2023年11月にM3シリーズ搭載のMacBook Proシリーズが発表されて、Macのノートパソコンのラインアップは非常に強固で安定したものになった。新入学のシーズンを控えて、学生さんやご両親から「どれを買えばいいの?」という質問を多くいただくので、ここにまとめて回答しておこう。
とにかく、Apple Silicon世代のMシリーズチップ搭載機が必須
現在、13万4800円のM1搭載MacBook Airから、109万2800円のMacBook Pro 16インチ最上位モデルまで、非常に多様なマシンが揃っている。
しかも、2020年に登場したApple Silicon(M1~M3 Maxまで、アップルが設計している新世代チップセット)搭載機になってからは、インテルMac時代より大幅に性能が向上しているので、いずれのマシンもお勧めできるようになっている。
特にパンデミック時代、学生にしろ社会人にしろビデオ会議アプリを使いながら、他のアプリを開くことが多くなったので、ある程度以上の性能は絶対に必要になった。
今でも、ビデオ会議をすると他の処理が重くなるようなパソコンを使っている人がいるが、それは他の人の効率まで下げてしまうから、本当にやめた方がいい。
実は、インテルのCore i5搭載のMacBook Air(2020 Early)あたりだと、ビデオ会議をしながら3D CADを使うと処理が重くなったり、フリーズしたりしたのだが、Apple Silicon搭載のMacなら、それがたとえ一番安いMacBook Air(M1)でも、ビデオ会議をしながら、重いグラフィックソフトを動かしたり、ビデオを編集したりしても何の問題もなく動作する。
そういう意味でも、まずApple Silicon搭載であることは必須条件だ。
ちなみ、Apple Siliconは、Mの後に続く数字が世代を表し、現在のところM1、M2、M3の3世代がある。非常におおまかに言うと、同世代のiPhoneのチップセットに2倍のコアを搭載したような構造をしている。
そして、それぞれの世代に追記のない無印、Pro、Max、Ultra(Ultraはデスクトップモデルのみ)が存在し、それぞれ無印からコア数がおおよそ2倍になるようなデザインとなっている。世界で一番大量に作られ、消費電力の少ないチップセットであるiPhoneのAシリーズチップをベースとして、そのコアを組み合わせるようなカタチで生産している。それが、Mシリーズチップの、低価格高性能低消費電力の秘密なのだ。
とにかく安いMacBookが欲しいなら
一番安い、Apple Silicon搭載のノート型Macは2020年11月に発売されたMacBook Air 13インチ(M1)。現行最新モデルより一世代古いが、廉価版モデルとして現在も併売されている。メモリー8GB、ストレージ256GBの最廉価モデルで13万4800円。
もっと安く手に入れられる一般的な手段は2つ。
ひとつは学割。最廉価モデルの価格は11万9800円となっている。
もうひとつはアップルの整備済み品。こちらは、原稿執筆時点では最廉価モデルの在庫はないが、随時更新されているので、時折チェックしてみるといいだろう。これは初期不良などで返品されたものを、アップルが修理したもの。箱などは新品ではないが、製品は新品同等。
いずれも、通常価格よりも安く、保証が効くのが魅力。
これ以上安く買うとなると、一般的な中古品になるが、コンピュータに詳しくない人ほど、保証の効く純正品の購入をお勧めしたい。ベテランなら適切な対処が可能だが、時に不具合があって動作しなかった時に、とても困ると思う。
メモリやストレージは、初めてコンピュータを使う人なら一番安い8GB/256GBで十分ではないだろうか? 筆者などは、すぐにストレージが足りなくなってしまうので、ついもうちょっと用心で積んでおけば? とは思うが。動画編集などを行うなら、512GBにしておいた方がいいかもしれない。
理想の『ファンレス』を実現したMacBook Air 13/15インチ(M2)
「とにかく安いものを!」というのでなければ、2022年6月に発売されたスタンダードモデルのMacBook Air 13インチ(M2)か、翌年6月に発売されたMacBook Air 15インチ(M2)がお勧めだ。
M2チップはM1から15~20%性能向上したアップデート版だが、メディアエンジンなど動画編集に最適化された回路も搭載されており、ビデオ編集などにも力を発揮する。
特徴的なのは冷却ファンを持たない『ファンレス』であること。
Mシリーズチップは、iPhoneのAシリーズチップにルーツを持つこともあって、処理能力あたりの発熱は非常に少ない。そこでファンレスとすることで、さらなる静音性と、軽さ、薄さを手に入れているのだ。
