仕様がほぼ同じなのに強力!?  FNIRSIのスポット溶接機は電池以外にも使えそう:#てくのじ何でも実験室

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宮里圭介

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需要のわからない記事を作る自由物書き。分解とかアホな工作とかもやるよー。USBを「ゆしば」と呼ぼう協会実質代表。

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1年ほど前に、興味本位で購入した激安スポット溶接機(Docreate)を紹介しました。


電池へのタブ付けならそこまで難しくなかったのですが、これ以外の用途、針金とか金属薄板とかを溶接しようとすると、どうしてもうまく溶接できません。

試行錯誤の末、ようやくインサートナットをニッケルメッキのタブにくっつけられたのですが、これより厚みのある金属薄板はうまくつかず、結局、工作用途を探るというネタはお蔵入りになりました。

本来の用途以外で使おうというのがそもそも間違いだ、と言われれば、まあ、その通りなんですけど。……でも、やりたいですよね。

都合よく、FNIRSIさんがスポット溶接機「SWM-10」を提供してくれたので、電池タブ以外の溶接ができるのか、はたまた、前回同様難しいのか、試してみたいと思います。


▲FNIRSIのスポット溶接機「SWM-10」

基本は同じでも、細かい部分が結構違う

とはいえ、過度な期待は禁物。まずはどのくらい仕様が違うのかを確認してみたのですが……あれ?これって中身一緒?っていうレベルで同じでした。ザックリ特徴を書き出してみると、こんな感じ。

  • 0.25mmまでのスポット溶接

  • 予熱→インターバル→主パルスという溶接手順

  • パラメーターは手動変更(簡易設定なし)

  • 自動の連続溶接回数は5回まで

  • 5V/2.1AのType-C充電

  • Type-Aで5V/2.1Aのモバイルバッテリー動作

  • 押し当ててから溶接までの遅延を変更可能

  • 溶接時の瞬間電流が表示可能

とくに、スポット溶接の手順やパラメーターの数値、設定範囲といった、基本性能部分が同じ。このあたりで、「やっぱ工作に使うのは難しそうかな……」という嫌な予感がしてきますが、ひとまず気にしないことにしましょう。

細かな部分を見ていくと、結構違いがあります。まずはSWM-10のいいところから。

  • PD対応充電器からでも充電できる!

▲5Vですが、PD対応充電器からも充電できるのえらい

手持ちのDocreateでは、PD対応のType-C充電器だと充電できなかったんですよね。地味ですが、結構大きな差です。あと、DocreateだとType-Aが光って眩しかったんですが、それがないのも地味にうれしいところ。

  • 溶接ペンの先を交換可能!

▲ねじが切ってあり、簡単に交換できるように

交換可能というだけでなく、予備のペン先が1セット付属しているのもうれしいところ。ただし、追加入手の手段は不明。AliExpressでも見当たらないんで、自分で作るしかないかも。

  • テスト用と思われる0.1mmニッケルタブが大量!

▲ニッケルメッキのスチールタブがこれでもかと付属

幅10mmのニッケルメッキタブが付属していました。巻いてあるので総長は調べていませんが、お試しというには結構な長さ。テスト用だとは思いますが、思う存分気兼ねなく使えるのはうれしいですね。

  • 内蔵のスタンドがある!

▲背面に折り畳み式のスタンドを装備

スタンドを開くと本体を立てられるので、画面を見ながらの溶接が大変やりやすいです。手持ちのDocreateでは寝かして使うしかなかったので(立てると倒れる)、かなり便利に感じました。

あと、操作ボタンが多いので、パラメーターを変更がしやすいというのもありますね。

続いて、SWM-10のほうが見劣りする部分です。

  • 溶接ペンのケーブルが短い

  • 日本語表示がない

  • パラメーターの目安が不明(マニュアルに記載なし)

