デザイナーのマット・ウェッブ氏は先週木曜日、天の川銀河の中心を矢印で指し示す、無料のiPhone向けARアプリ『Galactic Compass』をApp Storeに公開しました。
このアプリは、起動してiPhoneを水平な場所に置くと、画面上の大きな緑色の矢印が、われわれの住む天の川銀河の中心にある超大質量ブラックホール、いて座A*のある方向を指し示すようになっています。機能はそれだけなので、多くの人はこれを初心者が学習目的で作ったアプリだと思うかもしれません。それはある意味正しくもありますが、ウェッブ氏はこのアプリが「急速に変化する世界において銀河の中心を不変のものとして認識する」ためのものだと説明しています。
都心部に暮らす人々は、光害のために夜も明るい空のせいで、自分たちが無限に拡がる宇宙に浮かぶ惑星の上に立っているということを実感しにくくなっているはずです。Galactic Compassアプリはそんなとき、銀河の中心がどの方角にあるかを教えてくれることで、自分がいまどこにいるのかを認識するのに役立ちそうです。
ウェッブ氏はこのアプリを開発することを「10年ほど前」に思いついたのだそう。そして銀河の中心の方角を調べる方法を独学したとのことです。ただ、本人はアプリのコーディングに関する知識や技術を持ち合わせていなかったため、最近までGalactic Compassはアイデアのままでした。
状況が変わったのは2021年のChatGPTの登場でした。ウェッブ氏はこのAIアシスタントでコーディングを学びつつ、銀河の中心を特定するための複雑な計算を行い、その方角に矢印向けるARアプリを地道に作り上げたのだそうです。
ちなみに、このアプリはまだ本体の3D演算に問題を抱えており、iPhoneをテーブルの上のような水平な状態にしなければ処理が破綻してしまうとのことです。とはいえ、日々忙しさに追われるなかで、ふとしたときにこのアプリを立ち上げ、永遠に銀河の中心に存在しているブラックホールに思いを巡らせることは、疲れた気分をリセットするのにも良いかもしれません。