OpenAIは一連のお家騒動のあと、しばらく沈黙していましたが、水曜日にブログを更新し、アルトマン氏がCEOに復帰することを正式に発表しました。新体制となった取締役会には、マイクロソフトが議決権のないオブザーバーとして加わることも明らかにしています。
OpenAIの取締役会は、アルトマン氏解任を支持した4人のうち3人が去り、現在はブレット・テイラー会長、ラリー・サマーズ氏、そして前取締役会から唯一議席を維持したアダム・ダンジェロ氏という構成になっています。ここに、マイクロソフトがオブザーバーとして加わります。
マイクロソフトは今年はじめ、OpenAIの営利子会社であるOpenAI Global LLCに100億ドルという巨額の出資をしました。その出資条件は、マイクロソフトが投資額を回収するまでのあいだ、OpenAI Globalの利益の75%がマイクロソフトに入るという内容であり、出資額回収後はその株式の49%を保有することになっています。
しかし、多額の出資をしていたマイクロソフトは、OpenAI Globalの親会社で非営利企業のOpenAI Incの取締役会には加わっていませんでした。OpenAIはもともと、急激で予測のつかない発展を遂げるAIが社会に悪影響を及ぼすことを避けるため、株主の利益を優先する通常の企業ではなく、非営利法人として設立された経緯があります。
いずれにせよ、マイクロソフトは今回のサム・アルトマン氏解任劇について、事前にそうした動きがあることを察知できませんでした。その結果、解任されたアルトマン氏と、OpenAIを離れると述べたグレッグ・ブロックマン氏を急遽雇用するとしたり、アルトマン氏らの復帰がなければOpenAIを辞めるとした従業員たちに、それまでと同じ待遇を提示するといった対応に奔走することとなりました。
今回のマイクロソフトの取締役会への参加は、非営利会社とそのリーダーシップをめぐる差し迫った不確実性をなくすための動きと考えることができそうです。
OpenAIのブログ記事では、マイクロソフト以外に関する取締役会まわりの話題として、一連の騒動の中で当初CEO解任を支持していたものの、のちに考えを改めてアルトマン氏復帰を後押ししたOpenAIの共同創設者兼主席研究員のイリヤ・サツケヴァー氏に関するアルトマン氏の対応も示されています。従業員に宛てたメッセージの中で、アルトマン氏はサツケヴァー氏に関し「悪い感情は全くない」としました。そして「イリヤは今後取締役を務めることはないが、われわれは協力関係を継続したいと考えており、彼がOpenAIでどのようにして仕事を続けられるかを話し合っているところだ」と述べています。
また、従業員に対しては「(騒動にもかかわらず)顧客を失う事態に発展しなかったという事実は、私たちが皆さんのためにさらに努力する原動力となるだろう」と述べました。
一方、新たに取締役会会長になったテイラー氏は、従業員に宛てたメッセージで、組織の安定に向け「ガバナンス体制を強化」し、「最近の出来事の見直し作業を監督する独立委員会を招集する」と述べています。
その他、アルトマン氏とともにOpenAIを一時離れたグレッグ・ブロックマン氏はもとのポジションである社長に復帰します。また騒動のさなか一時的に暫定CEOに任命されたものの、アルトマン氏を支持していたミラ・ムラティ氏も、元のCTOに戻ることがアナウンスされています。