昨今はガジェットの中でも「隠れた人気商品」としての地位が定着した、小型のUSB急速充電器(ACアダプタ)。とくにここ2年ほどは、GaN(窒化ガリウム)パワー半導体をはじめとした小型化技術と高出力化が進んだことで、魅力的な製品が続々と登場しています。
中でも昨今は非常にアツいのが、最大100W級のモデル。ACアダプタ側のキーデバイスとなるパワー半導体などがこなれてきたという事情や、大電力を要求する機器の増加などを受けて、意欲的な新製品が発売されている、というわけです。
そんな中、USB ACアダプタの基準的ブランドともなっているアンカー・ジャパンが、いよいよ本格参入します。それが、本日発売される『Anker 736 Charger』。価格は8990円(税込)です。
ただし同機は、モデル名よりも通称である『Nano II 100W』で呼んだほうが通りが良いでしょう。アンカーの小型ACアダプタ最新世代を示すNano IIを冠した――「待望の」というフレーズが嘘にならない――最大100W版というわけです。
このNano II 100Wは、4月の同社プライベートショーでプレビューされ、6月発売予定と公開されていたモデル。今回はついに発売となった、という流れです。
端子構成は、USB Type-C×2基+USB Standard-A×1基の、いわゆる「C2A1」構成で、出力は最大100Wジャスト。対応スマートフォンなどで充電を高速化、高効率化できるPPS(Programmable Power Supply)仕様にも対応します(PPSでは最大出力は80W)。そして気になる複数ポート使用時の電力制限に関しては後述します。
注目の本体サイズは、約67×57×32mm(プラグ部分を含まず)、重量は約206g。もちろんACプラグは折りたたみタイプです。サイズ感としては、いわゆる手のひらサイズより小さめな、「手で握れるサイズ」といったところ。
これをアンカー側は「一般的な96W出力の充電器よりも約35%小型化」とアピールします。
同社の比較ではアップル製モデルとの比較となりますが、むしろ比較対象としては、アップル製品の67W版(73×73×28mm、205g)よりも小さい、と表現したほうが適切かもしれません。
言い方を変えれば、アップル製67W版ACアダプタを普段使っているユーザーにとっては「純正とほぼ同重量、なおかつ一回りほど小さいACアダプタで、iPhoneやiPadなども同時に充電できる」という、魅力的なモデル――というわけです。
なお多端子タイプという枠組みであれば、先行していたAUKEYの『PA-B7』がC2A2構成と、本機より端子は多いものの、本体サイズと重量は約69.8×69.3×33mm、223gで、本機のほうが小型、軽量。
さらに1ポートのみの機種にも比較対象を広げた場合、同じくAUKEYの『PA-B5』が57×57×32mmで151gとなっています。が、100Wクラスでは(総合出力に余裕があるだけに)単ポートと多ポートでは使い勝手に大きく差が出るもの。
そう考えると、本機のサイズと重量はさすが大手メーカーの最新モデル、と特筆できるものではないでしょうか。
なお、既発売のNano IIシリーズと比較してみるとこのような感じに(右端が本機)。さすがに多ポート型のため、65W版(右から3種目)と比べても大柄ではありますが、出力とポート数の割には小さいと、十二分に主張できるサイズと思います。
さて、USB ACアダプタ好き、またはともかく本機を使ってみたい、というユーザーにとって重要なのは、複数ポート時の出力の割り振りでしょう。
当然ながら、最大100Wというのは総合出力のため、制限は受けます。が、後発だけありユーザーが使いやすいであろう、と思える出力パターンになっているのが特筆できます。
たとえば、USB-C×2出力時は60W+40Wと、それぞれ5Wほど小さくなりますが、代表的なACアダプタに近い設定。また上側のUSB-CとUSB-Aならば、80+18Wと、iPhoneの高速充電をUSB-A側で賄えるだけでなく、ほぼフルパワーが使えます。
また気になる全ポート同時利用時では、45+30+18W(合計最大93W)と、PCとスマートフォン(またはタブレット)、そしてアクセサリなどの同時充電時に便利な振り分けに。こちらもUSB-A側に18Wが確保されるのがポイントです。
すでに多ポートタイプのACアダプタをお使いのユーザーはおわかりかと思いますが、こうした出力制限は、意外なまでに大きな実用性の差となるもの。このあたりの設定に関しても、後発のメリットを活かしたところと呼べそうです。
●1ポート利用時
USB-C出力:5V=3A / 9V=3A / 15V=3A / 20V=5A(最大100W)
PPS出力:3.3~16.0V=5A(最大80W)
USB-A出力:4.5V=5.0A / 5.0V=4.5A / 5.0V=3.0A / 9.0V=2.0A / 12.0V=1.5A(最大22.5W)
●2ポート利用時
USB-C (2 ポート同時):60W+40W(合計最大 100W)
USB-C (上部) + USB-A:80W+18W(合計最大 98W)
USB-C (下部) + USB-A:60W+22.5W(合計最大 82.5W)
●全ポート同時利用時
45+30+18W(合計最大93W)
このように本機種は、「モバイル可能な100W多ポートACアダプタ」として、重量・大きさ対仕様が高レベルでバランスしたモデル。
もちろん同シリーズの他機種と比べると、ポートの多さもあってか大柄に見えてしまいますが、多くのライバル製品を上回るであろう実用度の高さは、さすがのアンカー製最新モデルといったところでしょう。
100W級多ポートアダプタの新しい標準ともなりそうなだけでなく、アンカー側にとっては、結果的にリコール騒動などで幻の機種となってしまった初代100Wモデル『PowerPort Atom PD 4』のリベンジを十二分に果たしてくれそうな一品と呼べそうです。
Source:アンカー・ジャパン 製品ページ