最近 iOS版の X / 旧Twitter をアップデートして何か微妙な違和感を覚えた人は、もしかするとこれが原因かもしれません。
小鳥のさえずりという意味であるサービス名「Twitter」を自身の宿願だった「X」に変え、アイコンもブランド価値の高かった青い鳥から「𝕏」にしてユーザーを驚かせるなど、旧Twitterの象徴である鳥の追放に余念がないイーロン・マスク氏ですが、ホームアイコンが鳥の巣箱だったことには気づかなかったらしく、Xに変えたあともTwitterと同じままでした。
しかし本人がある日ハッと気づいたのか、それとも周囲の誰かや従業員がご注進に及んだのか、ウェブ版では最近になってさりげなく四角いドアの一般的なホームアイコンに変わっていました。
その後Androidアプリでも変わり、iOSは最後まで巣箱を残したままでしたが、最近のアップデートでとうとう追放が完了しています。
なぜそこまで鳥を嫌うのか?については、オーナーであるイーロン・マスク氏が旧Twitter経営陣と公然と敵対してきたこと、スーパーアプリ「X」は自身が20年近く暖めていた構想であり、単なるSNSではなく金融等も含むサービスであることを示すようブランド刷新を進めたいことがあります。
さらにいえば、TwitterとXは完全に別物と印象づけることで、サービスの不備や経営上の問題についても「旧Twitter経営陣が無能で倒産寸前だったところを、身を切る買収でサービスを救ったイーロン・マスク」というナラティブを強化するためにも有利です。
余談ながら経営について軽く注釈すれば、たしかに旧Twitterは長らくサービス拡大に振って赤字、最近は黒字の年「も」ある程度、とはいえ広告収入は拡大していたため、若干のダイエットをすればいつでも収益を確保できる程度の体質でした。
旧経営陣としてはユーザー数が伸び悩む本体よりも関連サービスの買収など拡大による収益確保を選んでいましたが、「いまにも潰れそうだった」については、公の決算内容で客観的に否定できます。
ではなぜマスク氏が建て直しの厳しさを語るかといえば、買収がLBOという形式で、簡単にいえば費用の多くを借り入れで賄い、買収後のTwitter / X Corp. 自身が返済する必要に迫られているため。
つまり、もとから大して儲かるわけでもない、広告収益頼りで黒字だったり赤字だったり程度だったTwitterに、買収によって莫大な借り入れと利払いが生じたこと、さらには体制変更に伴う混乱やイメージの低下で主要な収益源である広告の出稿が減ったことが経営難の理由であり、マスク氏が従業員の75%近くを解雇したり、「ボットやspamと戦う唯一の方法」と称して様々な有料プランを積極的に売り込んでいる理由です。
X / 旧Twitter の経営状態はさておき、トリ追放の話で言えば、屋上に巨大なXの看板を光らせたことで話題になったサンフランシスコのTwitter本社には、正面の「Twitter」看板が書き換えられたあとも、なぜか青い鳥の立体看板が残っています。
これはツイッターのレガシーを残す云々ではもちろんなく、社内の調度品も含めてすべて廃棄か売却を進めて完全に痕跡を消し去る過程で、外看板は落札者に撤去費用を負担させる条件でオークションに出していたため。
このオークションは9月に終了していますが、落札者や価格などの詳細は明らかにされていません。