いよいよM2チップ搭載の新型MacBook Airの出荷が始まり、実力の程が分かるときがやって来ました。
同じくM2採用の13インチMacBook Proとほぼ同じベンチマーク結果らしきものは発売前から出回っていましたが、MacBook Airで注目すべきは「MBPとは違いファンレスである」点です。重い処理でプロセッサの温度が上がったときに、排熱が追いつかず低速化する(サーマルスロットリングが発生する)のではないかと危ぶまれていました。
実際の M2 MacBook Air の実力は、テクノエッジの発売前レビューでも明らかになったとおり。(Apple M2 MacBook Air レビュー。ファンレス設計の影響と限界を実機で探る(本田雅一)) 。一般的な作業ではほとんどスロットリングの影響がない一方、GPUを連続して使用する高負荷状況では影響があること、室温の影響を受けやすいことが分かりました。
一方、M1 MacBook Air との比較や、M2 MacBook Proで話題になったストレージ容量による速度差についても、様々な場所で検証結果が揃いつつあります。
まずテックメディアThe Vergeが公表したベンチマークでは、M2 AirはM1モデルを全てのテストで凌駕していたものの、特に違いは顕著とまではいえないとのこと。これは早い時期にGeekBench Browserでも報告されていたことで、想定の範囲内といえます。M2チップ自体が電力効率の向上や最大メモリ量・帯域幅の拡大、Neural Engineの高速化などといった更新点を備えつつ、CPUについてはM1比で最大約20%高速と発表されていました。
しかしM2 MacBook Proとの比較では、30分のCinebench 23マルチコアベンチマーク(主にCPUのレンダリング性能を検証)では顕著にM2 MacBook Airが遅いと指摘されています。
これら2つの違いは、M2 MacBook Proがチップ冷却に役立つ分厚いシャーシ(内部空間に余裕がある)やファンを備えていること。対してM2 Airはどちらもなく、M2チップにスロットリング(CPU温度が上がり過ぎたときクロック周波数などを下げる)をかけるしかありません。ファンレス設計は通常のワークロードには最適で静かなコンピュータを実現するものの、負荷が激しくなるとシステムの足かせになる、というわけです。
M2 AirとM2 MacBook Proのパフォーマンスの違いは、Adobe Premiere Pro でPugetBench テストを実行したり、Adobe Lightroom Classic で高解像度のRAW写真をたくさん編集して書き出そうとしたり、高負荷をかけるストレステストで顕著となっています。
またM2 Air(テスト機は上位モデルのGPU10コア)のグラフィック性能も、熱設計が足かせとなっているようです。『Shadow of the Tomb Raider』のベンチマークでもM1 Airを少し上回るものの、M2 MacBook Proには及ばず。アップル公称ではM2のGPU性能は35%パワフルになっているはずで、しかもM1のGPUコアは最大8つに過ぎません。
SSD容量と速度は要注意
ほか、M2 MacBook Airで懸念されていたのがベースモデル(256GB)のアクセス速度です。なぜなら、先日ベースモデルのM2 MacBook Pro(256GB)でも先代のM1モデルと比較して、SSDの書き込み速度が最大30%、読み込み速度が最大50%低いことが確認されていたためです。
原因はM1モデルでは128GBのNANDチップを2つ搭載していたのに対して、M2モデルでは256GBチップが1つしか使われていないから、と判明しています。つまり旧モデルは複数のSSDチップに並列にアクセスして高速化できていたが、新モデルではできないというわけです。
M2 MacBook Air でも、ストレージ256GBのベースモデルはシングルNANDチップ構成。M2 MacBook Pro同様に、512GB以上の上位モデルより転送速度が遅いことは確認されています。SSDの速度は仮想メモリのスワップにも影響を与えるため、特にRAMが8GB程度の少ないモデルであれば、特にストレージに高負荷をかける作業以外でも、全体のメモリ使用量が増えるほど影響が増すことになります。
総合すると、M2 MacBook Airはベースモデルでもほとんどの状況で前モデルよりも早く快適で、ハードウェア的にも多数のアップデートがあることは前提としつつ、日常業務だけでなく特に高負荷な作業を連続してさせる場合、CTOでRAMは16GB以上、SSDは512GB以上が推奨。高負荷時はノート用の冷却台などユーザー側で熱対策することも選択肢のひとつです。