  • 言語変更などの設定ページについて説明がない

この中で、強いて残念な部分をあげるとすれば、ケーブルが10cmくらい短いことでしょうか。とはいえ、溶接に不便って程ではないので、そこまで問題ではないでしょう。

日本語表示がないのは見た目だけなので、実質問題なし。それより、各パラメーターの説明はあるものの、「0.1mmタブならこの設定」みたいな目安がないのが不親切に感じました。Docreateのマニュアルを参考にすればいいですが、普通、スポット溶接機を複数持ってたりしませんしね……。

あと、言語変更などを行う設定ページの表示方法は書いてあるものの、長押しするっていう一言だけ。設定ページそのものは紹介されておらず、ここも不親切に感じました。まあ、それでも項目名を見ればわかるので、困ることはないです。

▲設定ページはこんな感じ。項目名で内容はわかります

実際に試してみたら……なんか強い?

それでは、溶接してみましょう。まずは基本として、電池のタブ付けから。使い古しのボタン電池(CR2032)にタブを付けてみました。

試してみたのはDocreateで一応溶接できた(強く引っ張ると剥がれることもある)、予熱5ms→インターバル5ms→主パルス10msというパラメーターです。

▲パラメーターの設定はこのように

ということで、試したのがコチラ。タブに折れがあるのは、引っ張って剥がれないか確認した形跡です。

▲ボタン電池にタブを溶接。よく見ると、左右の加熱跡に差があります

どちらもタブが溶接できていますが、左のSWM-10の方が、右のDocreateよりも円形の加熱跡が大きく出ています。また、タブのくっつき方も強力。Docreateは4つ中1つ剥がれましたが、SWM-10は4つとも剥がれる気配すらありませんでした。

もしかして、SWM-10の方が出力電流が高いのでしょうか。確認のため、溶接時の瞬間電流を画面でチェックしてみたのですが、DocreateもSWM-10も700A台前半と変わりませんでした。

他に差があるとすれば……溶接ペンですかね。残念ながら根元の径が違うため、差し替えテストはできませんでしたが、可能性としてはゼロではないでしょう。純粋に、Docreateが表示ほど出力がない、もしくは、SWM-10が表示以上に出力があるだけかもしれませんが。

どこまで主パルスを短くして溶接できるか試してみましたが、2msまで落としても、SWM-10ではタブがつきました。え、なにこれすごい。

調子に乗って金属薄板でテスト

こんなに簡単にタブが付くなら、工作用途でも使えるんじゃないか……そう期待するのも仕方がないですよね。

ということで、調子に乗って金属薄板を探してきました。まず手に入ったのは、ステンレスの0.15mm厚。これを適当に切って短冊にし、L字になるよう置いて溶接を試してみます。

▲L字になるよう重ねて溶接。土台は真鍮の塊です

土台にしたのは真鍮の塊(円柱のカット品)で、直径40mm、高さ10mm。この上に対象を載せ、上から溶接ペンを押し当てました。


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パラメーターは、2ms→2ms→5ms。右の加熱跡が大き目なのがSWM-10で、ガッチリ溶接できています。これに対して左のDocreateは、すぐに剥がれてしまいました。電池のタブだけでなく、0.15mmのステンレス薄板でも同じような結果になりました。

ちなみに、Docreateはどのくらい主パルスを長くすれば溶接できるか試したのですが……最大の30msにしてもまともにつかず、簡単に剥がれちゃいました。SWM-10、強いです。

ここからはSWM-10のみ試していきます。

さらに厚みのあるステンレス板ならどうだろうと、1mmのステンレスプレートに0.3mmのステンレス薄板(機器分解用のツール)の溶接でチャレンジ。

さすがにこれは無理だろうと思ってたのですが、主パルスを最大の30msにまで上げれば、何とか溶接できることが判明。たまに剥がれてしまうこともあるので完璧ではないですが、複数回&複数ヶ所溶接することで、ギリギリ溶接できました。

