スポーツ観戦が劇的に変わる? WWDC24で体験したVision Proの最新アプリと次期OSレポート(村上タクタ)

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村上タクタ

フリーランスライター。1969年京都府生まれ。バイク雑誌編集者に憧れて上京し経歴を開始。ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌、デジモノの雑誌をそれぞれ7〜10年編集長として作る。趣味人の情熱を伝えるのがライフワーク。@takuta

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いよいよ、6月28日に日本でもVision Proが発売される。

米国から5カ月ほど遅れての日本発売とあって、待ち焦がれていた人も多いのではないだろうか。とはいえ、当初は『年内』と伝えられていたから、想定よりも早い日本導入ということになる。

米国での売行きがイマイチだったから、それ以外の国に販売する余裕があったとか、米国発売時に買いに来た日本人が非常に多かったから、日本発売の優先度合が高まったとか、いろいろな噂はあるが、アップル自体はそういう質問には回答しないので、真偽のほどは定かではない。

というわけで、WWDC24に取材に行ってきたので、そちらで得た情報を元に、現在のVision Proの状態をまとめるとともに、Apple Parkで取材できた3件のVision Proアプリについてご紹介しよう。

ちなみに、WWDCでApple Parkに行ったら、Vision Proを装着した人がいっぱいいるかと思っていたのだが、正直に言うとまったくいなかった。

アップルの担当者がVision Proを付けて技術説明をするとか、そういうことがあってもいいかと思うのだが、それもなかった。そういえば、ティム・クックがVision Proを付けて壇上に上がることもなかったし……。まだ、アップルとしても試験的な段階なのだろうか?

一番Vision Proを装着していたのは、なんと日本人メディアである(笑)

日本人メディアだけが、(日中の作業場所である)Apple Park Visitor CenterでVision Proを装着して取材写真を整理したり、記事を書いていた。海外メディアが、その日本人メディアを面白がって撮影していたぐらいなので、よほどめずらしかったに違いない。

そんな中、WWDCのKeynote当日である6月10日に、visionOS 1.2が公開され、即日ダウンロード可能となった。

visionOS 1.2では各国での発売の準備として、英語(アメリカ)、日本語の他に、英語(イギリス、カナダ、オーストラリア、シンガポール)、フランス語(カナダ、フランス)、ドイツ語、簡体中国語、韓国語、広東語(繁体字)がサポートされるようになった。

正直、英語が得意でない筆者は、日本語がサポートされて、とても使いやすくなった。

また、日本の技術基準適合証明(技適)も追加された。我々の2月に米国で買ってきた製品についても、visionOS 1.2をインストールすることで技適対応となった。良かった……(汗)。

続いて、この秋にはvisionOS 2が発表される旨もWWDCで発表された。

とにかく、発売に間に合わせた感のあるvisionOS 1に対して、初期に使いにくかったかなり多くの部分を修正してきてくれそうで、今から楽しみだ。

たとえば、現在はコントロールセンターは『上を見る』ことで現われるのだが、顔を動かさずに目だけを上に向ける必要があり、慣れるまで難易度が高い。これがハンドジェスチャーで表示できるようになる。

また、家族や友人をゲストユーザーとして追加できるようになったので、複数人でVision Proを共有するのが容易になる。これまで毎回、ゲストが使うたびごとにセットアップが必要だったので、これはかなり嬉しい変更。

ホームビューのアイコンも、現状は並べ換えられないのだが、並べる順番や位置ををユーザーが決められるようになる。現在はアルファベット順になっており、アプリが増えてきて、まさに不便を感じてきたところだった。

トラベルモードが電車をサポートしたのも嬉しいし、Macの外付けディスプレイとして利用する時に、最大4Kを2枚横に並べたサイズの曲面ディスプレイもサポートするようになるのも楽しみだ。

その他、visionOS 1.xでは、当たり前なのにできないことが多く、visionOS 2で『やっと!』ということが多い。

では、WWDCで、取材の機会を得られた3つのアプリをご紹介しよう。

■The MLB App

まずは、MLB(メジャー・リーグ・ベースボール)。

いわゆる大リーグの観戦用アプリだが、このアプリの仕上がりから、将来のVision Proでのスポーツ観戦のスタイルを想像することができる。

まず、フローティングしているディスプレイで、オンラインで有料配信されているゲーム中継の映像を見ることができる。

そして、それを見ながら、同時にさまざまな追加コンテンツを空間上に表示することができる。メインで大きく球場全体のミニチュアを表示して、俯瞰して観戦するのが基本的なスタイルだ。

