NASAは、2022年に次世代宇宙服の開発を発注したAxiom SpaceとCollins Aerospaceの2社に対する契約を拡大することを発表しました。
2022年の発注では、Axiomに対して月面探査用、Collingには宇宙ステーションでの船外活動用の次世代宇宙服をそれぞれ2億2850万ドル、9700万ドルで発注していましたが、今回は発注済みの宇宙服の開発はそのままに、互いの受注項目を入れ替え新たに宇宙服を追加で発注するという内容。
つまり、2社は最終的に月面探査用と宇宙ステーション用、両方の次世代宇宙服を開発する格好になりました。NASAは声明の中で、初期の設計作業を完了した後、さらなる宇宙服の開発のためのオプションを検討すると述べています。
それぞれが重複する格好で次世代宇宙服を開発することには無駄があるような気もしますが、NASAはこうした競争的なアプローチを採用することで「冗長性を高め、将来の能力を拡大し、宇宙経済へのさらなる投資が行える」と述べています。
実際のところでは、もしも一方の会社が設計した宇宙服に不具合が見つかった場合に、もう一方の宇宙服を選択する機会を飛行士に提供できるメリットが大きいでしょう。
また2社ともすでに設計が進んでいる宇宙服の仕様変更バージョンを作るだけで済むため、何もない状態から開発をするよりも短い期間で完成させられるはずです(もちろん、月面と低軌道では環境条件も多少異なるとは思われますが)。
また今回の実質的な契約拡大は、2社にとっても今後の計画に好都合な面もあります。たとえばAxiomは独自の商業宇宙ステーションの開発計画も進めており、そこでのメンテナンスや顧客からの要件対応に船外活動(EVA)が必要になったとき、今回のNASAの追加発注で開発した宇宙服を流用することができます。
Axiom Spaceは、3月にはもともと受注していた月面探査用宇宙服のプロトタイプを公開しています。その宇宙服は間接部の自由度が高く、ヘルメットには高解像度カメラと照明が装着されていました。
一方、Collinsのほうも、NASAからEVA用次世代宇宙服の開発契約を獲得する以前から、月面探査用宇宙服の設計開発を目指しており、その成果物を新たな受注に活用できると考えられます。
CollinsのEVAおよびヒューマン・スペース・モビリティ・システム開発ディレクター、デイブ・ロメロ氏は「次世代のEVA宇宙服の設計は、月面ミッションとほぼ90%の互換性がある」「今回の受注により、月面ミッションに適する次世代宇宙服の改良を継続するための支援が得られることになるだろう」と述べています。