トルコのアブドゥラー・ギュル大学の研究チームが、有機太陽電池に小さな隆起を多数含む構造にすることで、従来の平らな構造の太陽電池に比べて、光の吸収率を最大66%も増やすことができたとSPIE Journal of Photonics for Energy (JPE)に報告しました。
太陽電池は通常、平らな表面を持っていて、光源の方向にまっすぐ向けたときに最も光の吸収率が高くなり、発電量が最大になります。
それに対し研究者らは、太陽光からより多くのエネルギーを取り込める太陽電池をめざし、その構造にシリカで球状ナノ構造を形成するなどの研究を行ってきました。
最新の研究では、チームはP3HT:ICBAと呼ばれる有機ポリマー活性層をPMMA基板とアルミニウム層の上に重ね、さらに透明なITO(酸化インジウムスズ)の保護層で覆った有機太陽電池をベースとし、その積層構造内に、「Hemispherical shell」とチームが呼ぶ、半球型のシェル構造を持たせたモデルを想定しました。
そして、このモデルに対して有限要素解析(FEA)と呼ばれる手法を用い、異なる光の波長や入射角などさまざまな条件で、この太陽電池全体の挙動のシミュレーションと解析を実施しました。
ちなみにFEAは、製品やシステムの構造や性能における、潜在的な問題や既知の問題を特定して解決するため、コンピューター上で実行されるモデリング手法です。
その結果、半球シェル構造太陽電池太陽電池は、平面構造のものと比較して、光の吸収率が36%~66%も増加することがわかりました。
また、太陽電池に当たる光の角度も、より広角度をカバーでき、シミュレーションでは最大82度までをカバーできたとのことです。
研究チームは、半球シェル構造は以前に研究した半円筒形のシェル構造に比べても、13~21%も光の吸収率が向上していると述べています。
今回の研究は、あくまでコンピューターを用いたシミュレーションで得られた計算上の結果であり、現物で実験されたわけではありません。
しかし、もし実際にこの構造を持つ太陽電池を作ることができ、研究で得られたような特性を発揮するのなら、太陽電池駆動のウェアラブル機器やIoT機器など、光が当たる角度やその他条件がよく変わるような用途の機器にも、安定的に電力供給ができるようになるかもしれないとのことです。