(製品名) MA-M128(日立マクセル)
[種類] 光磁気ディスク
[記録方法] 光変調方式、マークポジション、CAV
[メディアサイズ] 90×94×6mm
[記録部サイズ] 直径約86mm
[容量] 128MB
[登場年] 1991年頃~
ひとつ、またひとつと消えていき、記憶からも薄れつつあるリムーバブルメディア。この連載では、ゆるっと集めているメディアやドライブをふわっと紹介します。
ロストメモリーズの記事一覧「3.5インチMOディスク」(第1世代)は、光と磁気を使って読み書きを行う光磁気ディスクのひとつ。容量は128MB。JIS規格(JIS X 6272)では「90mm書換形及び再生専用形光ディスクカートリッジ」となっていますが、一般的には「3.5インチMO」、もしくは単純に「MO」と呼ばれます。
3.5インチMOは、先に登場していた5.25インチMO(130mm光ディスク)の技術を利用し、小型化したもの。そのためこの第1世代では、使用するレーザーの波長が825nm、ディスク制御が角速度一定のCAV、トラックピッチが1.6μm、記録方式がマークポジションとなっているなど、その特徴が色濃く引き継がれています。
5.25インチMOが企業や官公庁といったビジネス向けとなっていたのに対し、この3.5インチMOは、一般でも広く使われたというのが大きく違うところでしょう。
第1世代の容量は128MBとそこまで大きくはなかったのですが、世代を重ねるごとに増加。少しずつ改良が加えられ、230MB、540/640MB、1.3GB、2.3GBと増えていきました。
今回は、この最初に登場した128MBの3.5インチMOを紹介します。
フロッピーディスクとは比較にならないほど頑丈
まず気づくのが、物理的にかなり堅牢な作りになっていること。フロッピーディスクは3.5インチでかなり丈夫になりましたが、それでも力を込めれば容易に曲がりますし、中のディスクがダメージを受けてしまうこともあります。これに対して3.5インチMOは厚みが6mmもあり、曲げようとしてもびくともしないほど頑丈。多少手荒に扱っても、中のディスクに影響はありません。
また、アクセスウィンドウ部は大きなシャッターで覆われており、ホコリやゴミの侵入が最小限に抑えられるようになっているのも特徴です。
ちなみにこのシャッター、表と裏で覆う範囲が違います。表は記録部周辺のみですが、裏はディスクの中央部分、モーターと接続するハブの部分まで開きます。
なお、わかりやすいよう「表」と「裏」という表現を用いましたが、規格上はこの「表」がB面、「裏」がA面となります。これはA/B裏返して両面記録が可能だった5.25インチMOの名残っぽいですね。
ディスク面に注目してみましょう。光をうまくあてると、円周方向に25分割されたセクタを目視で確認できます。これはディスクの角速度が一定となるCAV(Constant Angular Velocity)という制御方法を採用しているため。外周に行くほど記録密度が低くなるものの、制御が比較的シンプルだというメリットがあります。
記録方式は、マークポジションを採用。これは記録したマークの中心で、0か1かを判断する方式です。素直な記録方式ではあるものの、レーザー光のスポットサイズよりも記録密度を高められないため、効率の悪いものでした。
より記録密度を高められるマークエッジ記録方式の採用は、第3世代MOからとなります。これは記録したマークの端で0か1かを判断する方式ですが、この解説はまた後日、第3世代MOなどを紹介するときにでも。
ちなみにトラックは1周ごとに区切られているのではなく、らせん状に連続しています。また、トラックピッチは1.6μmなので、CD-ROMに結構近いですね。当然ですが、目視で確認することはできません。
裏から見て右下にあるスライドスイッチは、機能領域と呼ばれるもの。穴を遮るようにスライドすると書き込み可能、貫通するようスライドすると書き込み禁止にできます。
なお、3.5インチMOは再生専用、つまりROMメディアも想定されていて、とくに反射率が高いディスクを使用する場合は、この機能領域が塞がれていたようです。残念ながら実物を見たことはないのですが……。
メディアの信頼性は50年以上と長く、保存用に選ばれることも
MOが優れていたのは、メディアの信頼性です。
磁気ディスクとなるフロッピーディスクは、ヘッドがディスクの表面に接触していたため、長時間利用によるディスク面の摩耗、ホコリやゴミを引きずることによる傷などが問題になることがありました。これに対しMOは、磁界とレーザー光で読み書きするため、ヘッドとディスク面は非接触。そのため、摩耗や傷を心配することなく利用できます。
さらに、書き換えるには磁界をかけながらレーザー光で加熱しなくてはならないため、フロッピーディスクと違って、強力な磁石を近づけてもデータは消えません。また、ディスク面を長時間光にさらしたとしても書き換わることがないので、外的要因によるデータ消失の危険が少ないという点でも優れていました。
公称値となりますが、メディアの推定記録/再生期間は50年以上、書き換え回数は1000万回以上となっていましたから、記録メディアとしての信頼性はかなり高いと言えるでしょう。
ただし、記録には消去、磁化(書き込み)、ベリファイと3回の手順が必要で、速度は遅め。また、磁界とレーザー光を組み合わせて利用するという複雑な方式のため、ドライブが高価になりがちでした。当然ながら、メディアほどドライブは長持ちせず壊れてしまいます。まだ3.5インチMOにデータが残っているというのであれば、動作する中古ドライブが手に入るうちに吸い出しておくことをお勧めしておきます。
なお、ドライブとメディアの製造メーカーが多数あった日本では人気の高かった3.5インチMOですが、海外では微妙。SyQuest社のリムーバブルHDD、後に登場したIomega社のZIPと比べ、マイナーな存在でした。
参考文献:
「90mm書換形及び再生専用形光ディスクカートリッジ」, JIS X 6272, 日本産業標準調査会
「3.5型MO仕様一覧表」, 三菱化学メディア, Wayback Machine
「FAQ」, MOフォーラムJAPAN, Wayback Machine