MacBook Air 13インチ(M1)は、もともと2018年に発売されたインテルCPU搭載モデルにApple Siliconを搭載した、いわば『古い革袋に新しい葡萄酒を入れた』製品だが、MacBook Air 13インチ(M2)は、Apple Siliconの素性に合わせて新設計された製品だ。
最適化されて、新設計されているのにはメリットがある。サイズや重さの差は大きくないが、ディスプレイ性能、オーディオ性能、カメラ/マイク性能、キーボードの質など、多くの部分に違いがあるので、買えるならMacBook Air 13インチ(M2)をお勧めする。
ポートは電源のMagSafe 3に加えてThunderbolt、そして3.5mmヘッドフォンジャックとなっている。最低限なので、SDカードの読み出しや、HDMIの接続には別途アダプターを調達する必要がある。
ちなみに、あまり目立ってはいないがMacBook Air 15インチ(M2)もお勧めできる製品だ。MacBook Pro 14インチシリーズより軽いし、ディスプレイが広くて作業性がいい。処理能力の高さより、ディスプレイの広さが使い易さを左右することもある。スペックだけ見てても良さに気付かない製品だが、Apple Storeなどで手に取る機会があれば、ぜひ触ってみて欲しい。
お金を積めば性能を得られるMacBook Proの世界
MacBook Proについては、これを必要とされている方は、何が必要かを把握しているベテランの方が多いと思うので、多くは語らない。
まず、MacBook Proシリーズは、輝度、色域、リフレッシュレートのスペックに優れたLiquid Retina XDRディスプレイや、フォースキャンセリングウーファー付き6スピーカーを搭載しており、モバイルノートとして、最高レベルの画質、音質を確保している。
また、HDMIポートやSDカードスロット、複数のThunderboltポート、MagSafe 3アダプターなどを装備しており、拡張性にも優れている。
MacBook Airシリーズでも、ノートパソコンとしては十分な画質/音質/拡張性を備えていると思うが、それを超える最上級の画質/音質/拡張性を備えるのがMacBook Proシリーズだ。
ディスプレイサイズは、14インチと16インチが用意されており、チップセットはM3、M3 Pro、M3 Maxが用意される。
ただし、M3搭載機は14インチのみで、さらに同機はチップセットの制約上Thunderbolt 4ポートではなく、Thunderbolt 3ポートを2口のみ搭載する。本体右側にはThunderboltポートを持たない。
とはいえ、処理能力はそれほど必要ないが、上質なディスプレイや、音響が必要だという人にとって、MacBook Pro 14インチ(M3)は貴重なチョイスだといえるだろう。バッテリーライフの異常な長さ(公称最大22時間)もメリットだと感じる人が多いだろう。
M3 Pro、M3 Max搭載のMacBook Pro 14/16インチについては、画面サイズ/チップセット/メモリ/ストレージの、どれに予算を割くかという問題になる。それにより、32万8800円~109万2800円(税込)と大きく価格が変わる。だが、資金を投じれば投じるほど高い性能が得られるのだから、クリエイティブワークに使う人、3Dグラフィックスや、ビデオ編集、プログラムのビルドなどに使う人にとっては価値はあるといえるだろう。
ラインアップが完成した今が買い時
2023年11月のMacBook Proシリーズの発売で、ノート型Macのラインナップはひと通り完成したといえるだろう。だから、今は、非常に選びやすい時期にある。
次に登場するとすれば、MacBook Air 13/15インチモデルのM3搭載機だ。だが、超安価なM1、M2搭載のミドルモデル、M3 Pro/Max搭載の最上位モデル……というラインアップのバランスの良さから考えると、MacBook AirにM3は搭載されないのかもしれないと思う。
となると、次の更新はM4登場時だろうか? 仮にMacBook Air 13/15インチモデルのM3搭載があったとしても、MacBook Pro 14インチ(M3)のおかげで性能は見えている。M2の、おおよそ15~20%増しの性能ということだ。
だとすれば、今のラインナップで取捨選択しても良いと思う。
アップルの製品ラインナップは、1年の上半期にはあまり動かない。
この春はVision Proの登場と、新型iPad Proの登場で忙しいだろうから、次にMacのラインアップに変化が訪れるのは6月のWWDCということになるだろう。今、MacBookシリーズを買えば、購入直後に新製品が出て悔しがることになる可能性は低い。まさに買い時だ。