Twitterの共同創業者で、現在は決済サービスBlockを率いるジャック・ドーシー氏は、最近Blueskyの取締役会から降りた理由として「(Twitterが犯してきた)あらゆる過ちを繰り返しているから」だと語りました。
ドーシー氏はTwitterの歴史のごく初期に、営利企業としての都合や、広告主など外部の力で運営方針を左右されることのない、オープンソースのプロトコルとしてのTwitterを構想していました。
しかし、Twitterが成長していくにつれ、違法コンテンツなどのモデレーションやユーザーのアカウント凍結といった対応が必要となり、オープンで分散したネットワークという方向性に舵を切るのは難しくなります。
理想とのギャップに不満が募っていたドーシー氏は、オープンソースの分散型SNS用プロトコル「AT Protocol」を用いた次世代Twitterを想定する、Blueskyの独立に資金を投じました。
現在はTwitter / X代替のひとつとして知られるBlueskyですが、元々はオープンなプロトコルの開発を主目的として、アプリとSNSの運用自体はあくまでリファレンスとしてプロトコルを実装するための位置付けです。
ドーシー氏は今回、ジャーナリストのマイク・ソラーナ氏によるインタビューに応じ、Twitterから独立して歩み始めたBlueskyが、昔のTwitterと同じような問題に遭遇し、同じ過ちを繰り返していることが不満だと述べました。
たとえば運用拡大のための投資を募ったり、取締役会を設置したり、モデレーションで人々を排除したりといったことを挙げています。
ドーシー氏は、Bluesky が独自の取締役会を開き株式を発行し、その他の営利企業的な活動を行う会社になることは意図せず、あくまでATプロトコルを使う最初の分散型SNSクライアントになることを目的としていました(Blueskyは公益法人として設置されています)。
しかし、ユーザー数が増えるにつれ、差別的な言葉を投稿やユーザー名に使って他の人を攻撃・不快にする者が現れたりしたため、ジェイ・グラバーCEOをはじめとする運営陣に対し、ユーザーらは何らかの形のモデレーションや、攻撃的なアカウントを凍結・削除するよう求め始めました。
そして、Blueskyの運営者らはそうした要望にひとつひとつ応えていきました。ただ、それはドーシー氏にとっては、まさにいつか来た道だったということです。
「そこで私はBlueskyのアカウントを削除し、Nostrに集中し、自分の能力の限りそこに資金を投じることを決め、(Blueskyの)取締役会からも外すようお願いしました。なぜなら、プロトコルに取締役会は必要ないと思うし、私が設立を手伝いたいと思ったものでも、資金提供を手助けしたかったものでもないからです」とドーシー氏は語っています。
Nostrは、Blueskyと同様にTwitter / Xの代替をうたうSNS技術で、Bluesky登場以前からドーシー氏が出資していました。
こうした考えについて、Blueskyの運営サイドの人々は当然ながらあまり快い反応を示していません。
Blueskyのプロトコル技術者であるポール・フレイジー氏はBlueskyへの一連の投稿で、純粋にプロトコルだけでなくネットワークを運営していることについて、TwitterこそATプロトコルの「最初のクライアント」になる計画だったが、イーロン・マスク氏が買収し運営を引き継ぐとすぐにその計画は破棄されたと述べました。
さらに「モデレーターのいない空間は馬鹿げたアイデアです。われわれが作ったのは、それぞれ異なるルールでモデレーションされた複数の空間どうしが競いあうための共有ネットワークです。もし誰かがモデレーションなしのAT Protocolアプリを作りたいと思うのなら、それもきっと可能でしょう。アプリストア、規制当局、そしてユーザーに受け入れられるのは大変でしょうが」と述べています。
インタビューでは、現在のX(Twitter)オーナーであるイーロン・マスク氏と自身の考え方の違いについても、ドーシー氏は語っています。そこでは、特にマスク氏を批判するようなことはなく「イーロンは自分のやり方でやるだろう」と理解を示しています。
以下は特に記事には関係ありませんが、歌詞がなんとなくTwitterやBlueskyに関わる人たちの気持ちを表しているように思えたので、Electric Light Orchestraの楽曲「Mr. Blue Sky」を貼り付けてみました。