ユニークなIoT製品やゲンバ目線のVR機器で知られるシフトールが、自分の声を外部に漏らさないマスク型の防音マイク「mutalk」の予約販売を開始しました。
mutalkは口に当てて使うカップ状のBluetoothマイク。自分の声が外に漏れにくいため、近くに人がいる環境でも安心して通話や電話会議、音声入力ができます。
ストラップで口を塞がれたような外見は、拘束具か噛み癖矯正器具か竈門禰豆子かという端的にやべえ絵面ですが、固定せずに手持ちで使うこともできます。
開口部を上に向けて置けばミュート、持ち上げてミュート解除になるため、常に喋る必要がない会議などでは発言するときだけ手にとって使えば、PC等の側でミュート・ミュート解除ボタンを操作する必要もありません。
逆に固定して使えば両手が自由になるため、深夜につい興奮して近隣の通報を招きがちなゲーム中の音声チャットや、「これ基底現実側で聞かれてたら一発でエンドオブリアルライフだな」というメタバース内の会話をその場に留める目的にも役立ちます。
自分の声あるいは会話内容を外に漏らさないため、自分という騒音源にセルフ対策するための製品ですが、逆に外部の騒音や、ご飯よと呼びにくる家族等の声をマイクに拾わせない効果もあります。
微妙に長い不思議な形状は、ただ塞ぐだけでなく「ヘルムホルツ共鳴器」の原理を利用して消音効果を高めるため。この世の終わりのような轟音を立てていたダイソンの掃除機がいつの間にか(比較的)静かになっていたのと同じ仕組みです。
シフトールによれば、消音効果は通常でマイナス20デシベル、叫び声などの高音域ではマイナス30デシベル。「静かなカフェ程度の騒音環境で電話会議を行った場合、すぐ隣の席に座っていても、何を話しているのか聞き取れないレベルに減音される」と表現しています。
まあ内容は聞き取れないにしろ、カフェのとなりの客が猿轡をつけてモゴモゴ言っていたら気にはなると思いますが、携帯電話の普及で「一人で喋ってるやべえ人」が不可視化されたように、mutalk やプライバシーマイクのたぐいが普及すれば誰も気にしなくなるかもしれません。
(衛生用マスクと違い鼻までは覆わない形状のため、鼻に抜ける鼻濁音などの聞こえ方は通常のマイクや対面会話と異なる性質もあります)。
マスクでも気になる唾液の飛沫等への対策としては、口に触れる部分のマウスパッドと、飛沫を受ける吸湿クッションの両方を取り外して水洗い可能になっています。
マイクとしての仕様は、Bluetooth 5.1接続のHSP / HFPプロファイル対応。Bluetoothで音声出力と入力を分けられない環境でも使えるよう、3.5mmミニジャックのアナログ音声出力にも対応します。バッテリー駆動時間は連続で8時間程度。充電はUSB-C端子。重量は183g(ヘッドバンド含まず)。
本日より予約販売を開始し、2022年11月から12月頃に発送開始の予定です。
なお声を外に漏らさないマイクという発想自体は目新しいものではなく、ペスト医師のような尖った形状がいかす Stenomask や、衛生マスクとしてのフィルタや換気対策も備えた HushMe Air 、主にゲーム向けにヘッドセットのマイクを差し込む PHASMAなど様々な製品があります。
もっともシンプルな例では、防音設備のない部屋でカラオケを練習するためのマイクカバーも同じジャンル。
また逆にマスクで声が聞こえにくい問題のため同じような解法に至った例では、Bluetoothヘッドセットを一体化したスマートマスク Xubermask や、「ゲーミングマスク」として話題になった Razer Zephyr のマイク内蔵版 Zephyr Proなど、同時多発的に開発されています。
番外:マイクロソフト応用科学グループのプリンシパルリサーチャー福本雅朗先生が考案した SilentVoice は、声を周囲に漏らさないため、機械ではなく人間のほうが特殊な吸気発声技法を習得することにより音が響かない無声発話をし、口元のマイクで拾うという驚愕の発想。
実際に練習したところ、コツを掴めばすぐに喋れるようになったものの、「息を吸いながら口先だけで無声発音する」のは人類にはいくらなんでも早すぎる発想ではないかとの印象でした。しかしコロナ禍で誰もがマスクを付けるようになり、スマートマスクと称する電子部品搭載のフェイスマウントデバイスが続々と増えているいま、マスク内に装着したマイクとSilentVoiceで Siri と会話したり音声入力するのは現実的なソリューションかもしれません。
¥5,880
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)