米会計検査院(GAO)は、NASAのアルテミス計画における有人月面着陸ミッション(Artemis III)の実施が、2027年になる可能性が高いと報告しました。
Artemis IIIミッションは現在、2025年の実施を予定に掲げて準備が進められていますが、GAOはSpaceXによる月着陸船の開発、さらにAxiom Spaceによる宇宙服の開発が遅れており、予定どおりにミッションが行われる「可能性は低い」と評価。
さらに「有人宇宙飛行の複雑さを考えれば、NASAの主要プロジェクトの平均よりも1年以上早くプログラムの開発が完了すると期待するのは非現実的である」「NASA主要プロジェクトの平均と同程度の時間がかかるとした場合、Artemis IIIミッションは2027年初頭に実施される可能性が高い」としています。
Starship HLSは軌道に乗るだけで推進剤の大半を使い果たすため、月に向かう前に燃料を補給する必要があります。
現在の計画によると、まず軌道上にHLS用の燃料貯蔵~補給ステーションを配置し、複数の輸送船でこのステーションにメタンと液体酸素を蓄えておきます。
そしてStarship HLSは打ち上げ後、軌道上で燃料を補給してから月軌道へと向かい、SLSで打ち上げられた有人のオリオン宇宙船と月軌道上でドッキング、飛行士はStarship HLSで月へと着陸します。
マーシャル宇宙飛行センターに本部を置くHLSプログラムは、現在も正式な予定である2025年12月の打ち上げに向けて作業を進めていますが、軌道上での推進剤輸送方法の確立など複雑な技術作業が残っており、GAOの評価では予定どおりの実現は困難とされています。
SpaceXは現在、Starshipの3度目の試験飛行に向けて作業を進めているところですが、初の試験飛行は予定から7か月遅れて2023年4月に行われ、Super Heavyブースターを分離できずに制御不能になり、指令爆破されました。
2度目の試験飛行は11月18日に行われ、今度は上段を宇宙空間に到達させることができましたが、何らかの問題によりエンジン停止の直前に自爆システムが作動しました。
SpaceXが3度目の試験飛行をいつ行うかはまだ発表されていません。
また、Artemis IIIミッションに関しては、Axiom Spaceが開発し、月面で宇宙飛行士が使用する予定の宇宙服にも、より大型の酸素タンクを組み込むための重要な作業が残っているとされています。
もし現在の設計を大幅に変更する必要が発生したりすれば、ミッションの実現にさらに遅れが生じるかもしれません
ちなみに、NASAは2018年当時、2028年に人類を再び月へ送り込むことを提案していましたが、トランプ政権は、2019年にそのスケジュールを2024年に早めました。
現在は2025年後半の予定になっていますが、もしNASAがArtemis IIIミッションを正式に2027年に延期したとしても、まだ、最初の計画よりは1年早いことになります。