その目線は、あたかも球場に行って、観客席から俯瞰して試合を見ているのに近いけれど、違うのは広大な球場のさまざまな視点を移動して見ることができるし、さまざまなデータがAR空間に表示されるということだろう。

投球されるたびに、コースと球種がバーチャルに強調されて表示されるし、ヒットを打てば打球もAR空間上に表現される。フローティングディスプレイの中継にはホームベースでのクロスプレーが写っていても、2塁、3塁のランナーがどこを走ってるかがARの球場には表示されているので、迫力あるシーンを見逃さすに、全体の試合状況を俯瞰して見ることができる。

また、別の画面には試合のスタッツを表示することもできる。

このアプリは、将来のスポーツ観戦のスタイルを予想させてくれる。

筆者はF1やラグビー観戦が好きなのだが、F1であれば、空間ディスプレイにトップチームのデッドヒートを映しつつも、VR空間上のコースで中団を走る贔屓の選手(たとえば、角田裕毅とか!)の位置を追い続けることができるし、タイヤのスタッツを表示して、次にどのドライバーがタイヤ交換にピットインするかを予想することができる。

ラグビーであれば、カメラが迫力のあるスクラムを追っていても、全体の選手の配置が見られるのは楽しいだろう。右側に引いているラインの後ろの選手が、左に移動して、アタックを仕掛けようとしているのを、従来の平面画面での中継では追うことができなかった。しかし、Vision Proでの観戦形式が定着すれば、そういう様子を見ることができるはずだ。

アプリの全チームが見られる契約で月額29.99ドル。年契約はシーズンが進むほど価格が下がっていく仕組みで、現在59.99ドルだった。

■Synth Riders

Synth Riders(シンセライダース)は、いわゆるBeat Saber的なVR音ゲー。すでにMeta Questなどでプレイできるゲームだが、そのVision Pro版が登場したというわけだ。

前から飛んでくる赤いNotesを右手、青いNotesを左手で触れ、線をたどり障害物を避ける……という意味では、Beat Saberに似ている。

さらに、Vision Pro版では特別な体験が用意されている。

完全にVR空間に入ってプレイするモードと、眼前に広がるVR空間から現実世界に飛び出してくるNotesを追うARモードだ。VRモードも迫力があるが、ARモードも新しい体験になりそうだ。

また、開発者はコントローラを持たないVision Proでこのゲームを成立させる難しさを語った。もちろん、Vision Proは左右の手を認識するのだが、スピードやタイミングが重要で、誤認識が許されないこの手のゲームで、左右の手をキチンと認識するのは非常に難しいことなのだそうだが、チームは見事にそれを実現していた。

Synth RiderはApple Arcadeに加入していれば、無料で楽しむことができる。

■Craft

高機能メモアプリとして愛用者が多いCraftもVision Pro版が出る。

空間に浮かぶメモアプリは、なかなかユニークな体験になりそうだ。

Craftはユーザーの体験にこだわっているということで、iPad版を使っている人も、ノートを開くとき、ホールドすると、それぞれ違う方向にユルッとズレる体験をご存知だと思うが、Vision Pro版でも空間上で同じことができる。

とはいえ、我々日本語ユーザーにとってのVision Proはまだまだ文字入力機能が発展途上ということで(フリック入力が空間での最適な文字入力手段だとは、とても思えない……)、Vision Pro上でノートを入力する機会は少ないかもしれないので、今のところ他のデバイスで入力しつつ、ビュワー的使い方が中心になるのかも。

しかし、見てるものを写真に撮って、テキストをコピペできる……となると、新しいVision Proの利用方法を切り開けるかもしれないというアプリだ。

150万本以上のiOS、iPadOSアプリが公開されているとはいえ、Vision Pro用アプリはまだ2000本ぐらい。米国以外での販売が開始され、さらにvisionOS 2が発表される秋に向けて、新しい『空間コンピューティング』を体現したアプリの登場を期待したい。

《村上タクタ》

村上タクタ

フリーランスライター。1969年京都府生まれ。バイク雑誌編集者に憧れて上京し経歴を開始。ラジコン飛行機雑誌、サンゴと熱帯魚の雑誌、デジモノの雑誌をそれぞれ7〜10年編集長として作る。趣味人の情熱を伝えるのがライフワーク。@takuta

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