見せてもらおうか アップル純正モデムの性能とやらを。iPhone 16e 実機先行レビュー(石野純也)

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石野純也

石野純也

ケータイライター/ジャーナリスト

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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まもなく発売される「iPhone 16e」は、廉価版ということもあり、さまざまな面でコストダウンが図られています。

一方、この端末からの新たな取り組みもあります。一番大きいのが、アップルが独自開発したモデム「Apple C1」を搭載していることです。

▲iPhone 16eがいよいよ2月28日に発売される。モデムマニア必見と書いた伏線を回収する意味も込め、同機種の通信状況をチェック

iPhone 16eではコストダウンの結果かは不明ですが、3キャリアの1.5GHz帯(Band 11/21)が省かれています。そんな気になる新規採用モデムの実力を発売に先立ちテストする機会がありましたので、さっそく見ていきたいと思います。

モデムが刷新されたと言っても、通信関連の機能はおおむね、これまでの機種と同じです。端末の設定メニューなどを見る限り、特に違いは感じられません。対応周波数にはやや違いがあるものの、物理SIMとeSIMやeSIM、eSIMのデュアルSIMに対応している点は既存のiPhoneと同じ。5G関連の設定メニューも変わっていません。

▲モバイル通信の設定周りのメニューは特に変わっていない

また、既存のモデムを搭載するiPhoneからeSIMクイック転送でプロファイルを移すこともできました。続く画面はpovoのeSIMを移し、ドコモのeSIMとデュアルSIMにしたところですが、こうした使い勝手は従来どおり。この点で、ユーザーがモデムの変更を強く意識する必要はなさそうです。iPhone 16eを購入するような比較的ライトなユーザーであれば、なおさらです。これを気にするのはマニアぐらいでしょう……。

▲eSIMクイック転送も普通に利用できた

試用期間が短く、都内から出る機会がなかったため100%と言い切るのは難しいですが、試用中に問題はなにもありませんでした。事前に180以上のキャリアと通信テストを重ねてきたということもあり、通話も普通にVoLTEで発着信できています。

Androidから接続を確認してみましたが、FMラジオ相当の広帯域で通話できる「VoLTE(HD+)」での通話も可能。この規格である「EVS-SWB」はドコモが標準化に参画したものですが、アップル独自のモデムであるApple C1もきちんとサポートしていたようです。スペック表には出ない部分で、ほかの端末に対する優位性にはならないものの、新モデムだからと言って通話品質が劣化するといったことはなさそうです。

▲VoLTEは、高音質通話に

こちらも、あまり記載されませんが、キャリアの案内を見るとiPhone 16eも5Gを単独で使う「5G SA」に対応しているようです。実際、ドコモのeSIMを入れて5G SAエリアに行ってみたところ、フィールドテストモードにSAで通信している旨が表示されました。その場で通信速度を測ってみたところ、363Mbpsとまずまずの速度を記録しました。

▲5G SAにも対応している。ドコモの場合、回線側でオプションをつけて設定で有効化すると5G SAで通信できるようになる

▲5G SAで通信。速度も300Mbps超え

ただし、同じ場所で「Galaxy Z Fold6」を使って、これまたドコモの5G SAで通信してみたところ、速度は400Mbpsを超えていました。つかんでいる周波数帯が異なっていたためと思われますが、新しいモデムだからと言って、必ずしも通信速度が速くなるわけではないことがうかがえます。

▲ほぼ同時刻に別の端末でドコモの5G SAを使ってみたところ、より高い速度が出ていた。接続しているバンドの違いもありそうだ

冒頭で挙げたように、ドコモのBand 21やKDDI、ソフトバンクのBand 11に非対応な点も気がかりでしたが、こちらに関しては、あまり大きな違いがありませんでした。比較用にGalaxy Z Fold6がBand 21をつかんだ場所でスピードテストを繰り返してみましたが、速度に大きな差はありません。むしろ、より帯域幅が広いBand 3をつかんだiPhone 16eのほうが、速いこともあったほど。

▲ほかの端末だとBand 21をつかむ場所でも、Band 1か3しか接続しなかった。ただし、速度はあまり変わらず

▲こちらはGalaxy Z Fold6でBand 21に接続した場合。上記2つとほぼ同じ場所で、速度にも大きな差は出なかった

都市部のトラフィック対策として導入されているBand 21ですが、Band 1やBand 3があるところでは対応端末でもそちらをつかむことが多々あるため、違いが少なかったと推察できます。仕様面ではやや不安があったものの、少なくとも都内ではクリティカルな問題があるわけではなさそうです。

ただし、筆者がよく行くスポットでもBand 21がもっとも受信状況がいい場所が複数あります。中でも利用頻度が高いのが自宅。ここでは、まず電波状況のいいBand 21をつかんだあと、キャリアアグリゲーションで速度を上げていき、アベレージで200Mbpsを超えています。

一方でBand 21非対応のiPhone 16eだと、キャリアアグリゲーションしてもBand 21を束ねることができません。そのため、速度は127Mbpsにとどまっていました。それでも100Mbpsを超えているため、実利用にはまったく問題はありません。

▲筆者宅はドコモだとBand 21の電波がもっとも強いためか、iPhone 16eだと100Mbps程度しか出なかった

▲Band 21対応のAndroidだと、コンスタントに200Mbpsを超える

同様に、筆者事務所内でもBand 21対応端末だと30Mbps超の速度が出ているのに対し、iPhone 16eは10Mbps強にとどまっていました。クリティカルな問題ではないものの、比較すると速度が遅くなるケースはあるようです。一部の場所で、ピークに近い速度が出ないことがあるという程度に捉えておけばいいでしょう。

モデムの省電力性能も高く、バッテリー増量と合わせてトータルで駆動時間を延ばせているのもiPhone 16eの特徴。そのためか、午前中から昼過ぎにかけてスピードテストを繰り返しても、15時時点でバッテリー残量は95%残っていました。

▲スピードテストとスクショのチェックを繰り返したが、バッテリーの減りは緩やかだった。新モデムの効果と言えそうだ

正直なところ、一発目のモデムでここまできちんと各種通信方式をサポートしつつ、きちんとスループットが出ていることには驚かされました。インテルのモデム部門を買収したあと、約5年の歳月をかけて作り込んできただけのことはあると感じた次第です。


《石野純也》

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