新SNS『Threads』のTwitter超えは時間の問題か。Instagramから受け継いだ設計の差 (本田雅一)

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本田雅一

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ジャーナリスト/コラムニスト

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ネット社会、スマホなどテック製品のトレンドを分析、コラムを執筆するネット/デジタルトレンド分析家。ネットやテックデバイスの普及を背景にした、現代のさまざまな社会問題やトレンドについて、テクノロジ、ビジネス、コンシューマなど多様な視点から森羅万象さまざまなジャンルを分析。

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Twitterユーザーのジレンマはいつまで続くのだろうか。Twitterに起きていることを考えれば、日本で人気の高いこのSNSは終焉へとむかうのかもしれない。

Twitterを都合の良い発信道具にしてきたユーザーにとって悲観的な状況だが、よく似た短文SNSのメタ・プラットフォームのThreadsに高い期待を持つTwitterユーザーも少なくないだろう。

メタはTwitterが持ち合わせていた爆発力や手軽さ(これらが検索で”現在”を知るメディアとしての特徴を際立たせていた)を引き継ぎながらも、無責任な誹謗中傷など負のエネルギーを膨張させない工夫を織り込むためのサービス設計、運用にチャレンジしようとしている。

Twitterに比べると、はるかに攻撃性が低いInstagramの設計を基本にテキストベースに拡張することで無責任な誹謗中傷を抑え込むことができれば、ThreadsはTwitterの代替SNSとして本格的に定着するかもしれない。

メタは近く、(おそらく意図的に削られていた)必須機能をThreadsに追加するという。機能の追加が続く中でもThreadsが比較的平穏なSNSとして維持されるなら、あるいはTwitterユーザーが移住先として第一候補となる桃源郷になる得るかも知れない。

Threads登場でより大きくなった”Twitter復活”への疑問

かつてのTwitterは、実に働きやすい自由な会社だった。

会社として純利益こそほとんど挙げていなかったが、デジタル広告の売り上げ上昇とともに拡大を続け、収益性もさほど高いわけではないものの自由な発言プラットフォームとして定着していた(誹謗中傷問題などは多発していたが)。Twitter本社のカフェテリアで食事をした時、極めて開放的で明るい雰囲気を感じ取ったものだ。

ところがそんなTwitterをイーロン・マスクが買収してからというもの、この会社の雰囲気は180度変わってしまった。理由はLBOという手法でマスクによる買収が実行されたから。この買収でTwitterは多額の有利子負債を背負うことになった。

しかもLBOで発行された債権は、マスク自身が持っていたこともあり、是が非でも利益を上げたい彼は、大胆な合理化やビジネスモデルに関する断片的なアイディアを次々に実施。合理化をありえない速度で進めた結果、一時的に開発どころかサービス運営までガタガタになり始めていたのはご存知の通り。

ツイッターのコミュニティは混沌の館に押し込まれたように予測不能な混乱に陥ってきた。予告なく利用制限ルールを導入したり、主要機能が突然廃止されるなど、Twitterは混乱状態。多額の負債を背負った状態で慢性的赤字体質になってしまった「マスク後」のTwitterがユーザーから不評だった。

「システム非介入」の是非

そんな中で登場したThreadsは、単なるTwitterクローンではない。もちろんよく似ていることは使い始めればすぐにわかるが、SNSを熟知するメタらしい慎重な設計がされている。また資金不足で脆弱な基盤の上に実装された”ぽっと出ベンチャー”のサービスでもない。

ツイッター運営会社XのCEO リンダ・ヤッカリーノはThreadsにユーザーを奪われるのではないかとの疑問に対し「(ミニブログのはしりでもあった)Twitterのコミュニティまではコピー(真似)できない」と反論をしていた。以前ならば、その言葉にも説得力があったが、Threadsはそう遠くないうちにTwitterのMAU(月間アクティブユーザー)を超えるだろう。

リンダは最近、TwitterのMAUが上向きであることを誇っていたが、Twitter上のリツイートが賛同の意を必ずしも意味しないのと同様に、MAUの上昇がTwitterの支持上昇につながっているとは限らない。6月のTwitterタイムラインは、Twitterの経営改善施策に対して批判的なコメントで溢れていたからだ。

加えてTwitterを通じた様々な炎上、誹謗中傷も後を絶たない。イーロン・マスクはThreadsが多くのユーザーデータを収集(14種類のデータ追跡を行っている)していることを「いい仕事だね」と揶揄しつつ、メタを著作権侵害などで訴える姿勢を示している。

