火星ヘリコプターこと、NASAの「Ingenuity」が、火星で最後の飛行を実施しました。
最後の飛行は予定していたわけではなく、この日の飛行を終え着陸する際に、カーボンファイバー製ローターの少なくともひとつが破損しているしていることが判明したためとのこと。Ingenuityのシステムはまだ動いており、地上管制との通信もできていますが、NASAはもはや飛ぶことは難しいと判断しました。
Ingenuityは2021年に初めて「地球以外の惑星で航空機による最初の動力制御飛行」に成功しました。当初予定していた活動機関は30日間で、その間に5度の飛行しか予定されていませんでした。
しかしNASAはその後予定を大幅に延長し、最後となった2024年1月18日の飛行で、その飛行回数は通算72回を数え、総飛行時間は2時間を超える長さになったとのこと。また飛行距離も当初予想されていた距離の14倍に上ったと報告されています。
NASAのビル・ネルソン長官は声明で「他の惑星を飛んだ初の航空機となったIngenuityの歴史的な旅は幕を閉じた」「あの素晴らしいヘリコプターは、私たちが想像していたよりも高く、遠くまで飛び、NASA が最も得意とすること、つまり不可能を可能にすることに貢献した」と述べています。
上で説明したとおり、Ingenuityはまだ地上管制との通信ができていますが、初飛行から3年近くが過ぎた機体にはそろそろガタが来ているのか、最後のフライトのひとつ前の飛行試験では不時着を余儀なくされていました。
また、最後のフライトでIngenuityは、データを地上管制へ中継する役割を担っていた火星探査車Perseveranceとの通信が途切れる事態に見舞われました。通信が復旧したのは翌日のことで、さらに数日後にIngenuityのローターの破損を示す画像がNASAに送られてきたとのことです。
Ingenuityはもはや飛行試験はしないものの、今後チームは、最終的なテストを実行し、ヘリコプターのメモリーに残っているデータや画像をダウンロードした後、その運用を終了する予定です。
ちなみに、火星は重力が地球の約1/3しかないものの、大気成分の95%が二酸化炭素であるため、ヘリコプターが浮上するために必要な揚力を発生するのが難しい環境です。そのため、Ingenuityのローターは大きく、特殊な形状を持つよう設計されていました。