Adobe が Acrobat の生成AI機能「Acrobat AIアシスタント」日本語版の提供を開始しました。
PDFやWord、PowerPoint等のドキュメントにテキストや音声で質問したり、要約させたり、要点の質問と答えを生成してくれるAI機能です。
分量の多い資料やプレゼン、論文等から必要な情報を見つけ把握するのは手間のかかる作業ですが、Acrobat AIアシスタントは文書を分析して会話で質問に答えてくれます。
文書全体やセクションごとに要約できるのはもちろん、ピンポイントな質問に根拠となる部分をハイライト引用して回答も可能。
さらに文脈に応じて、たとえばイベント案内なら登壇者は誰?に続いてその人の役職は、経歴は、など想定される質問を先回りして生成して、回答を提示する機能も備えます。
必要な情報が見つかったら、内容をメールやプレゼン、Slackメッセージ等の体裁で生成させることも可能。内容を確認して、そのまま次のアクションに利用できます。
他社のAIチャットボットやLLM(大規模言語モデル)ベースのアシスタントも、文書ファイルをアップロードしたり貼り付けてコンテキストとして与え、内容を回答させることはできますが、Adobe によればAcrobat AIアシスタントの利点は、
・文書内にある情報のみを要約するため、AIが不正確な内容を捏造するハルシネーションがない (起きにくい)
・回答の根拠が元の文書のどの部分なのか、リンクとハイライト引用で明示できる
・想定される質問を作るナビゲーション
・PDFのほかWord、PowerPoint等、多くの形式に対応
・顧客データ尊重。読ませた内容は同意なしにサーバ保存されたり、トレーニングに使われない
・見つけた / まとめた内容を目的に応じた体裁で生成。メールやプレゼン等
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Acrobat AIアシスタントは、デスクトップのAdobe Acrobat とAcrobat Reader アプリのほか、webアプリ版、モバイルアプリ、ブラウザ拡張のAcrobat から利用可能。
文書を読み込ませて要約させたり、回答を生成するたびにクレジットを消費し、なくなると追加サブスクが必要です。
価格は月680円から。これは年間契約を月々払いした場合の価格で、解約手数料の発生しない月々プランは月980円。年間一括で支払えば年8080円で、「年間契約を月々払い」より数十円安くなります。
Adobe Acrobat 自体が個人向け月1518円からの有料サブスクアプリですが、AIアシスタントは含まれておらず、別に支払が必要です。
AIアシスタントのみを使いたい場合、無料のAcrobat Reader を使い、Acrobat AIアシスタントにのみサブスクすることもできます。
Creative Cloud 全部入りに加入していても、Acrobat AI アシスタントには別途サブスクが必要です。
(Creative Cloudにはプランによって、Adobe Firefly の生成AI機能を従量制で使える生成クレジットが含まれていますが、そちらとは扱いが別で、流用はできませんでした。)
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実際にお試しでビジネスプレゼンやブリーフィング、デジタル機器の取説などを読み込ませてみたところ、ある程度具体性のある質問にはしっかりとピンポイントで回答してくれました。
AIにつきまとう「本当の意味で論理的な理解はしていない・もっともらしい嘘を捏造する」問題も、回答ごとに根拠となるソースに飛んで原文を確認できるため、検証する手間は少なくなります。
所詮は現時点のLLMベースなので、難解な論文を読ませたら筆者と同じレベルで問答できるようになったり、法律の条文を読ませたら独特の読み方に基づいて法解釈ができるというわけではありませんが、長いドキュメントから必要な部分をまず見つける際に、単語や短文レベルの検索を繰り返すよりははるかに効率的。
特に想定質問と回答を先回りして生成して、質問を選ぶだけで読み進められるナビゲーションは便利です。
アドビは3月13日に、このAcrobat AIアシスタントの機能について学ぶ無料のウェビナー を開催予定。参加は無料です。
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