マッチングサービスとAIと電話の関係(CloseBox)

テクノロジー AI
松尾公也

テクノエッジ編集部 シニアエディター / コミュニティストラテジスト @mazzo

特集

結婚に至るパートナーとの出会いに至るきっかけ、いろいろあると思いますが、筆者の場合はあるロックアーティストの逮捕でした。

ポール・マッカートニーが、ビートルズ以来となる最初の来日公演を行うはずだった1980年1月、大麻所持により逮捕され、予定されていた武道館公演はなくなりました。

返金された代わり行ったTOTOというバンドのライブに一緒に行った軽音サークルの仲間と盛り上がり、コピーバンドを結成。翌年に一人が脱退したことで、代わりのメンバーを募集したら妻となる大学1年生が自分の下宿にピンク電話でオーディション申し込みをしてきたという次第です。

そんなトリッキーな馴れ初めを話してもへーと呆れられるだけで、一般的に有効な手法とはいえません。

まあよくある大学サークルでの結婚なのですが、筆者が所属していた軽音サークルは、バンド内結婚が多く、同じバンド内にのちに結婚するカップルが複数いたりとかはザラでした。

しかしコロナ禍の最中に学生生活を経験した方々は、入学早々にリモート講義となり、サークル活動でさまざまな人と触れ合う機会が失われたと聞きます。

では、生涯のパートナーとなる人とはどうしたら会えるのか。現在の日本では、結婚に至った人の4分の1近くがマッチングアプリを経由したものだという統計があります。

交際したい人同士を結びつける、いわゆる出会い系サービスは近年、想像以上の広がりを見せています。2012年にサービスを開始したペアーズ(Pairs)は、日本で結婚した人の10分の1がペアーズを使って結婚したものだという調査結果(調査主体はペアーズの運営会社であるエウレカ)があるほど、結婚に至る交際において大きなシェアを示しています。筆者の知人もここで知り合って幸せな結婚生活を送っているそうです。このくらいのシェアなら周りにいてもおかしくはないですね。

具体的には、1年以内に結婚した人の出会いのきっかけとして、マッチングアプリの利用率は22.7%、そして、ペアーズは9.9%と、全体のほぼ1割を占めている、というものです。マッチングアプリ利用者の中の1割というわけではなく、結婚した人の1割が、というのがなかなか驚きです。

例えば見合い結婚は、一時は5%くらいまで落ち込んでいたものの、2023年の国立社会保障・人口問題研究所による調査では9.9%まで上がっています。

こちらは異なる調査であるため、単純な比較はできませんが、マッチングアプリなどネットで知り合ったという比率は15.2%。ペアーズ調べよりも低い数値ですが、マッチングアプリにおけるペアーズのシェアを参考に、その半分弱がペアーズだとすると、落ち込んでいたときの見合い結婚くらいの存在感はあることになります。

これは結婚にこぎつけた人の数字ですから、サービスを利用している人の数はさらに膨大なものになります。ペアーズは​​2022年4月時点で累計ユーザー数が2000万を突破。

そんなサービスですから、悪質な利用者も出てきます。こうした問題をどのように解決しているのか、エウレカでAI部門を統括している奥村純さんに話を伺いました。

事前の本人確認である程度はスクリーニングできても、そこをかいくぐる人は出てきます。同社では不正利用ユーザーを排除するためにパトロールを行っていますが、仮想通貨や投資への勧誘、ぼったくりといった行為を目的としている悪質な利用者の場合、その行動に特徴があるそうです。

例えば、登録直後にありえない品質でプロフィールを完了させる、登録直後にいろいろな人に大量の「いいね」をするといった具合。

従来はこうしたパターンを見つけたらそれをデータ化して対策してきたのですが、悪質利用者はそうした検知をかいくぐって、イタチごっことなっていました。

しかし現在ではAIを利用した自動化システムが稼働しており、悪質利用者の利用傾向を人力で分析していた頃と比べて対応スピードは30倍になっているといいます。

メッセージの内容をモニタリングすればもっとすばやく効果的にスクリーニングできそうな感じがしますが、そこに制限がかかる理由があります。

それはエウレカが米国のマッチングサービス大手であるMatch Group(Tinderも傘下に持つ)に2015年に買収されており、日本の個人情報保護より何段階も厳しいレギュレーションに準じているためだそうです。

最大手ということもあり、AIはかなり堅実な使い方で、メタバースでの出会いやAI相手にトークの練習といったことにはまだ踏み込んでいないようです。

一方、AIを気軽な話し相手にということだと、モバイルアプリ「Cotomo」の人気が急上昇しています。Cotomoは現在iPhoneアプリのみ(Androidは開発中)の音声会話型おしゃべりAIアプリ。

なんとなく寂しさを感じている人にとってはよい癒しになるかもしれません。筆者も試してみましたが、応答スピードと対応力の豊富さということだと群を抜いているかもしれません。

AI荒井由実を実現した東京大学の高道助教が技術アドバイザーとして参加しているという話を聞いて、なるほどと納得しました。


AI相手に話すのも、パートナーを見つけるのもスマートフォンアプリから、というのも、固定電話でつながっていた昔と基本的には変わっていないのかな、なんて思ったりします。

自分の場合はすでに決まった相手がいるので、昨日手に入れた空間ディスプレイ「Looking Glass Go」ファウンダーズエディション(12万8000円)とiPhoneを接続して(電源供給とディスプレイ表示の両方ができるようになるそうです)、AIを使い、10年前に旅立った妻がいるかもしれない異世界とのコミュニケーションをとろうとこれから勉強するところです(表示が立体になるだけですが、AIで擬似的に話ができるようになるかもしれないという期待はあります)。


▲Looking Glass Factoryのショーン・フレインCEOとLooking Glass Goを手にした筆者


《松尾公也》

松尾公也

テクノエッジ編集部 シニアエディター / コミュニティストラテジスト @mazzo

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