昨年6月の発表から半年以上が経過し、いよいよアップルは空間コンピュータ「Apple Vision Pro」を2月2日に米国で発売します。
iPhoneやiPad、MacやApple Watchなど、これまでのアップル製品は、ユーザーがオンラインストアで見るか店頭で製品を手に取って試用するかの違いはあれ、特に従業員から多くの説明をされることもありませんでした(Apple Watchの場合は簡単なデモや試着あり)。
しかし「空間コンピュータ」、一般的にはMR(混合現実)ヘッドセットと呼ばれる製品に慣れているユーザーの絶対数は、スマートフォンや時計と比べれば限られています。
また、ヘッドセットはユーザーそれぞれの頭部に合わせたパーツの組み合わせや視力の調整が必要となります。さらに、非常に新しいコンセプトであり、初見のユーザーが1人で使用方法を理解するのも難しいと予想されます。
そうした事情のためか、Vision Proを店頭で販促のためユーザーに試用させる場合、従業員がその人に合わせて適切なパーツを組み合わせた後に、20~25分のデモを体験させると著名ジャーナリストが主張しています。
アップルの内部事情に詳しいBloombergのMark Gurman記者によると、同社は本社オフィスに数百人のストア従業員を招き、試用させる手順を説明したとのこと。
まず、従業員はアプリでユーザーの顔をスキャンします。これに基づき、顧客に合ったライトシール、フォームクッション、バンドサイズを用意。外光が入らないようにするライトシールには、25種類以上があり、クッションは2つのサイズがあります。
また眼鏡をかけている顧客に備えて、店舗にはレンズをスキャンして処方箋情報を得られる装置が設置。その数値に応じられるよう数百のレンズが用意されており、店の奥に控えた別の従業員が、デモ用のVision Proと適切なアクセサリーを組み立てます。
それが手元に届くと、顧客にインターフェイスの仕組みを説明。視線によりポインタを操作する方法、ジェスチャーで選ぶ方法、ヘッドセットの持ち方など。従業員はiPadを持ち、ユーザーがVision Proで見ているものを把握できます。
顧客がヘッドセットを装着したのち視線や手に操作が追従するよう、キャリブレーションする必要もあります。様々な明るさに設定された円形のドットパターンを見たり、ヘッドセットの視野内で手をスキャンしたりすることが含まれます。
これら一連の装着・調整が終わると、およそ20分~25分のデモがスタート。まずユーザーは写真アプリに誘導され、予めプリロードされた静止画やパノラマ映像を見る。それから3D映像の空間写真や空間ビデオ(誕生日パーティーの映像)を見ることができます。
ほか、コンピューターやiPadの代わりとして使う方法や、複数アプリのウィンドウを空間に配置したり、SafariでWebページをスクロールしたりする方法を説明。野生動物や海、スポーツなどの3Dムービーもあり、綱渡りをしている気分になれる迫真の場面もあるそうです。
さらにデモ用のVision Proには、来月発売される様々なサードパーティ製アプリもプリインストールされているとのこと。アップル純正アプリ以外も体験できるようです。
以上は、単に試用する場合のこと。実際に購入する顧客には、顔をスキャンした後、従業員がライトシール、バンドサイズ、クッションを箱詰めして販売すると説明しています。
またVision Proはオンラインでも購入できますが、その場合はユーザーが「顔スキャンシステムにアクセス」出来るとのこと。Gurman氏は、それ以上の詳細を語っていません。
米MacRumorsは、Apple Storeアプリに顔スキャン機能が組み込まれ、適切なコンポーネント(ライトシールやヘッドバンド等)のサイズに関する情報を提供するとの解析結果を報告していました。
ここまでの情報を元にVision Proを購入したい人がアップル直営店の店頭、あるいはオンラインで発注する場合の手順をまとめておきますと、以下の通りとなります。
アップルストア店頭での購入:従業員に顔をスキャンしてもらい、適切なライトシールやヘッドバンドを箱詰めしてもらう
オンラインでの購入:Apple Storeアプリで顔をスキャンして発注すると、適切なサイズのライトシール等が同梱されて送られてくる
なお、今回の情報では視力矯正用のインサートレンズがどのような扱いになるのかは不明です。
ZEISS製インサートレンズは「処方箋あり」と「処方箋なし」の2種類あり、それぞれ価格が異なります。上記の「レンズをスキャンして処方箋情報を得られる装置」を使った場合、それに応じたインサートレンズが店頭で買えるのか、またどちらの種類になるのかは、Gurman氏は言及していません。