キヤノンMJが、声を周囲に聞き取りにくくするマスク型「減音」Bluetoothマイク Privacy Talk (プライバシートーク)を4月下旬に正式発売します。
プライバシートークは大きめのマスク型カバーの中にマイクと換気ファン、Bluetooth接続機能を備え、イヤホンを直付けした製品。
物理的に口を覆うこと、通気口には特定周波数の音を減じる「音響メタマテリアル」素材を用いることで、話しても声が漏れにくい、周囲からは喋っているかどうか分かりづらい、静かな環境でも話の内容までは分からない効果があります。
用途は主にオンライン会議など。テレワーク・リモートワークやオンライン会議が広まり、出先や周囲に人がいるコワーキングスペース等で仕事をすることも増えましたが、会議の前には周囲に内容が漏れないよう出先で個室の確保に苦労したり、自宅で家族の耳が気になることもあります。
プライバシートークはこうした環境で、漏れる声を減らしつつ喋れる製品です。
仕様としてはBluetoothでスマートフォンやPC等と接続できるほか、USBオーディオデバイスとして有線でも利用可能。
内蔵のバッテリーで駆動し、Bluetooth接続時・換気ファン有効で約3時間利用できます。充電には約1.5時間。
しばらく前から実際に使っていますが、使用感をざっくり並べれば
おおむね額面どおり機能する。カフェ程度の騒がしさなら話しているかも分からず、静かな部屋でも「なにかモゴモゴ喋っていることは分かる、内容は分からない」状態。電車で移動中でも周囲に迷惑をかけず通話できる。
これまではノートPCひとつあれば出先で仕事できるといっても、会議には慌てて個室を探して移動していたのが、プライバシートークがあるだけで無駄な移動時間なく落ち着いて参加できるようになった。
会議以外にも、環境を問わずどこでも音声入力ができて便利。近年はスマホもPCも音声入力が大幅に進歩していること、誤認識を含む下書きをAIでリライト等もできるため、書き言葉を話すことに慣れれば生産性が上がる。単にメッセージに返信等でも便利。
と、謳い文句どおりに使えて便利な製品ですが、使っていると出てくる改善希望点がないわけではありません。というより山積です。
口と鼻を覆うマスク状の部分は「カバー」。マイクにあたる部分は口だけを覆う構造で、かなり小さく口を開けづらい、喋りづらい。
鼻を覆わない構造のため、原理的に鼻声になる。慣れるまで普通にも喋りづらい。大きく口を開けるとマウスピースがずれて声も漏れる。
鼻声になるほか、特定の音は通りづらい・喋りづらい等があり、慣れても相手に届く声は明朗とは言い難い。相手先に明確に声を伝える必要がある会議では使いづらい(そもそも大型マスクなので表情も伝わらず、コミュニケーションの帯域は下がる)。社内等が相手の場合に次善策として使うべきデバイス。
バッテリー駆動時間は公称3時間。ながら、急速充電ができず約1.5時間もかかるため、こまめに気にして満充電をキープしないと、いざというときにつながらず詰むことがある。USB有線接続はできる。
イヤホンはあまり遮音性が高くなく、不安な細いケーブル直付けで付け替えもできず、カバーに固定することもできずプラプラしている。
似たようなアイテムとしては、深夜にゲームの音声チャットで使うゲーマー向け製品、VRChatなどで人に聞かれたら社会的に死ぬ会話をするための製品等がすでにありますが、プライバシートークは外見が大きめのマスクにしか見えないことが大きなアドバンテージ。
また、こちらはそもそも製品コンセプトとは外れるため単なる注意点ですが、上記の構造から鼻は覆っておらず、カバーはふんわり隠しているだけなので、感染防止等のマスクとしての機能はなく、花粉症対策等にもなりません。
換気ファン内蔵で蒸れないものの、マウスピースは口の周りを物理的に押し付けるかたちで接触しているため、マスクとして長時間の装着にも向きません。
外見を気にしなければ、また鼻声問題を気にするならばシフトールの mutalk 2 もあります。
mutalk 2はカバーを2種類用意することで、鼻声を気にするか、声援など大きな声が出せることを重視するかを選べる点が有利。
プライバシートークは課題もありつつ、どこでも使いやすい外見、減音性能、接続性や換気ファンの快適さなど、総合的には現状で無二の選択肢です。
余談。左はPrivacy Talk 、右はゲーミングデバイスのRazer がコロナ下で出していたウェアラブル空気清浄機 Zephyr。
見た目云々と言っておいてなんですが、Razerが予告したまま出していないZephyr のBluetoothマイク版もお待ちしています。