生成AIに高校スポーツ記事を書かせた大手新聞社、誤りや品質の苦情続き一時取り下げ。所属記者も「掲載すべきでなかった」と発言

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Munenori Taniguchi

Munenori Taniguchi

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米国の新聞大手Gannettが、高校スポーツの試合結果記事を生成AIサービスに執筆させたところ、読者から不自然な文章構成や誤りを指摘され問題化したため、取り下げて再チェックを実施することになりました。

このことに関し、Gannettの記者は「恥ずべきこと」だとし「ニュースとして掲載されるべきでなかった」と述べています。

ことの発端は8月半ば、Gannettが運営する複数のニュースサイトに掲載された高校スポーツ大会の記事内容が、何度も同じ記述を繰り返したり、試合の流れや重要なポイントに触れないなど、明らかにニュース記事として不自然な文章になっているのが読者から指摘されたことでした。

GannettはUSA Todayのような全国紙からThe Arizona Republic、The Detroit Free Pressなどの地方紙まで大小様々なニュース媒体を発行している新聞社で、今年6月に生成AIを記事作成プロセスに導入することを発表していました

そして少なくとも8月上旬から、Gannettはニュース記事生成AI「Lede AI」を導入し、各媒体で高校スポーツの試合結果などを伝えるニュース記事の生成を開始していました。ただ、AIによって生成された記事の著者名には ” Lede AI ” と記してはいたものの、それ以上は特にAI生成記事であることは強調していませんでした。

しかし、このAI生成の記事の文章や構成などが不自然であることに気づいた人々がSNSでざわつきはじめ、ネガティブな反応が増加。このことを受け、Gannettは発行するすべての媒体でLede AIの使用をいったん取りやめると発表しました。

また、AI導入の経緯について「全国で数百人の取材記者を増やそうとしているが、一方で自動化やAIを駆使した記者のためのツールを構築し、読者に向けたコンテンツを追加する実験も行っている」と説明し、さらに「我々は常にベンダーを評価し、提供するすべてのニュースと情報が最高のジャーナリズム基準を満たすよう、プロセスを改善している」とも述べました。

記事執筆時点で確認したところ、GannettはLede AI名義の記事について再チェックを行ったのち「このAI生成の記事は、コーディング、プログラミング、またはスタイルのエラーを修正するために更新されました」の文言を追加しています。

Lede AIのJay Allred CEOも、問題を受けて、AIが生成した記事には「いくつかの誤りや不要な繰り返し、さらにはぎこちない表現が含まれていた」とその文章の問題点を認め、24時間体制でソフトウェアの修正に取り組むとしています。

その後、9月に入り匿名でニュースメディアFururismに答えたGannettの高校スポーツ担当記者は、この問題について「恥ずかしいことだ」とし「決して掲載すべきでないものだった」との考えを述べました。

記者は「高校スポーツの報道はプロや大学スポーツより評価されない側面もあるものの、コミュニティをカバーするニュースとして非常に重要だ」と述べ、全国的に話題になる記事ではなくても、読者は「家族や親族など、記事に子供の名前が含まれているかどうかを気にする人たちだ。彼らは記念になるもの、子供の高校時代の思い出として記憶に残るものを求めている」として、チーム名と点数以外の要素も重要であると語っています。

また、高校スポーツの記者はそうした読み手のことを考えた取材や記事になるよう注意していると説明し、地元の対戦をカバーするため試合会場に赴き、注目の選手の活躍ぶりや卒業後の進路、チームの歴史やコーチへの取材などを記事に盛り込んでいると付け加えました。

そして、このような背景を踏まえてGannettが「大規模なAIの実験を、高校スポーツの取材を置き換える試みとして用いたのは皮肉なことだ」と述べています。

なお、Lede AIの記事には足をすくわれた格好になってしまったものの、Gannettの各媒体は記者の手による高校スポーツの報道も従来と変わらず続けているとのことです。ただ、近年は記者の人数不足もあり、AI記事の導入はそれを補うための意図もあったのかもしれません。

記事の内容に関しては、公開前にしっかり確認しておくべきだったと言うほかありません。USA Today Networkなどの倫理原則のページには、「AI生成のコンテンツは、報道に使用する前に正確性と事実性を検証する必要がある」と記載されています。

ちなみに、AIで記事を生成しそれが問題化した例としては、今年1月に話題になった米CNETの例が記憶に新しいところです。このケースでは、企業は読者に告知することなく、金融に関する情報解説記事をAIで大量に生成し、SEOや広告のクリック増加を期待していました。

米CNETはオンラインのニュース媒体としては老舗ですが、買収で運営主体が変わって以来、多くの記者を解雇して編集記事よりもSEOに特化した戦略にシフトしていることから、膨大な検索キーワードに個別対応して上位に表示される「記事」を機械的に大量生産するツールとしてAIを導入した経緯があります。しかし、AIが書いた記事には基本的な金融知識に関する誤りが数多く発見され、やはり批判を浴びる結果となっていました。


《Munenori Taniguchi》
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