自作キーボードの聖地、遊舎工房に行ってみたら、そこは沼だった(小寺信良)

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小寺信良

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ライター/コラムニスト

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18年間テレビ番組制作者を務めたのち、文筆家として独立。家電から放送機器まで執筆・評論活動を行なう傍ら、子供の教育と保護者活動の合理化・IT化に取り組む。一般社団法人「インターネットユーザー協会」代表理事。

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もういい加減にしろよと読者から怒られかねないのだが、まだまだキーボードの話である。

KeychronのK11 Proを購入し、散々いじくり回していたわけだが、まあさすがに自作までは時間ないし、キーボード改造もここまでかなと思っていた。ところが先日、PFUのHHKB Studioのお話を聞く機会があり、1995年当時の秋葉原の話などが出て、懐かしく思い出した。この記事はまもなくITmedia MONOistに掲載されると思うので、お楽しみにしていただきたい。

そのインタビューの中で、秋葉原のキーボード専門店「遊舎工房」の話が出て、そういえばまだ一度も行ったことないなと気づいた。だいたいこうした秋葉原の専門店は、沼度が高い。気難しそうな店員と常連がダベっていて、一見さんお断わり的な、素人が質問すると店員がめんどくさそうに対応するみたいな、昔ながらのアキバのニッチPCパーツ屋の気配がする。昔のアキバはそんな店ばかりだった。

なんとなくうっかり近づいたら大変な目に合いそうな気はしていたのだが、先週東京に出張する機会があったので、せっかくだから覗くだけ覗いてみよう、ダルい店だったらすぐ撤退、という気持ちで赴いた。

これが遊舎工房だ!

遊舎工房は秋葉原とはいえ、少し北側に外れた場所にある。アキバは昔からニッチな店ほど北側の末広町近辺に展開するという法則があり、90年代はMac専門店、2000年代はPDA専門店などが展開されたものである。

よくある雑居ビルの3階で、狭い小汚い階段を上るか、体臭に満ちたエレベーターで上るパターンを想像していたのだが、店舗は1階で拍子抜けした。

▲遊舎工房外観

店内はそれほど広くなく、売り場面積は10畳ぐらいだろうか。日曜日だというのに、あるいは日曜日だからか結構お客さんが入っており、常時10人以上はウロウロしている。2割ぐらいは外国人で、わざわざ地図で調べてやってきたのだろう。店内には各種スイッチの打ち比べマシンが置いてあり、熱心にスイッチのタッチを確かめてはメモを取っていた。

▲難なく変なキーボードに巡り会える店内

意外に女性客がそこそこあり、やはり自分に合うキーボード探しは男女関係ないのかなとも思われた。

自作キーボードの販売形式は、基板セットである。これに個数分のスイッチとキーキャップを買い、組み立てることになる。とは言え基板だけ見せられてもなんのこっちゃわからないので、店内はサンプルとして組み立てられた見本が展示されている。これで実際に打ってみて、手の馴染みなどが確認できる。一部ではあるが、お店側で組み立てた完成品も買うことができる。

▲スイッチのテストマシン。スイッチを押すと、そのスイッチの名称や特性が表示される

メカニカルキーボードというと、米国ではほとんどがゲーミング用途だが、日本の自作はそちら方向の傾向は薄いように思える。自作は文章を書く、しかもそこそこ長文を書くのにダルくないもの、という方向なのだろうと思われる。

というのも、自作のトレンドは今や半数以上が左右セパレート型だ。大型機はなく、極限まで少ないキーとフットプリントでやれるか、みたいなところの競争になってきている。またトラックボールと一体化したモデルも出始めており、これは今後トレンドになっていくのかもしれない。

店員さんの接客の様子を観察すると、忙しい店内にも関わらず、自作初心者にも非常に丁寧に接客しているようだ。昔のアキバの専門店とはずいぶん様相が違う。これは人気店になるはずだ。

まあ、うっかり買うよね

関西からの出張と思われるビジネスマンが、店員さんと相談しながら一通りのキットを無事購入できたのを見届けて、筆者も声をかけてみた。以前から気になっていたキット「Corne Cherry Light」が売られていたので、これは素人にも作れそうか、という相談である。

まずはスイッチ選びだが、別の展示品のキータッチが気に入ったので、これと同じものを、というと、すぐに在庫を確認してくれた。「Gateron Jupiter Switch Banana」というもので、タイミングによっては数が少なくなっていることがあそうだ。スイッチの中では比較的廉価なほうだという。

キーキャップはMX互換だというが、印字されていないものはバラで買えるものの、印字されているものはセット品を購入することになる。Corne Cherry Lightは42キーしかないので、セット品を買うとだいぶ余ります、と言われたが、まあ仕方がない。余ったキーは別のキーボードに差し替えて使う事もできるだろう。

あとは左右を連結するケーブルを買えば、一通りパーツは揃う。あとは組み立ててファームを書き込むだけだが、パソコンはMacなんだが大丈夫か、と聞くと、これも別の店員さんに確認して大丈夫だという確認が取れた。

そのほか注意点としては、接続ケーブルが基板スペースの都合で、USB Mini-Bになるそうである。今どき流行らないので大丈夫かと確認してくれたようだ。まあ古参パソコンユーザーならMini-Bケーブルは捨てるほど持っているので、困ることはない。

そんなわけで最初は抵抗していたくせに、お店にいるうちになんとなく一式購入してしまった。合計で3万円弱。特殊キーボードの価格としては、それほど高い買い物でもなく、東京みやげにはちょうどいい。何かあればこれが東京バナナスイッチだと言い張ればなんとかなる。

▲購入したCorne Cherry Lightの基板

▲バナナスイッチ

▲キーキャップ

遊舎工房では、キット一式を購入してお店の施設で組み立てて持って帰ることもできるそうである。購入している間にそういうお客さんが1人やってきた。別の部屋に工房があるようで、そちらに案内されていた。

筆者も時間があればここで組み立てて、特にファームウェアの書き込みが心配なので面倒みて欲しかったのだが、あいにく飛行機の時間があるので、そこまではできなかった。

キーボードの組み立ては、基板へのスイッチ実装など、手数が多いし時間がかかりそうだ。おそらく着手できるのは3月末ぐらいになってしまうと思うが、時間を見つけてボツボツやっていこうと思っている。


※この記事は、毎週月曜日に配信されているメールマガジン『小寺・西田の「マンデーランチビュッフェ」』から、一部を転載したものです。今回の記事は2024年3月4日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額660円・税込)の申し込みはこちらから。コンテンツを追加したnote版『小寺・西田のコラムビュッフェ』(月額980円・税込)もあります。



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《小寺信良》

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