マイクロソフトのゲーム市場戦略をめぐる社内文書が流出し、「Xbox Series X|Sのリフレッシュ(改良した新型)」「新機能を備えたコントローラ」など、計画中の新製品情報が明らかになりました。
「2030年へのロードマップ」と称した社内プレゼンテーション資料では、直近の改良型Xboxだけでなく、暫定的に2028年発売を想定した次世代機、クラウドとローカルを統合したハイブリッドアーキテクチャ、携帯デバイス対応、収益の柱である定額サービスXbox Game Passの加入者を現在より倍増させるプランなど、マイクロソフトの次世代戦略が克明に語られています。
ゲーム業界に限らず、いわゆる「流出」という言葉は未確認の情報に対して安直に使われる傾向があり、出所不明の単なるうわさまで「リークしました!」と称して流通することさえありますが、今回は継続中のマイクロソフト対FTC(連邦取引委員会)裁判の資料として誤って一般公開されてしまったという、事故としかいえない経緯です。
含まれる年表などから、資料は2022年半ばに作成されたものと見られます。プレゼンに含まれていても、現在はすでに計画が変更されている場合、今後変わる可能性はあり、特に先のロードマップについてはこのとおりになるとは限りません。
改良版Xbox Series Xは「Brooklin」
Xbox Series Xの中継ぎ改良モデル、開発名Brooklinについては、
光学ディスクドライブ廃止、円筒形の新デザイン
内蔵ストレージは倍増の2TB
新型コントローラ付属(検討中)
プロセッサは6nmプロセスにシュリンク(低消費電力・低発熱・静音化)
サウスブリッジを刷新、無線含むI/Oとサステナビリティへの取り組みを近代化(待機消費電力の削減など)
正面にPD対応USB-C端子。充電式コントローラを急速充電
Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.2対応。(クラウドストリーミングやダウンロードがより高速化、サードパーティー周辺機器も増やせる)
省電力化で、電源ユニットの出力は15%減。新たな低電力モードは現在のSeries Xの待機電力の20%。筐体により多くの再生素材、梱包は100%リサイクル素材
2024年末発売予定 (社内資料作成の時点では)
価格は同じ499ドル
ゲーム機の性能としてまず挙げられる処理速度やメモリ量等に言及がないことから、ゲームを動かす部分は原則同じで、いわゆるProやエリート的な上位機種ではないことが分かります。
マイクロソフトのゲーミングCEOフィル・スペンサーは、高性能なXbox Series X と安価なSeries Sの二機種を同時に発売したことについて、いわゆるProやエリートのような、従来は中継ぎだった性能向上モデルを最初から出す戦略と表現したこともあります。
新型Xbox Series S は「Ellewood」
Xbox Series Sについては、元から光学ドライブを載せていないこともあり、新型も外観はほとんど変わらず。
中身の変更点は新型Xbox Series Xと共通で、Wi-Fi 6E およびBluetooth 5.2対応、待機時の低消費電力化などが挙げられています。
内蔵ストレージは、先日発売されたばかりの黒いモデルと同じ1TB。
こちらもコントローラは新型を検討しています。
価格は変わらず299ドル、2024年末発売の計画(資料の時点では)です。
新Xboxコントローラは加速度センサや繊細なハプティックフィードバック対応
本体はゲーム性能を変えないまま無線の強化や低消費電力化といった周辺部分を更新する内容でしたが、コントローラ(Sebile)については、Xboxコントローラとして久々に大きな新機能が複数加わります。
まず接続については、従来からの独自無線形式の改良版と思われる「Xboxワイヤレス2」、Bluetooth 5.2に加えて、さらに「Direct to Cloud」直接クラウド接続が検討されています。
詳しい説明はありませんが、Googleはかつて取り組んでいたクラウドゲームプラットフォーム Stadiaの専用コントローラとして、コントローラが直接Wi-Fiでインターネットに接続し遅延を軽減する仕組みを導入していました。
没入感を高める仕組みとしては、
加速度計(モーションセンサ)搭載
従来の粗い振動モーターから、より繊細なハプティックフィードバックへ
VCA(ボイスコイルアクチュエータ)で、触感とスピーカーを兼用
そのほか、
ボタンおよびスティックを静音化
バッテリーは充電と交換可能(サステナビリティを考慮)
モジュール化されたスティック(ユーザー交換可能であるとは限らない。整備性・修理性)
「持ち上げて起動」(lift to wake)対応
シームレスなペアリングと切り替え、モバイルアプリ対応
ハプティックフィードバックは、Nintendo SwitchやPS5が売りとする機能。
また「加速度計」がいわゆるシックスアクシスや9軸のモーションセンサであった場合、他社のようなジャイロ操作やモーション操作に対応する可能性もあります。
「検討中」や変更の可能性がある部分も
コントローラのDtC(直接クラウド接続)は、Stadiaが先例としてあるものの、コントローラ一つあればXboxでもスマホやスマートTV等々でもシームレスに切り替えて、ローカルまたはクラウド上のゲームが遊べるという野心的な計画。
流出したプレゼンテーションでは、クラウド中心のプレーヤーを増やすことでXbox Game Passの加入者増加を見込めると主張しており、その戦略にとっても重要なパーツです。
しかしプレゼン中の「世代の中間(会計年度25年から27年)シナリオ」部分では、この直接クラウド接続の機能を新コントローラに搭載するか、また改良型Xbox Series X|Sと同梱するか否かについても、両者を実現するシナリオとしないシナリオを併記しており、資料の時点ではマイクロソフト内部でも検討中だったことがうかがえます。