(参考製品名 「MSA-16A」)
[種類] フラッシュメモリー
[記録方法] 専用端子(10ピン)
[メディアサイズ] 21.5×50×2.8mm(標準)、20×31×1.6mm(Duo)
[記録部サイズ] ----
[容量] 4~256MB(128MB×2)
[登場年] 1998年頃~
ひとつ、またひとつと消えていき、記憶からも薄れつつあるリムーバブルメディア。この連載では、ゆるっと集めているメディアやドライブをふわっと紹介します。
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「メモリースティック」は、ソニーが開発したフラッシュメモリーメディア。わずか10ピンというコネクターを採用したシリアルインターフェースのメディアで、1998年9月に最初の製品として、4MBと8MBの2種類が発売されました。
メモリースティックは、著作権保護技術となる「MagicGate」の搭載や速度の違い、小型のデュオ(Duo)、さらに小さなマイクロ(M2)といったように、機能や性能、容量、サイズなど様々なバリエーションがあります。ざっくり分類すると5つくらいに分けられますので、今回はその中でも初期のシリーズについて紹介します。
初期メモリースティックの特徴は、シンプルな「メモリースティック」と、著作権保護技術に対応する「マジックゲートメモリースティック」の大きく2つの種類があること。型番を見ると、前者は「MSA」で始まり、後者は「MSG」で始まるという明確な違いがあります。
また、それぞれ細長いスティック型となる21.5×50×2.8mmの標準と、半分ほどに小さくした20×31×1.6mmのDuoがあり、このサイズ違いを含めると、4つの種類があることになります。
ここではすべて初期型としてまとめてますが、登場時期は結構違います。
最初に登場したのは標準サイズの「メモリースティック」で、先に述べた通り、これが1998年9月の発売。これに続くのは、1999年12月発売の「マジックゲートメモリースティック」で、こちらも標準サイズです。
Duoの登場は結構遅く、2002年の7月から。メモリースティックはコンパクトフラッシュ(CF)やスマートメディア(SM)と比べれば小さいですが、競合のSDカードと比べると大きく、小型の機器で採用しにくいというデメリットがありました。しかし、このDuoの登場により、サイズ面での見劣りがなくなりました。
最後に登場したのは、2003年2月発売の「マジックゲートメモリースティックDuo」。著作権保護技術に対応した小型モデルということで、これでようやく、小さなオーディオプレーヤーで採用できるようになりました。
ということで、これら初期のメモリースティックたちを見ていきましょう。
著作権保護技術への対応は色で区別可能
標準サイズは長辺が短辺の2倍以上あるため、結構細長。その形状から、ガム型電池を連想する人もいたのではないでしょうか。
著作権保護技術に対応していないメモリースティックはソニーらしい濃い目の藤色、対応しているマジックゲートメモリースティックは白と、明確に色が違います。また、「MG」のマークや「MAGICGATE」の文字がしっかりと印刷されているので一目瞭然です。
紛らわしいのは、機器によって著作権保護技術が不要なもの、必要なものがあったこと。とくにオーディオプレーヤーは不正コピー防止のために著作権保護技術が必須とされ、しかも専用ソフトを使わなければ音楽ファイルを転送できないという制限がありました。
知ってる人なら迷わずマジックゲートメモリースティックを選びますが、詳しくない人だと、同じメモリースティックだし色が違うくらいだろう、と考える人もいます。そのため、パッケージに「マジックゲート機能が入っておりません」などと注意書きが入るようになりました。
本体表面の凹みは、ラベルシールの貼り付け位置。この凹みは右側面や裏面までぐるっと続いており、裏表どちらからでもラベルが見られるようになっています。
端子は10ピンで、やや端に寄った並び。端子横のスペースには凹凸があり、裏表を間違えたままスロットに挿入できないようになっています。また、この角は丸みを帯びているので、指で触れて挿入方向がわかる点でも便利です。
端子の近くにあるスライドスイッチは、誤消去防止用。「LOCK⇒」という文字がある通り、矢印方向に動かすと消去や書き込みが禁止となります。
Duoサイズは、縦横だけでなく厚みまで薄くなっているのが特徴。機能や性能的には標準サイズと変わりません。こちらもメモリースティックDuoが濃い目の藤色、マジックゲートメモリースティックDuoが白。「MAGICGATE」の文字も確認できます。
