アップルの「空間コンピュータ」ことVision Proは約50万円と非常に高価なこともあり、次世代モデルでは製造コストを下げた低価格版も計画中であると、Appleに詳しい複数の情報源が主張していました。
数年前からVision Proの製品像をかなり正確に伝えていた The Informationも「中国メーカーのマイクロOLED採用」など、具体的な情報を挙げているほどです。
しかし、アップルのサプライチェーン情報に精通するアナリストが、調査結果に基づき「廉価版モデルは中止された可能性がある」と述べています。
著名アナリストMing-Chi Kuo氏は、Vision Proの今後に関する調査ノートを発表。2024年、発売開始から1年目はVision Proの出荷台数はせいぜい40~60万台に留まると述べています。
ただし、この見解は「一部の部品サプライヤーの最大生産能力予測に基づく」としており、要はソニー1社しか提供できない高解像度マイクロOLEDパネルの製造台数が年間90万枚という観測に沿っています(左右2枚必要なので、最大45万台)。
次に、Kuo氏は「アップルは低価格版Vision Proの計画を中止したかもしれない」と主張。以前Kuo氏は、第2世代Vision Pro(当時は「ヘッドセット」と呼称)は2種類のモデルが準備中であり、1つは初代モデルをより優れたハードウェアに刷新した正統な後継モデル、もう1つは機能・性能を絞り込んで「より手頃な価格」にしたモデルだと語っていました。
そうした事情も含めて、アップルがVision Pro(初代)の価格を大幅に引き下げないかぎり、2025年以降に出荷台数が大幅に伸びることも期待しにくいと分析しています。
さらにKuo氏は、「Vision Proの後継機は遅くとも2027年前半までに量産に入る」と主張。つまり、初代Vision Proが2024年初頭に発売されて以降、今後数年間は新型が出ない可能性があると述べています。
最後に「技術的な観点からいえば、Vision Proは間違いなくユーザーに素晴らしい体験を提供すると思う」と前置き。しかし、問題は「ユーザーにとってなぜこの製品が必要になるかだ」と指摘。要は実用性を見いだしにくい、役に立てる用途を探すのが難しいということでしょう。
同じような声は、アップル社内でも上がっているとNew York Timesが報じていました。iPodやiPhoneのように明確な用途がないという趣旨です。
さらにいえば、Vision Pro という正式名を誰も知らないころから、「アップル製ヘッドセット」は技術や試作品としては存在しているが、用途やソフトウェアと需要の予測を含めて、まだ発表のタイミングではないとの声がApple社内にもある、議論が割れているとの説も、Apple系の事前情報でおなじみの情報源が共通して語っていました。
ちょうど、Metaが新たなVRヘッドセットQuest 3を発表したタイミングです。価格帯やアプローチは大きく違えど、Mixed Reality あるいは空間コンピュータでコミュニケーションや仕事をするビジョンは両社に共通しています。今後のアップルとMetaのVRヘッドセット競争も注視していきたいところです。