『どこいつ』人気で売れた初代PSメモリーカード型PDA「PocketStation」(ポケステ)(128KB、1999年頃~):ロストメモリーズ File040

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宮里圭介

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需要のわからない記事を作る自由物書き。分解とかアホな工作とかもやるよー。USBを「ゆしば」と呼ぼう協会実質代表。

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[名称] PocketStation、ポケットステーション、ポケステ
(参考製品名 「SCPH-4000」)
[種類] フラッシュメモリー
[記録方法] 独自インターフェース(8pin)
[メディアサイズ] 42×65×14.8mm
[記録部サイズ] ----
[容量] 128KB(15ブロック)
[登場年] 1999年頃~

ひとつ、またひとつと消えていき、記憶からも薄れつつあるリムーバブルメディア。この連載では、ゆるっと集めているメディアやドライブをふわっと紹介します。

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「PocketStation」は、ソニー・コンピュータエンタテインメントが開発、販売したPDA。通称「ポケステ」。初代プレイステーション(以下、PS)用のメモリーカード機能を備え、通常のメモリーカードと同容量となる128KB(15ブロック)のデータが保存できました。

メモリーカードとの違いは、PDAと名乗っているだけあって、ちゃんとCPUやメモリーを搭載したコンピューターとなっていること。具体的には、CPUがARM7T(32bit RISC)、2KBのSRAM、32×32ドット液晶、小型スピーカー、IrDA規格の赤外線通信機能などを装備し、ボタン電池1つ(CR2032)で動作しました。

日付・時計機能が標準で使えるほか、対応するPSのゲームからミニゲームを転送することで、PocketStation単体でゲームが楽しめたのが特徴です。

▲対応ゲームから転送することで、ミニゲームを起動できました

手のひらサイズでミニゲームが楽しめるというと、「たまごっち」(1996年11月23日)を連想する人も少なくないかと思います。ただし、こちらはあくまで単一のゲーム専用機で、後から別のゲームを転送することはできません。どちらかといえば、ゲーム&ウオッチの方が近いでしょう。歩数計にゲーム要素を加えた、「ポケットピカチュウ」(1998年3月27日発売)も同じですね。

最も近いのは、セガの「ビジュアルメモリ」(1998年7月30日発売)。ドリームキャスト用のメモリーカードで、画面とボタンを装備し、単体での動作も可能です。転送したミニゲームがプレーできる、といった点でも似ています。


ただし、ドリームキャストの発表は1998年5月21日。PocketStationの発表は1998年2月19日ですから、単純に真似をしたわけではなさそうです。たまごっちやポケットピカチュウはもちろん、様々なポケット型・キーホルダー型ゲーム機がこの時代発売されていましたから、たまたま似たものができた……というだけでしょう。もちろん、“ウワサ”は発表前から聞こえていたとは思いますが。

PocketStationのボディカラーは、基本的にホワイトとクリスタルの2色。このほか、限定色として、ゲームソフトに同梱されたブラック(遊戯王 真デュエルモンスターズ 封印されし記憶)と、クリアピンク(ときめきメモリアル2)がありました。

▲基本はホワイトとクリスタルの2色

なお、画像検索するとクリアブルーやクリアイエローなどが極少数出てくるのですが、これらの詳細は不明。英語のWikipediaではカラバリとして挙げられているものの、あまりに数が少なく、どうも市販品ではなさそうです。詳しい人がいたら、こっそり教えてください。

そんなPocketStationについて、詳しく見ていきましょう。

カバーを開けてPSのメモリーカード差込口へ

PocketStationで特徴的なのが、中央上の液晶画面と、5つの操作ボタン。ボタンは左に並ぶ4つが上下左右、右の1つが決定ボタンとなっています。

▲PDAというだけあり、画面と操作ボタンを装備

液晶画面の背景に、薄く「PS」のマークがあるのが見えるでしょうか。表示に影響ないですが、こういった細かいこだわりが結構あります。

液晶画面の上、透明な窓の中にあるのは、IrDA規格の赤外線通信ポート。ここには赤色LEDも装備されており、PSからのアクセスや、データ送信といったステータス表示に利用されます。

▲奥の黒いパーツが赤外線通信用。手前が赤色LED

このセンサーの用途はちょっと面白くて、PocketStation同士の通信で使われるほか、他のリモコンの赤外線データを読むことも可能でした。

この機能を使っていたのが、「遊戯王 真デュエルモンスターズ 封印されし記憶」。リモコンから送られた赤外線データによって、ゲーム内で使えるカードがもらえるというものです。いいカードが手に入るまで、家中のリモコンをかき集めて何度も試した……と懐かしく思い出す人も多いのではないでしょうか。

本体背面は、上部にスピーカー、中央やや下に電池のカバーがあります。

▲背面には操作ボタンなどはありません

左側にある文字は、型番となるSCPH-4000や、SCEの社名、製造国など。電池がCR2032だということも、ここに書かれています。

電池カバーはネジ止めですが、普通のプラスなので、精密ドライバーなどで簡単に開けられます。

▲CR2032の文字と向きが書かれていました

PocketStationをメモリーカードとして使う、もしくは、ミニゲームを転送する場合は、PSとの接続が必要です。一見すると、どうやって接続するのかわかりませんが、実は、ボタンのある操作パネルがカバーとなっており、跳ね上げることで、メモリーカード差込口に差し込めるようになります。

