スマートフォンは、個人の情報が詰まりまくったデバイスだ。メールやメッセージ、写真、検索履歴など、他人に見られたら恥ずかしいし、メッセージのキャプチャ画面が流出し、週刊誌に掲載されたりしたら、人生が一変する事だってあり得る。
しかし、一方で、家族や友人などに自分のスマートフォンを手渡して、写真やメールの中身を見せるという機会が度々あったりする。その際、ちょっとでも操作をされてしまうと、見られたくない情報にアクセスされてしまいそうでヒヤヒヤする、なんてこともあるだろう。
そんなスマートフォンで「やましいこと」をしている人に向けて、秋に正式公開されるiPhoneのiOS 18において、特定のアプリにロックをかけたり、画面上に「表示しない」ようにできるようになるという。
■ iOS 18で加わる「ロックされたアプリ・非表示のアプリ」
これにより、例えば、動画サイトや出会い系アプリなど、他人や家族には絶対に見られたくないようなアプリを「非表示フォルダ」にいれておけば、他の人に見られる心配が一気に無くなるのだ。
単にアプリが非表示になるだけでなく、メッセージやメールなどのコンテンツは検索や通知などのシステム全体のほかの場所にも表示されなくなる。つまり「風呂に入っている間に、通知があってバレてしまった」という心配も無いのだ。
仕組みとしては「非表示フォルダ」のなかにアプリを入れておけば良い。こうすることで、iPhone本体のロック解除をしたのち、さらにFace IDやTouch IDもしくはパスコードを入力しないとアプリが表示されないという仕組みだ。
ここでひとつ疑問が沸く。
そもそも「非表示フォルダ」なんてあったら、それこそ「やましい」のではないか。家族にiPhoneを手渡したときに「非表示フォルダ」を発見されてしまったら、「何、このフォルダ。なんか変なアプリが入っているんじゃないの?」と詰め寄られたりしないのか。
「非表示フォルダのせいで、家族の平和が壊されたりしないのか」という不安を抱えながら取材を進めたところ「非表示フォルダはiOS 18を入れているすべてのiPhoneユーザーにできるようになっている。アプリを入れていても入れていなくても、非表示フォルダは存在するため、特段、怪しいとは思われないはず」とのことだった。
iPhoneでやましいことをしていても、していなくても非表示フォルダがみんなに共通してあるというのであれば安心だ。
■ Apple Intelligence と Private Cloud Compute の仕組み
今回のWWDC、アップルの生成AI「Apple Intelligence」が話題だ。
しかし、基調講演直後、「Apple IntelligenceはChatGPTベースで作られている」なんて不正確な情報が出回った。これにより「iPhoneの安全神話が崩壊した」なんて言う人もいたが、実際は相当、プライバシーに配慮したつくりになっている。
ChatGPTは、あくまでSiriが質問に答えられないときにだけ、ユーザーの許可を得て接続し回答を得る仕組みになっているだけだ。挙動としては普通にiPhoneのSafariやアプリでChatGPTに問い合わせするのと変わらない。
アップルは、ユーザーのプライバシーを徹底的に守るスタンスを貫いている。
Apple Intelligenceは、基本的にはデバイス内で処理するものの、複雑なリクエストなど演算能力を必要とする場合は「Private Cloud Compute」というクラウドに投げる仕組みを取り入れた。
Private Cloud Computeの基盤はAppleシリコンを搭載したサーバー群だ。暗号化され、きちんとデータが安全に扱われているかの様々な検証を行うのは当然なのだが、Private Cloud Computeでは、iOSをベースにしたPrivate Cloud Compute OSが稼働。ユーザーのデータはリクエストの処理を行っているPrivate Cloud ComputeがiPhoneにレスポンスを返すまで保存されるが、リクエストの処理が終わればユーザーのデータを削除する。
Private Cloud Computeはストレージを有していないということで、物理的にユーザーのデータを保存しない設計になっている。もちろん、アップルの人間であっても、ユーザーデータを見たり、触ったりすることは不可能だ。
他社はユーザーのデータに興味津々なのだが、アップルはユーザーの情報に無関心だ。
広告や物販をメインにしている会社は、ユーザーのデータに合わせて広告を出し、購買行動に繋げることでお金を稼ぐ。
一方、アップルはiPhoneというハードウェアを売り、アプリや音楽、クラウドストレージを売ったり契約してもらう事で収益を上げていく。
このビジネスモデルの違いが「個人の情報に興味があり、利用するか。しないのか」という企業のスタンスの違いにつながっているのだ。
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