▲0.3mmと厚めのステンレス薄板もギリギリOKに

仕様に最大0.25mmとありましたし、能力的にはここが限界なんだろうなというのが見えますね。

この成功に気をよくして、次はアルミの薄板を……と思うも、手元には一番薄いもので0.4mmしかなかったのでこれでチャレンジです。

結果は惨敗。というか、そもそもショートが検知されてしまい、まともに動作していません。設定でショート検知はオフにもできますが、怖いのでやめておきます。

▲0.4mmのアルミ板は、ショート検知に引っかかって動作不可でした

材料ボックスをあさっていたら、0.25mmのブリキ板が出てきましたが、こちらは最大の30msでも溶接できませんでした。スチールやステンレスあたりが溶接に向いているようです。

1mm前後の針金を用意してテスト

薄板以外だとどうなるのかが気になり、いろいろな素材の針金を用意してみました。あまり太いと溶接できなそうですし、細くても使い道が難しいので、1mm前後で入手できたものを使います。

SWM-10のパラメーターは、予熱5ms→インターバル5msまでは共通で、主パルスを5msから30msまで、5刻みで変動させて試しました。

まず最初は、0.9mmのピアノ線。5msでもソコソコついてくれますが、指でつまんで揺するとすぐに剥がれてしまいます。また熱に弱いのか、主パルスを長くすると、軽く曲げるだけで溶接した部分から折れてしまうことも。

あまり溶接に向いていない素材のようです。

▲ピアノ線は硬くて加工しづらいですが、溶接も難しめです

続いて、1.6mmのスチール針金。一般的な針金ですね。以前、クリップでそれなりに溶接に成功していたので、ちょっと太めですが結構期待していました。

主パルスが短いとダメですが、15msあたりから一応溶接できるように。ただし、ピアノ線と同じで軽く動かすと剥がれてしまい、強度は期待できません。主パルスをさらに長くすると強度は多少上がりますが、剥がれてしまうというのは変わりません。

これは1.6mmと太めだったのも敗因だと思ってます。

▲期待してたスチール針金ですが、太かったのかうまくいきませんでした

難しいだろうなと思いつつ、次にチャレンジしたのは1mmのアルミ針金。表面がコートしてあったので、紙やすりで削り取ってからのテストです。

20msまで試しましたが、溶接できたように見えても軽く触れるだけで剥がれてしまうため、溶接はできないと考えた方がよさそう。20msでやめたのは、火花が派手に出ていたので、怖くなってきたからです。アルミ薄板ではショート検知されてましたしね。

▲薄板と同じく、溶接が無理だったアルミ針金

導電性が高い銅針金があったので、こちらも試してみました。太さは0.9mm。ショート検知はされなかったものの、20msまで試しても全く溶接できる気配がありません。加熱されたかのような色変化はありますが、それだけでした。

▲銅針金でも一応加熱されてるようですが、失敗

最後はステンレス針金。薄板での成功があるので、最も期待していたものです。ちょっと太めの1.2mm。

5msは無理でしたが、10msや15msあたりで溶接できます。指で揺らしていると最終的には剥がれてしまいますが、スチールよりも強度が感じられ、これなら工作で使えるかも、というレベルです。

▲一番可能性が感じられたのが、ステンレス針金

ちなみに、20msで試したときに針金が溶接した位置から折れ、破片がどこかへ飛んで行きました。作業は長袖着用で、保護メガネを忘れずにつけましょう。

SWM-10なら工作用途での利用も視野に入る!

どんなものでも溶接できるような強さはないものの、0.25mm以下のステンレス薄板であれば、実用的な溶接が可能だというのが判明したのは収穫。

片方が薄板であれば、もう片方が1mmと厚手のプレートであっても溶接できるので、使い方の幅は広そうです。

一度は諦めていた工作用途での活用ですが、SWM-10であれば結構楽しめそうですね。ただし、今回試した感じだと、ステンレス薄板に限りますけど。

《宮里圭介》

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