アップル、独自生成AI「Apple GPT」のため出版社や報道機関とライセンス交渉中? NY Timesほか報道

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Kiyoshi Tane

Kiyoshi Tane

フリーライター

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著書に『宇宙世紀の政治経済学』(宝島社)、『ガンダムと日本人』(文春新書)、『教養としてのゲーム史』(ちくま新書)、『PS3はなぜ失敗したのか』(晋遊舎)、共著に『超クソゲー2』『超アーケード』『超ファミコン』『PCエンジン大全』(以上、太田出版)、『ゲーム制作 現場の新戦略 企画と運営のノウハウ』(MdN)など。

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アップルは表立って生成AI競争には加わっていませんが、水面下ではAIモデルを訓練するため、ニュース報道機関に「少なくとも5000万ドル相当の複数年契約」を持ちかけたと、米The New York Timesが報じています。

この協議に詳しい4人の関係者によると、アップルはここ数週間、主な報道機関や出版社と交渉を始め、自社の生成AIシステム開発における資料の使用許可を求めているとのこと。ニュース記事のアーカイブについてライセンスを得るため、上記の条件を提示していると伝えています

アップルが接触した報道機関や出版社としては『ヴォーグ』や『ザ・ニューヨーカー』を発行するコンデナスト社、NBCニュース社、それに『ピープル』『デイリー・ビースト』を擁するIAC社の名前が挙がっています。

しかし22日(現地時間)時点では、どの程度のライセンスを確保できたかは不明です。アップルから連絡を受けた出版社中には「この誘いに乗り気ではないところもあった」そうです。

その理由の1つは「アップルの契約が拡大解釈される」ことへの懸念。当初の提案では、出版済みのアーカイブを広くライセンスする内容となっており、「アップルの使用により発生しうる法的責任を出版社が負う可能性があった」とのことです。

すでにOpenAIやGoogle、Metaなどハイテク大手が生成AIアプリやサービスを次々と打ち出しているなかで、アップルは大規模言語モデルや生成AI分野で大きな動きを見せていません。わずかに、iOS 17の自動修正で英語、フランス語、スペイン語のキーボードにのみ「Transformer言語モデルを活用」と述べる程度です。

しかし、今年5月にアップルはAI関連の求人広告を出していたほか、7月には同社の内部情報に詳しいMark Gurman記者が独自開発のAIチャットボットを内部でテスト中であり、一部のエンジニアが「Apple GPT」と呼んでいると報道。


さらに8月にはティム・クックCEO自らが「我々は何年も前から、生成AIを含む幅広いAI技術の研究を行ってきた」「わが社は多額の投資を行っており、それはご覧になっている研究開発費に表れている」と明かすまでに至っています

最近も、次期iOS 18には「よりスマートなバージョンのSiri」やLLM(大規模言語モデル)ベースのAI機能が組み込まれるとの報道もありました。加えて、アップルが「LLMを使ってSiriを究極のバーチャル・アシスタント」に刷新し、次期「iPhone 16」以降に標準搭載すると有名リーカーが主張していたこともあります。

AIの訓練には莫大な学習データが必要となりますが、開発・学習自体に著作権の範囲が及ぶかどうかは、著作権法30条の4で原則的に適法とする日本など一部の例外を除き、国や地域によっては微妙な問題です。作者の同意がなければ学習自体も認めないと主張した訴訟が起こることも珍しくなくなりました。

また学習の論点とは別に、生成・利用の段階で明示的にソースとして利用するためのライセンスが必要になる場合もあります。アップルが権利関係のクリアに取り組むのは当然ですが、権利を有する出版社が交渉に応じるのかどうか、興味深いところです。


《Kiyoshi Tane》
Kiyoshi Tane

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著書に『宇宙世紀の政治経済学』(宝島社)、『ガンダムと日本人』(文春新書)、『教養としてのゲーム史』(ちくま新書)、『PS3はなぜ失敗したのか』(晋遊舎)、共著に『超クソゲー2』『超アーケード』『超ファミコン』『PCエンジン大全』(以上、太田出版)、『ゲーム制作 現場の新戦略 企画と運営のノウハウ』(MdN)など。

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