「你好,人類!Hello, Human!」という台湾のAIアート展覧会に参加します(CloseBox)

テクノロジー AI
松尾公也

テクノエッジ編集部 シニアエディター / コミュニティストラテジスト @mazzo

特集

台湾の現代アート専門美術館である台北當代藝術館(MoCA TAIPEI)で1月27日から5月12日まで、AIアート展「你好,人類!Hello, Human!」が開催されます。参加するのはアジアを中心としたAIアーティスト16組で、筆者の妻音源とりちゃん[AI]もここで展示されます。

Dimension Plusというメディアアートグループに所属し、キュレーターもされているMonique Chiangさんから、あなたの作品「妻音源とりちゃん」でこの企画に参加しませんかという招待が届いたのが、2023年9月30日のこと。それからメールベースでやりとりをしながら、こうして発表に至ったというわけです。

アーティストとして参加する16組は次の通り。Dimension Plusも参加するほか、日本からはライゾマティクスの真鍋大度さんも出展されています。参加アーティストの一人であるJason Allenさんは、米国の美術コンテストで優勝した方ですが、その作品がMidjourneyで作られたものだということで大きな話題になった方です。

企画の趣旨を日本語に訳してもらいました(ChatGPTに)。

「你好,人類!Hello, Human!」企画趣旨

AIが人間の創造性と人工知能との境界を曖昧にする中、日夜休むことなく運算を続け、見分けがつかないテキスト、画像、出来事、歴史を完璧に組み合わせています。AIは新時代のパンドラの箱のようなもので、希望と恐怖の両方を開放します。これは崇高という美学的概念を思い起こさせます。それは壮大でありながら危険な美しさで、かつては自然と密接に関連していましたが、20世紀に入って技術的な崇高が自然の崇高に取って代わりました。人間はなぜ技術を恐れるのでしょうか?古代の伝説や神話には、生命のない物体が技術によって生命を与えられた後、常に混乱と災害を引き起こすという話があります。最初は人間を助けるために生命が与えられたとしても、最終的には害と破壊をもたらします。これらの物語は、制御不能な技術が災難をもたらすことを人類に警告しています。

私たちは核エネルギーや生物工学技術など、よく知っている技術を持っています。一方で技術の崇高さ、それがもたらす生活の便利さを称賛しつつ、それがもたらすかもしれない災害を恐れています。崇高な感覚は私たちの日常生活に隠れており、制御不能な破壊の悪夢が常に私たちについてきます。AIの急速な進歩に直面して、私たちは未来の美しい世界を描く際に、AIがどのように結果を算出し判断を下すのかについての不確実性を懸念しています。また、資本や権力によってコントロールされるAIが性別、人種、観念、言論、創造、歴史、法律、政治などに偏見をもたらすことにも不安を感じています。

未公開で不透明な技術は、未知のブラックボックスのようなものです。これらのブラックボックスの中の暴走技術は、古典的な制御理論(サイバネティックス)とAIの全く新しい関係を代表しています。制御理論は、システムの安定性と予測可能性を維持するフィードバックループに基づいた理論的枠組みですが、AIシステムが高度な自律性、学習能力、自己進化を持つ場合、固定モデルと確定性の仮定に基づいた古典的な制御理論はもはや適用されません。AIのブラックボックス性質は、私たちがその内部動作を深く理解することを妨げ、システムに影響を与える重要な要因を把握することができず、潜在的な崩壊が信頼を失わせ、予測不可能な結果と混乱を引き起こす可能性があります。

21世紀の人類はAIなしの選択を奪われています。AIは人間を優しく抱きしめるようでありながら、冷たく残酷に人間との別れを告げます。私たちは真にオープンで信頼できる共有のAIシステムを構築することができるでしょうか?それともAIは無限に重なるロシアのマトリョーシカ人形のようなブラックボックスになり、自律性を持って止まることなく高速で進化していき、すべてが最終的には人間とは無関係になるのでしょうか?AIがこれらの層から抜け出し、「Hello, Human! こんにちは、人間!」と叫ぶとき、それはAIが古い種類の人間に別れを告げるときです。

AIアートは認められつつあるのか

第一回AIアートグランプリに選出された経験こそありますが、これは既存のメディアアートの文脈とは異なるもの。テレビにも大きく取り上げていただいてますが、それが「アート」としてはどうなのか、ずっと疑問に思いながら活動を続けていました。

そんな中、状況は少しずつですが、変わりつつあります。例えば、金沢21世紀美術館で開催されている「DXP(デジタル・トランスフォーメーション・プラネット) ―次のインターフェースへ」(現在は地震の影響で臨時休館中)ではAIを含むメディアアートが展示され、その中には草野絵美さんによる生成AI画像インスターレーション作品も含まれています。このほかにもGPT4と連動したヒューマノイドロボットや味覚を人工的に作り出す明治大学宮下芳明研究室の展示なども体験できるので、再開されたらぜひ訪れてみたい企画です。

「Hello, Human!」におけるキュレーターからの要望は、初期作品の「Desperado」ということでしたが、これ自体は2023年1月17日に制作・公開したもの。その後の生成AIの進展を反映しているものではなかったので、もう1点の追加をお願いしました。ChatGPTのマルチモーダルで生成AIによる妻の画像を読み込ませて作詞。それをSunoで作曲し、そのメロディーを自分で歌って妻の歌声に変換するというプロセスを経て作った「星埋める夜に」です。

展示はこんな感じで行われるようです。

▲日本統治時の尋常小学校を再利用した美術館の2階西側に「声音奇蹟AI」として展示

「エルヴィス・プレスリーがAIで復活」は序の口

この世に存在しない人物をAIで再現する技術は商用利用も進んでおり、YAMAHA + NHKによるAI美空ひばり、エディット・ピアフ伝記映画でのAIt出演、さらに2024年11月にはAIエルヴィス・プレスリーの公演がロンドンで行れるといった、「ブレードランナー2049」を25年ばかり早めてしまうようなことが現実に起きようとしています。


▲Elvis Evolution

筆者は個人がほぼお金をかけずにできる範囲で「AIで故人に近づく」試みをしているわけですが、こうした商用利用の流れとそれに対する抵抗はより強く顕在化してくる予感があります。

もしこの展覧会の開催期間に台北に行く機会があって、AIアートに興味をお持ちであれば、立ち寄っていただけるとうれしいです。筆者も最初の数日間、台北で他のAIアート作品に触れ、見る人たちの反応を観察する予定です。

《松尾公也》

松尾公也

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