将来の iPhoneは衛星通信に対応し、携帯キャリアの電波が届かない場所でも緊急通報できるようになるとの予測は、これまでも定期的に浮上していました。
9月8日にスペシャルイベントの開催を控えるなか、今度こそ「iPhone 14」シリーズにこの機能が搭載されると複数の情報源が予想しています。
そもそもの発端は、米通信大手T-MobileとSpaceXが共同で発表した「Coverage Above and Beyond」でした。ざっくり言えばSpace Xの衛星通信サービス「Starlink(スターリンク)」とT-Mobileのスマートフォンを直接繋げることで、圏外を解消しようとするものです。
この発表につき、衛星通信コンサルタントのTim Farrar氏が一連のツイートを投稿。そこで両社の計画がどれほど未完成かを指摘しつつ、「アップルが来週発表するGlobalstarとの独自の無料メッセージングサービス」の先手を打つ意図がある、と分析を述べたしだいです。日にちに少しズレがありますが、おそらく「来週」とは9月8日のイベントを指しているはず。
ここでいうGlobalstarとは、地球低軌道(LEO)衛星通信サービスプロバイダのこと。以前からアップルの提携候補として名前が挙がっており、たとえば有名アナリストMing-Chi Kuo氏も言及していたことがあります。
もう1つの情報源は、アップルの社内事情に詳しいBloombergのMark Gurman記者です。ニュースレター「Power On」最新号 にて、スペシャルイベント「Far Out」の招待状が宇宙空間をバックにしていることが、人工衛星を意味している可能性があると述べています。
ちょっと飛躍にも思えますが、「将来のiPhoneは衛星通信できる」予想は、1年以上前からGurman氏の持論でした。すなわち緊急メール機能や電波が届かない場所でも、ファーストレスポンダー(警察や救急隊など、最初に事故に対応する職種)に通報できるしくみ。
当時はiPhone 13シリーズで実現するとの予想でしたが、そちらは外れる結果となりました。それから1年が経ち、iPhone 14世代でまたも可能性が浮上した格好です。
また上記のGlobalstarにも言及があり、「今年の大半を費やして、大きな新しい構想のための土台を築いてきた」とのこと。これは今年2月、同社が新たに17基の衛星を調達し、「潜在的顧客(アップル?)」に「継続的な衛星サービス」を提供すると発表したことを指していると思われます。
さらに衛星接続機能は、将来の「Apple Watch Pro」つまり大型かつ頑丈なモデルへの搭載も検討されているとのこと。Proモデルはエクストリームスポーツや過酷な環境で利用するユーザー向けと予想されていることから、まさに「山や海にいるとき、救助隊にSOSメッセージを送る」ために最適の機器となるはず。
この構想の行き着く先は、どこにいてもiPhoneで電話をかけられ、5Gネットワークと衛星サービスを組み合わせること。しかしその実現には、通信キャリアとの提携が大前提となります。
1年前、Gurman氏は読者から「iPhoneが携帯キャリアの電波が届かない、世界のどこでも通話できるようになる?」との質問に「今も、来年も、近い将来もそんなことは起こりません」と完全否定していました。
なぜかといえば、1つには(緊急テキストメッセージ機能に限定しなければ)準備のできていないハードウェアが必要となるため。もう1つは、アップルが依存している電話会社の反発を招くかもしれないから。iPhoneを販売してくれるキャリアとは持ちつ持たれつの関係にあり、縄張りを荒らすわけにはいかない、ということでしょう。
アップルは「Apple Watch Series 7の911(緊急通報)で助かった」動画を公開しており、実は人命救助機能に大きな商品価値を見いだしていると思われます。スペシャルイベントでは「宇宙空間から命綱が降りてくる」的に、衛星通信機能がデビューを飾るのかもしれません。