米空軍予備役軍団の第53気象偵察飛行隊、通称「ハリケーン・ハンターズ」が、米国で猛威を振るっている巨大ハリケーン「Lee」の目の中に飛び込み、その中心に見える暗い夜空と周囲を取り囲むようにそびえ立つ雲の様子を撮影しました。
SNSなどで公開されたこの動画が撮影されたのは、Leeがカテゴリー4からカテゴリー5のハリケーンに成長している最中でした。
ハリケーン・ハンターズは、気象偵察任務専用機のWC-130J Herculesを出動させ、嵐の中に投下して上空から地上までの風速、気温、気圧データを調べる「ドロップゾンデ」と呼ばれる機器を抱えて、この嵐に臨みました。
WC-130Jは合計4回、この嵐の目を通過しましたが、その間にも風速は急速に増し、前夜には最高80mph(約129km/h)だったのが、この日(8月7日)には165mph(約265km/h)にまで強まったとのことです。
また、飛行クルーはLeeの目の中で発生した「スタジアム効果」と呼ばれる現象を捉え、動画に収めました。
スタジアム効果は非常に強力なハリケーンにみられる現象で、晴天の中心部と、そこを取り囲む高い雲の壁によって、まるでスタジアムの真ん中にいるかのような感覚を見る者に与えるとされます。
FOX Weatherの気象学者は、この現象について「広大な目と、風の勢いによる渦の影響が高度6~8万フィートに達すると、渦が外側へ流れ出し、スタジアム効果を構築する」と説明しています。
スタジアム効果の様子が撮影されたのはこれが初めてではないものの、今回は夜間で、しかも月明かりもない状況での観測であったため、パイロットはレーダーの画像のみで飛行しなければならならず、またその様子が撮影できるかもわかりませんでした。しかし、頻繁に発生する稲妻の光があったおかげで、ハリケーンの目の発生したスタジアム効果の様子を収められたとのことです。
ちなみに、米国立ハリケーンセンター(NHC)はこの日、Leeが風速157mph(約253km/h、約70m/s)を超えたため、カテゴリー分類を5段階の4から最高の5に引き上げると発表しました。これは、通過する地域が数週間または数か月間にわたって居住不可能になる可能性がある強さとされ、日本に襲来する台風の分類で言うところの「猛烈な台風」と同等以上の勢力になります。