イーロン・マスクによる買収以来、揺れ動いてきたTwitter(現在はXに改名)ですが、その内部がどのようになっていたのかはなかなか伺い知ることができません。筆者が個人的に参加しているポッドキャストbackspace.fmでは、TwitterのiOSアプリ開発に2010年から携わってきたソフトウェアエンジニアの丹羽善将(@niw)さんにその渦中の話を聞くことができました。
丹羽さんは、超有名テックブログのDaring Fireballで、世界で最も優れたiOS開発者の一人としてTwitter退社を惜しまれた人物です。
▲Daring Fireballより
丹羽さんをゲストに迎えたエピソードは下のリンクからどうぞ。
このエピソードは、Apple情報サイトのMACお宝鑑定団を主宰するDANBOさんがホスト。筆者といっしょに1時間20分にわたって、X(Twitter)での、これまで表には出てこなかった裏話などを聞きました。
いったいTwitterで何が起きてたの?
丹羽さんTwitterは公開企業で、お金さえ出せば買える状態でした。とある金持ちの方がいろいろあった末に去年(2022年)10月末に買収。
Twitterが会社として存在していたのは11月あたりまでで、それ以降はX Corp.という法人に変わりました。Xになってから実質半年くらいは仕事をしたことになり、その間はいろいろなことがありました。
レイオフについてですが、まずシリコンバレーでは、COVID-19の3年間で非常に多くの企業が採用を活発にしていたという前提があります(Appleを除く)。他の企業も採用をかなり増やしていて、選び放題といった状況にあったのは確かです。Twitterの場合は社員が7000人規模まで膨れ上がっていて、その半分くらいがエンジニアリング関連だったと思います。COVIDが収束してきた去年の春先ごろから、金利がすごく上がりました。そうすると景気が冷え込むので経営に厳しい目が向けられるようになります。
Twitterの場合には、さらに買収に伴う利払いがあるために、そのままサービスを継続することが難しくなります。さらに、新しい経営者は考え方が全く違うので、会社の構成をドラスティックに変えるということになり、11月以降、何回かのフェイズを経て人員削減(レイオフ)を実施します。
これにより大幅な人員カットが行われました。
どこの部門がターゲットになったかってのは実際にはなくて、まんべんなくレイオフされたというのが正しい認識だと思います。レイオフの判断にイーロン・マスクの政治的な指向性が影響したとするニュースもあったけど、人員整理においてそういう印象はありませんでした。レイオフは何回かに分けて実施され、コロナ前の状況に戻った印象ですね。
旧Twitterと現在のXとの根本的な違い
丹羽さんプロダクトの開発はすごく早くなりました。スタートアップのように「爆速」でプロダクトを出せるように。従来なら15週間で作ってたような機能を1、2週間でリリースしたり。速度が10数倍にスピードアップしてましたね。流石に大きな機能変更はそのペースではないけど、小さな変更や改善は頻繁に起きるようになったと思います。たしかに、完璧なものを出そうとして、十分に練り上げたつもりても大コケすることはありますから、どうせ失敗するなら、早くユーザーに出して早く失敗した方が良いと。
スタートアップなら、普通にできていたことが大きな企業になるとできなくなってしまう。それができるようになったのは良いことだと思います。
オーナーシップが変わったことで、「株主の要望よりも、自分たちが作りたいと思って思うことをやるんだ」というメッセージはもらいました。
ここまでで冒頭20分くらい。Xについてのさらに突っ込んだ話や、丹羽さんが現在興味を持っている生成AIについて、さらには「分裂するのぞみ200号の謎」など、残りの話題はぜひポッドキャスト音声でどうぞ。