しましたが、昨年11月には、イタリアのアプリ開発企業Bending Spoonsへの売却を発表するに至っています。当時のEvernoteの広報は「長期的にみて持続不可能」な状況になった結果の判断だと述べていました。
Bending Spoonsのルカ・フェラーリCEOは、今回の北米および南米での従業員の解雇は、Evernote事業の拠点を欧州に移すための準備だと説明し「今後は、欧州を拠点とする成長を続ける専任チームが、引き続きEvernote製品の所有権を引き継ぐことになる」「欧州に業務を集中させることで、効率が大幅に向上する」と述べています。また「従業員の多くは買収以来、Evernoteにフルタイムで取り組んでいる」としています。
しかし、NotionやObsidianといった競合サービスが勢力を拡大するなかで、Evernoteをどのようにして盛り上げていくのかについては、フェラーリCEOは述べていません。
根強く、長年このアプリを使いつづけてきたユーザーは「Evernoteに対する私たちの計画は、これまでと同様に野心的」だというフェラーリ氏の言葉を信じ、かつてのApp Storeド定番アプリの再興を待ちたいところです。あっ、待っている間に代替になりそうなアプリを下調べておくと良いかもしれません。