しかしツイッターがすべきことはThreadsへの批判ではなく、Twitterを改善することに他ならない。Twitter上では誹謗中傷や、文脈を無視した炎上が日常茶飯事のように起きているが、その理由の一端には、Twitterには誹謗中傷などの攻撃者と対象の距離を置くための機能が不足していることがあると思う。

似たようなサービスとされているが、Threadsは炎上を防ぐために様々な配慮がなされている。Twitterは特定ユーザーをブロックするか、あるいはフォロワー以外には非公開の鍵付きアカウントにするか以外に機能を用意せず、システム的にはあくまでもフラットな発言の場として設計されており、一つひとつの議論に対しては介入しない。しかし介入をしなかったとしても、行きすぎた攻撃を抑制する工夫は可能だ。


「行き過ぎた攻撃」を抑制する工夫をInstagramと共有

Threads最大の特徴は、Instagram IDをベースにコミュニティを構成し、これまで炎上がゼロとは言わないがTwitterよりもはるかに平穏に運営されてきたInstagramの実装を踏襲していることだと思う。

Instagramはポジティブな投稿に対し、共感する人たちがフォローし合うことで”自分の感覚に近い”ユーザーが集えるよう設計されている。

もちろん著名人ともなれば、直接的にターゲットにされて攻撃を受ける可能性もあるが、過度な攻撃性を含む投稿が行いにくく、またそうしたユーザーから距離をおくための仕組みが明確に用意されている。

Twitterでは個別のブロックのほか、鍵付きアカウントで完全に殻に閉じこもるか、あるいは開けっぴろげにするかの二択しかないこととは大きな違いだ。

たとえば、Threadsの利用にはInstagram IDが必須となる。新規作成IDでも構わないが、利用者は「新規作成したばかりのID」がコメントを書き込むことを禁止することができる。またコメント可能なIDを「フォローしている人」に限定した上で、フォロー後に一定期間経過したIDに限定するなど細かい調整が可能だ。

コメントは賛同であれ、反対意見であれ、炎上に繋がるような論争に発展する場合は承認制とすることでエスカレートも防止できる。非表示ワードや特定の禁止ワード設定などもある。

ほとんどはInstagramと共通の設定であり、たとえばInstagramで距離を置いていたり、あるいはブロック、炎上の抑制を行っている場合は、そのままThreadsでも設定が維持される。

また、Instagramにはない機能についても、たとえばリツイートにあたる「再投稿」はTwitterとそっくり同じようにできるものの、その数は表示されないなどの違いがある。(ポジティブ反応である”いいね!”数は表示される。数字を出さないよう設定もできる)

Twitter超えは時間の問題か

メタのInstagram部門を率いるアダム・モッセーリは、ユーザー投稿のフィードをまとめる機能や投稿内容の検索、投稿内容の編集機能などを追加すると予告した。六日間で1億ユーザーを突破し、サーバへの負荷やバグなどの動向が見えてきたタイミングで、最低限必要な機能の実装を始める。

今のペースで利用者が拡大すれば、Twitterを超えるテキストベースのSNSに成長することは間違いなさそうだ。Twitterはグローバルで3億3300万のMAUを持つが、ThreadとユーザーID基盤を共有するInstagramは10億MAUのユーザーがいる

すでにInstagramユーザーの10%以上がThreadsに接続されていることになるが、この数は欧州を除くものだ(欧州ではリリースされていないため)。サービスの品質も高く、スタートアップでインフラ整備が遅れがちになる新興ベンチャーでもないThreadsのユーザー数増加ペースが相当に鈍ることは考えにくい。

日本市場に限ると、InstagramよりもTwitterの方がユーザー数が多くユーザー数逆転はもう少し先になるだろうだろうが、それも時間の問題かも知れない。

今後Threadsが本格普及すれば、あらゆる行動情報を収集していることを背景に「Threadsを使うほど広告サービスにピッタリ追跡されるようになる」などといった批判は展開されるだろう。

実際、同じメタが運営するFacebookのターゲット広告を見るとうんざりした気持ちにもなる。Facebookには非合法と思しきコピー商品や詐欺販売サイトへの広告が頻繁に表示される。オプトアウトが意味ないのでは?と思うほど追いかけてくる。まさにウンザリな状態なのだが、それでもなおTwitterよりもマシだと感じてしまうのは筆者だけだろうか。



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《本田雅一》
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ネット社会、スマホなどテック製品のトレンドを分析、コラムを執筆するネット/デジタルトレンド分析家。ネットやテックデバイスの普及を背景にした、現代のさまざまな社会問題やトレンドについて、テクノロジ、ビジネス、コンシューマなど多様な視点から森羅万象さまざまなジャンルを分析。

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