▲操作パネルを開くとメモリーカードの端子が出現

興味深いのは、操作パネルを開いた下にもボタンがあること。というか、むしろこちらのボタンが本体で、表のボタンはこのボタンを押すための延長となっています。

リセットボタンは操作パネルで隠されていて、開かないと見えない仕様。これは、不用意に押されてしまわないようにでしょう。

ちなみに、この操作パネルは取り外せます。ボタンは本体側にあるので操作に困りませんし、PSのメモリーカードとして使う場合は結構ジャマになりますから、あえて外して使うという選択もアリでしょう。

ただし、取り扱い説明書には取り付け方しか書かれておらず、しかも「誤ってカバー(操作パネル)をはずしたときは」となっています。つまり、取り外して使うのは、想定されていない使い方ですけどね。

▲操作パネルは、開いた状態で手前に引くと外れます

この操作パネルの固定は金属バネで行われており、開いた操作パネルが勝手に閉まらないよう支えてくれていました。「機能的には必要ないけど、あった方が気分がいいよね」という部分をしっかり作っているあたりも、こだわりですね。

せっかくなので、中の基板もチェックしてみましょう。

分解は、背面に見えている4本のネジを外すだけとシンプル。これもプラスネジなので、普通の精密ドライバーで外せます。

基板の表面は、ボタンのカバーシールと液晶画面くらいしか見えません。液晶は、導電性と絶縁性のゴムが交互に細かく配置されたコネクターで接続されています。長年の圧迫でくっついていますが、接着されているわけではないので、軽く引けば簡単に剥がれます。

▲外装を外しただけでは液晶もくっついていました
▲液晶とボタンのシールを剥がしたところ。MITSUMIの文字が見えます

CPUやメモリカード機能といった主要パーツはモールド材で覆われていて見えませんが、基板にはMITSUMIの文字が。どうやら、製造は精密部品や情報機器に強いミツミに委託していたようです。

基板の裏面は、一部が金属のフレームで覆われています。上部の小さく穴が開いている部分は、圧電ブザーが固定されていました。

これをずらして基板を確認してみましたが、電源周りや発振器などがあるくらいでした。ちなみに、下部にある端子はPSのメモリーカードスロットとの接続用です。

▲金属フレームによる補強が目を引きます
▲金属フレームをずらしてみたところ

瞬間的に大人気となるものの、2002年7月に製造終了へ

開発元がPocketStationのことをPDAといっているので、この記事でもPDAとして扱っています。確かに特徴を挙げていくと、「アプリの追加ができる」(ミニゲーム)、「通信機能を装備」(IrDA)、「液晶画面を搭載」(32×32ドット)、「入力にも対応」(5ボタン)などなど、PDAといってもいいような気がしてきます。

しかし、実際はカッコ内のように機能が制限されており、スケジュールや連絡先の管理もできません。これで、情報端末として利用するPDAと呼ぶのはさすがに厳しいでしょう。標準で使える機能も、年月日・曜日・時刻表示、アラーム、使用ブロック数表示、使用ブロックのゲームアイコン表示くらいしかなく、あまりにも低機能です。

標準価格(税別)が3000円と安価だったとはいえ、PDAとしての価値があるかといわれれば、正直ありません。また、メモリーカードとして使えるといっても、通常のメモリーカード(1998年の標準価格(税別)で1800円)と比べれば高価。さらに、ミニゲームを入れてしまえばそのぶん容量が減るため、メモリーカードとしての価値も低くなります。

なんとも微妙なハードとして終わるかと思いきや……最終出荷数は約490万台という大ヒット商品に。しかも、一時は品薄となり、入手困難という状況にもなりました。

この最大の理由は、「どこでもいっしょ」の存在です。1999年7月22日に発売されたこのゲームソフトは、ポケットピープル(ポケピ)に言葉を教えたり、会話したりと、コミュニケーションを楽しめました。

▲「どこでもいっしょ」と、追加ディスクの「こねこもいっしょ」

このゲームでは「お出かけ」としてPocketStationが利用でき、ポケピと会話、クイズ、しりとりなどが可能に。また、赤外線通信を使った名刺交換も可能で、PocketStationらしい遊び方ができるというのが特徴でした。

このゲームソフトの爆発的なヒットにより、PocketStationも大ヒットとなったわけです。

他にPocketStationをメインで活用するゲームとしては、自分でゲームを作成する「ポケットじまん」などがありましたが、多くはPS用ゲームのオマケ止まり。結局、どこでもいっしょ以上にPocketStationを活用したいと思うゲームソフトが登場せず、2002年7月に製造終了となりました。

そのまま系譜が途絶えたままだと思いきや、なんと、製造終了から11年後となる2013年12月に、PlayStation Vita上で動く「PocketStation for PlayStation Vita」として復活。同時に「どこでもいっしょ」「こねこもいっしょ」もPlayStation Storeから配信され、Vita上で遊べるようになったことには驚きました。

参考:

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《宮里圭介》

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