サムスン電子は、1月22日(現地時間)に米カリフォルニア州サンノゼで、「Galaxy Unpacked」を開催。このイベントで、「Galaxy S25」シリーズを3機種発表しました。
3機種中、「Galaxy S25+」をのぞく2機種は日本でも発売されることが明かされています。国内では、大手キャリアも取り扱う予定です。
▲1月22日(現地時間)に、サムスン電子はGalaxy S25シリーズを発表した。写真左のGalaxy S25+以外は日本でも発売される
■ハードよりAIの進化
発表された内容を見ると、Galaxy S25シリーズは昨年同様、どちらかと言えばハードウェアよりも“AIの進化”に重きが置かれていました。
誤解を恐れず言えば、ハードウェアは先代からの発展形。カメラの数が増えたり、本体やディスプレイサイズが極端に変わったり、一気に薄型化したり、折り曲げられるようになったりといったことはありません。
▲ディスプレイの角が丸くなったGalaxy S25 Ultra
▲手になじみやすいサイズ感のGalaxy S25。このサイズでも、処理能力などは上位モデルと変わらない
チップセットに「Snapdragon 8 Elite for Galaxy」を採用しているなど、処理能力は大幅に上がっているものの、フラッグシップのGalaxyを追いかけていた人には想定の範囲内と言えるでしょう。
重量もGalaxy S25 Ultraが15g、Galaxy S25が5gほど軽くなっていますが、めちゃくちゃ軽くなったかと言えばそうでもありません。
それ以上に大きかったのは、Galaxy AIの進化。Galaxy S24シリーズで対応した文章作成、文章読解の支援や、画像生成、画像編集などの機能に加えて、新たに「AIエージェント」のような仕掛けが盛り込まれました。
「AIセレクト」はその1つで、画面内に表示されたコンテンツを読み取って、そのあとに利用するであろう機能をメニューに表示します。
▲AIセレクトを使うと、そのコンテンツに合った機能などが提案される。写真のようなメニューを読み込んだところ、翻訳が候補に現れた
さらにインパクトがあったのが、グーグルと共同で開発したGeminiのシームレスなアプリ体験。
「○○〇を検索して○○〇さんにメッセージで送っておいて」や、「〇○○を調べて結果を保存しておいて」といった操作を、Geminiに頼むだけで実行できるようになります。調べたイベントの日程を、カレンダーに自動で登録しておくといった操作にも対応しています。
▲「次のUnpackedの予定をカレンダーに登録しておいて」と言っただけで、Geminiが検索をし、その結果を自動的にカレンダーに登録した。操作の手間が大きく省ける
▲「近くの日本食レストランを調べてSamsung Notesに保存して」という命令も、実行できた
まだまだできること、できないことがあり、すべての頼みを聞いてくれるわけではないため、使いどころは限られてきますが、AIエージェントの実現に向け、大きな一歩を踏み出した印象。
AIの搭載により、スマホの使い方が大きく変わる将来が垣間見えてきたという意味では、昨年発表されたGalaxy AIよりもインパクトがあったように感じています。
■ソフトバンクの取り扱い復活
AIとは別に、日本向けにも大きなサプライズがありました。それが、ソフトバンクでの取り扱いです。
ソフトバンクは、約10年前の15年に発売された「Galaxy S6 edge」を最後に、同シリーズを販売できていませんでした。鳴り物入りで発売したものの、結果が振るわなかったのがその一因と言えそうです。
現在ではグーグルとガッツリ協力し、Pixelを推しに推しまくっている同社も、当時はiPhone一辺倒。Androidの取り扱いに慣れていなかったことも、敗因だったと言えるでしょう。
▲ソフトバンクは、Galaxyシリーズの取り扱いを“再開”する。メインブランドのソフトバンクで販売される
その間、サムスン電子もブランド力を向上させ、存在感を高めています。価格帯の安いエントリーモデルやミッドレンジモデルだけでなく、フラッグシップモデルがきちんと売れるメーカーとしてもキャリアの間で高評価を得ています。
2024年度上期ではシェア4位をキープ(MM総研調べ)。Androidの中では、シェア3位に入っています。
約10年ぶりの販売となるだけに、ソフトバンク側もかなりの気合を入れていることがうかがえます。同社の意気込みは、その販売価格にも表れています。
特にインパクト大なのが、ノーマルモデルのGalaxy S25。最新鋭のフラッグシップモデルにも関わらず、発売後、いきなり「月額3円」で取り扱われることが分かりました。
▲販売するのはほか2キャリアと同様、Galaxy S25とGalaxy S25 Ultraの2機種。中でも価格面でインパクトがあるのが、Galaxy S25だ
これは、ソフトバンクの「新トクするサポート(プレミアム)」を使ったときの話。同プログラムでは、1年目(12回目)までの価格を抑え、残り36回分を残価に設定しています。端末をソフトバンクに返すことで、その36回分の支払いが免除されます。
1年での下取りには「早トクオプション」の利用が必要ですが、これも2万2000円に抑えられており、端末代としてかかるのはトータル2万2036円。発売直後のフラッグシップモデルとしては破格と言える安さです。
なぜこれが可能になったかというと、1つには残価設定の高さがありそうです。Galaxyシリーズは幅広い国や地域で流通するグローバルモデル。その広さは、iPhoneにも匹敵します。むしろ、日本以上に海外での売れ行きがいい端末です。
結果として、中古品の需要が全世界で高くなるため、中古店が買取価格を高めにつけやすなります。現行の端末購入プログラムでは、これを参照して残価を決めているため、グローバルで流通する端末ほど有利な価格設定をしやすいと言えるでしょう。
▲昨年12月のガイドライン改定で、残価の算出に中古携帯業者の業界団体であるRMJが出すデータを参照することになった。これにより、グローバルで流通している端末の方が価格を抑えやすくなった
Galaxy S25は、この特徴にしっかりマッチしています。ここ最近のソフトバンクは、本体価格が10万円を少し超えるハイエンド端末を格安販売することでユーザーの支持を集めています。一方、24年12月のガイドライン改正で、一部モデルは値上げを余儀なくされてしまいました。残価を盛れないことが、その理由です。これに対し、ソフトバンクがどう対応してくるかが注目されていましたが、残価の高いGalaxyを導入することでそれを解決した格好です。
また、今までの経緯から、Galaxyのユーザーにはドコモやauのユーザーが多く、筆者のように「Galaxy Z Fold6」にソフトバンクのSIMカードを挿して使っている人はレア中のレア。ソフトバンクにとって、この2キャリアからユーザーを獲得するにはうってつけの端末と言えます。ここにも、ソフトバンクがアクセルを踏む理由がありそう。
Pixelがそうであったように、3キャリアから出そろったことでGalaxyをめぐるキャリア同士の戦いも過熱しそうです。