Googleは開発中のARメガネを来月より公共の場を含む実世界環境でテストします。
今年の Google I/Oイベントで公開されたARメガネは、一般的なメガネに見えるサイズでありながらレンズ内ディスプレイやカメラを備え、リアルタイムの翻訳やナビゲーションなど、状況に応じた情報をユーザーの視界に重ねて表示できるデバイス。
従来はGoogleの施設内で試験を続けてきましたが、ARデバイスは現実の様々な状況に対応して機能する必要があること、たとえば混み合った交差点でのナビなどは人工的なテスト環境では限界があることから、来月より公共の場を含む米国の三か所で限定的な実地テストを実施します。
「パブリックテスト」といっても、テストする環境がパブリックなだけで、実際に試せるのはGoogle社員および一部の関係者のみ。誰でも参加できるいわゆるパブリックβテスト的なものではなく、「リミテッドパブリックテスト」と称しています。
限定されたテストなのに何故わざわざ公に予告しているかといえば、GoogleのARグラスはカメラやマイクを内蔵しており、部外者からのプライバシー上の懸念が予想されるため。
Googleはこの点について、テストが許されるのはデバイスの扱いだけでなくテストの方法やプライバシー、安全についてもトレーニングを受けた関係者のみであること、カメラは看板やメニューの翻訳といった環境認識に使われるものの写真撮影機能はないことなどを挙げ、慎重な姿勢を見せています。
Googleといえば2013年に、プリズム状のディスプレイが飛び出たメガネ Google Glass を鳴り物入りで発表しています。Google Glass には実世界を認識して拡張する意味でのAR要素は薄く、メッセージや通知など必要な情報を視界の隅に表示することで、スマートフォンを手に持って画面を覗き込む必要を減らし、目の前の現実の体験とユーザーを切り離すことなくデジタル情報を提示することに主眼を置いた製品でした。
Google Glassは主な用途にハンズフリーの写真・動画撮影やビデオ通話があったこと、加えてよく目立つカメラとディスプレイを備えていたことから、通常のスマートフォン以上にプライバシーリスクが高いのではないかとの批判も根強くありました。
Googleの新たなARメガネは買収した Northのディスプレイ技術により「普通のメガネ」に近くはなりましたが、カメラを使ったリアルタイム環境認識の技術が進歩したことで、ある意味で常に周囲の環境を「視ている」デバイスでもあります。Google Glassの二の舞いを避けるべく、かなり慎重に導入を進める姿勢のようです。
Building and testing helpful AR experiences
なお、今回のパブリックテストはGoogle関係者および「一部の信頼された」テスターのみが対象で、参加者の公募等はしていませんが、Googleはユーザーエクスペリエンス研究の一環として様々なテストへの参加者を常に募集してはいます。ウェブやアプリを含めた Google全体のユーザーエクスペリエンスが対象ですが、登録しておけばいずれ範囲が拡大したときに多少はテスターに近くなれるかもしれません。
Google User Experience Research - Discover How UX Research Works