形がそっくりな2つですが、挿入方向の逆端に注目すると、マジックゲートメモリースティックDuoだけ小さな凹みがあることがわかるでしょうか。この凹みで、著作権保護技術への対応が区別できるようになっています。ちなみにこの凹み、後のシリーズで少しずつ変化しますので、なんとなく覚えておいてください。
厚みが薄くなっているためか、ラベルシールの貼り付け位置となる凹みはナシ。ラベルシールがないと少々不便ですが、その代わり、直接書き込めるスペースが用意されました。
裏面を見て気づいた人もいるかと思いますが、誤消去防止スイッチがメモリースティックDuoにはありません。というか、その後のシリーズでもDuoでは誤消去防止スイッチは搭載されておらず、むしろ、搭載しているマジックゲートメモリースティックDuoが例外です。
ちなみに例外がもうひとつあり、それが、三菱電機のiモード端末に付属していた8MBのメモリースティックDuo。ただしこちらは非売品なので、特殊な仕様であってもおかしくはないですが。
Duoの端子は10ピンで、標準と同じ。信号的にも完全に一致しており、形状変換アダプターを使えば標準と同じように利用することができました。
縦も横も厚みもすべて小さいDuoだからできる、シンプルな変換です。
なお、メモリースティックDuoを見るとPSPを思い出す、という人もいるかと思いますが、PSPの発売は2004年12月。PSP用として発売されたのは初期のメモリースティックDuoではなく、シリーズの異なる後継モデルです。
初期のメモリースティックの中で特殊なものといえば、2003年3月に発売された128MB×2という不思議な容量を持つ「メモリースティック(メモリーセレクト機能付き)」でしょう。
裏面のスイッチをA⇔B切り替えることで、128MBのメモリースティック2本ぶん、合計256MB使えるという製品です。128MBが上限のメモリースティックでも大容量化に追従したい、という気持ちの表れなのでしょうか。
しかし、スイッチを切り替えるには、メモリースティックを機器から取り出さなくてはなりません。それなら、素直にもう1本持って交換するほうが早いし簡単です。
こういった微妙な製品を実際に作ってしまうところに、ソニーらしさを感じてしまいます。(個人の感想です)
他社からもメモリースティック採用製品が登場
ソニーの強いところは、新しいメディアを利用する製品も投入できること。PC、ケータイ、PDA、デジカメ、オーディオプレーヤー、カーナビなど、数多くの対応製品が登場しています。
もちろん、メモリースティックは汎用のメモリーカードですから、ソニーの独占というわけではありません。そのため、他社からも(少ないながら)対応製品が登場しています。
三菱電機からはメモリースティックDuo対応のiモード端末「D251i」、何かと付き合いのいいシャープからはヘッドホン型のオーディオプレーヤー「WA-HP1」、タカラのチョロQをモチーフとしたオーディオプレーヤー「M(ミュージック)チョロQ」などがその例です。
また、メモリースティックの製造もソニーだけでなく、サンディスクやレキサーが参入していました。OEMだと思われますが、ハギワラシスコムやアイ・オー・データ機器からも発売されています。
しかし、多数のメーカーが参加しているSDカードの方が、圧倒的に対応機器数が上。デジカメでは2002年にxDピクチャーカードというライバルが出現し、SDカードを選ばないにしても、メモリースティックを積極的に選ぶ理由がなくなりました。
結局、メモリースティックを採用する他社製品は初期に少し見られた程度で、わりとスグにソニー製品ばかりになってしまいました。
初期型のメモリースティックは2003年くらいまで現役でしたが、さすがに登場から5年も経つと、最大転送速度が20Mbpsと遅い、最大容量が128MBと少ないといった欠点が目立ちます。また、著作権保護技術の有無で製品が違うため混乱しやすい、という問題もありました。そのため、「メモリースティック(マジックゲート/高速データ転送対応)」や「メモリースティックPRO」が登場することになります。
これら後継品については、また別の機会で。
参考:
「メモリースティック」, SONY
「内蔵メモリーに音楽CD約11枚分*の長時間記録が可能、小型でさらに携帯性が向上した新スタイル“ネットワークウォークマン”発売」, SONY
「128MBメモリーを2枚搭載し、メモリーを切り替えて使用できる「メモリースティック(メモリーセレクト機能付き)」発売」, SONY
「ポータブルメモリープレーヤー WA-HP1」, シャープ
「M(ミュージック)チョロQ」, タカラ
¥780
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)