アップルは新しい「Apple Watch」を発表した。発売は9月22日だ。
それに先行して手元に「Apple Watch Series 9」と「Apple Watch Ultra 2」の実機と、同時発売の新作バンドが届いたので、それを見ながら特徴を確認していこう。
最高輝度上昇で「屋外での使い勝手」向上
「Apple Watch Series 9」と「Apple Watch Ultra 2」は、それぞれ過去のモデルの正常進化版、と言っていい。
外観はほとんど変わらない。並べてしまうと前モデルとの差はほとんどわからない。新作のバンドで区別がつく、というところだろうか。だがそれはまたあとから詳しく述べる。
外に出て使ってみてわかるのは「ディスプレイの輝度上昇」の恩恵だ。
Apple Watchは「Ultra」を除く各モデルで、「最大輝度1000nits」のディスプレイを使ってきた。
それが「Series 9」では「最大2000nits」になる。
といっても、室内で使う限り、ほとんどのシーンでこの違いを感じることはない。差が出るのは、屋外で強い日差しにさらされた時だ。
Apple Watchをはじめとしたスマートウォッチには2つ弱点がある。バッテリーのこまめな充電が必須であること、そして、直射日光の下では画面が見づらくなること。1000nitsあればほとんどのシーンで問題ないのだが、確かに暗いと感じる時はある。
筆者は昨年から「Apple Watch Ultra」を使っているのだが、こちらは最大輝度が2000nitsになっている。そのためか、街中では「暗い」と感じることはほぼなかった。
というわけで、Series 9とSeries 6(後者は最大1000nits)を同じ条件で比較してみると、確かにSeries 9の方がはっきりしていて見やすいと感じた。
さらに「Ultra 2」は輝度が最大3000nitsになっている。Ultraと比較すると、こちらも明るくなっているのがわかる。海や雪山など、照り返しも含めた光が強い場所では、少しでもディスプレイが明るい方がいい。だから、本気でアウトドアで使う人にはこちらの方が好ましい。
なお、ディスプレイの輝度が上がったということは消費電力も上がっているということだが、システム全体での自動コントロールなどの効果によって、カタログ上のバッテリー動作時間に変更はない。使ってみても、その辺の変化を感じることはなかった。最高輝度が必要とされるシーンが短時間であるからだろう。
10月登場の「ダブルタップ」を先行体験
新機種2モデルにおけるもう1つの大きな変化は「ダブルタップ」ジェスチャーの導入だ。
どんな風に動くかは、以下の動画をご覧いただきたい。
簡単に言えば人差し指と親指を「パチパチ」と合わせる動作で、いくつかの操作を行うもの。この動作の認識には、動きに伴う微細な振動と血流量の変化が使われている。Apple Watchに搭載されている多数のセンサーの組み合わせで実現されているものだ。
この機能には、Series 9とUltra 2が搭載している新しいSoCである「S9」が必須となっている。S9は機械学習処理を助ける4コア版「Neural Engine」を搭載していて、センサーからのデータをAIが処理して認識するために使われている。
それに加え、ダブルタップの利用には、アップルが10月に公開を予定しているWatchOS 10の新バージョンが必要になる。今回はテスト用として、特別に新バージョン搭載デバイスを先に使わせていただいた。
使ってみると非常にシンプルな機能だ。以下のような「よく使う機能」にダブルタップが割り当てられ、特に細かな設定はない。
電話:着信と通話終了
メッセージ:音声認識を使ったリプライ
スマートスタック:ウィジェットの切り替え
タイマー:ポーズ/レジューム/終了
ストップウォッチ:ストップ/レジューム
アラーム:スヌーズ
ミュージック:再生/停止
フラッシュライト:モード切り替え
通知:基本的な動作として指定されていることを選択
例えばアラームは、「停止」ではなく「スヌーズ」になっているわけだが、これは「寝ぼけて操作してしまった時、どちらの方がダメージは少ないか」という判断に基づくものだ。
他方、WatchOSには「アクセシビリティ」機能として、手の動きを認識する「ハンドジェスチャ」がある。これはS9がなくても使えるし、ダブルタップ的な操作も可能だ。
ただ、実際に使ってみると、ダブルタップとハンドジェスチャはかなり性質が異なる機能だ。
まず、ハンドジェスチャはより多様な操作に対応しているが、その分複雑で、習熟に時間がかかる。
次に、精度もハンドジェスチャの方が劣る。ダブルタップはかなり精度が高く誰でもすぐ使えるが、ハンドジェスチャは「強く、大きめに操作する」ことを心がける必要がある。
今後はハンドジェスチャの精度なども上がっていくのだろうが、ハンドジェスチャは「必要な人向けに用意した機能」で、ダブルタップは「今後Apple Watchの操作において、スタンダードな存在の1つになる」という違いであるように感じられる。
「充電時の環境負荷」までカーボンニュートラルに
もう1つ、今年のApple Watchをめぐる変化として挙げておきたいのが「サステナビリティ」への対応だ。
バンドなどの素材はリサイクル素材を増やし、Nikeとのコラボバンドでは、素材が自然に混ざった素材も使われている。
だが、今回の話はそれだけにとどまらない。
アップルは今秋の発表会の中で、「2030年までに、すべてのアップル製デバイスが気候に与える影響を実質ゼロにする」という計画を発表した。
単に設計・製造・流通に関わるCO2の排出量やリサイクル率を実質100パーセントにするだけでなく、「消費者がその製品を使っている間に消費する電力に関わるCO2排出量」についても、カーボンオフセットで埋め合わせる。
カーボンオフセットとは、CO2排出量に見合うだけの分を、別の削減投資で埋め合わせるもの。アップルは消費者がどうApple Watchを充電するのか、その消費量も統計的に把握している。だから、統計的な電力消費量の分を自社で負担する……と言っているわけだ。
Apple Watchについては、充電に利用する電力までカーボンニュートラルとなる初めての製品になったので、パッケージに「Carbon Neutral」を示すマークがつく。
もちろんこれは計算上のことではある。国によってCO2排出量への影響も違うだろう。
だが、製品メーカーが「自社が販売した製品が使われている間の分」まで考えてサステナビリティを打ち出す、というのは注目に値する考え方だ。
実現には当然、デバイス自体の消費電力削減や充電のコントロールといった要素への目配りが必要になってくる。
Apple Watchはライフサイクル全体での消費電力=CO2排出量が比較的小さく、計画実現がしやすかったという部分はあるだろう。
今後iPhoneやMacでどのように計画を実現するのか、見守って行きたいところだ。
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