アップルとサムスンは、iPhoneとGalaxyシリーズのスマートフォンのみならず、Apple WatchとGalaxy Watchといったスマートウォッチ分野でも競合する関係です。
そんななか、両社とも2024年には先進のディスプレイ技術「マイクロLED」をスマートウォッチに導入するとの予測があります。
この話題に火を点けたのは、香港の投資会社Haitong Intl Tech Researchに属するアナリストJeff Pu氏の投資家向けメモでした。まずPu氏は2023年内はApple Watchに「大幅なスペックアップが欠けている」ために売上が落ちると予想。
そう前置きした上で、2024年のApple Watch Ultraには有機ELの代わりにマイクロLEDが採用される可能性が高いと主張しています。さらに関係筋によると、Ultra2024年モデルの画面サイズは現行の1.93インチから2.1インチへと広くなるとのこと。。
ここでいうマイクロLEDとは、微細なLEDを画面に敷き詰めて映像を表示する技術のことです。これまでの液晶はLEDをバックライトとして使ってきましたが、新方式では各色のLEDがピクセルを構成します。
要は有機ELの素子を超小さいLEDに置き換えるわけですが、「真の黒」を実現しつつ(発光をオフにすればいい)有機物質を含まないために焼き付きや劣化も防ぎやすく、しかも電力効率もいい。つまり、液晶と有機ELディスプレイのいいところ取りをする仕組みとして注目を集めています。
この予想は、「アップル未発表製品の最有力リーカー」との呼び声もあるBloombergのMark Gurman記者もおおむね同意。2024年末までに「最高級のApple Watch」のディスプレイを置き換え、情報筋の話として「より良い視野角でコンテンツを視聴できる」「ガラスの上に描かれている」ように見えるとの証言を伝えています。
かたや韓国の電子業界情報誌ET Newsは、サムスンディスプレイがスマートウォッチ用のマイクロLEDディスプレイの製品化に取り組んでいると報道。2023年内に開発完了することを目指し、Apple WatchとGalaxy Watchに搭載する予定だと述べられています。
すでにサムスンは超高額な大型マイクロLEDテレビを商品化するなど、MicroLEDを自社の先進技術としてプッシュしており、はるかに小さなスマートウォッチ向けディスプレイを投入しても不思議ではありません。ET Newsでは、これまでApple Watch向けに供給していた有機ELがマイクロLEDに移行するにすぎず、引き続きサムスンがディスプレイの主導権を握るとの観測を伝えています。
が、上記のGurman氏は「アップルは早ければ2024年にも、モバイル製品に自社製カスタムディスプレイの採用を計画している」と主張。その狙いは、アップルがサムスンやLGディスプレイなどパートナー企業(画面パネル製造業)への依存を減らし、より多くの部品を内製化するためとのことで、ET News報道とは真逆と言えます。
アップルが自社製品の主要パーツを内製化する流れは確かにあり、すでにiPhone向けAシリーズチップやMac/iPad向けMシリーズチップも投入済みです(正確には自社開発、パートナー企業により委託製造)。
5Gモデムチップ(ベースバンド)についても、Qualcomm依存を解消すべく独自開発に取り組んできたことは、数年越しに何度も報道された公然の秘密となっています。
しかし、そのモデムチップ開発も苦戦が伝えられており、テストベッド機になるはずの「iPhone SE4」が2024年内の発売をキャンセルしたことで、主力機「iPhone 16」への搭載も先送りになったとの説もあります。
ほかWi-FiやBluetoothのチップも自前で開発してBroadcom製コンポーネントの使用も止めるとの観測もありますが、そちらも予定通りに事が運ぶとは限りません。
このように、アップルが自社開発を試みていることは事実でも、すぐに採用に結びつくとは限らないことを考えると、「近い将来にApple Watch Ultra後継機ではマイクロLED採用、しかし当初はサムスン製パネル」として、開発の進捗によっては数年後に自社開発パネルに置き換え……といったところかもしれません。
ともあれ、あと1~2年待てば、スマートウォッチの画面が日中でも劇的に見やすくなり、バッテリー駆動時間も維持または改善できる可能性が高まったとは言えそうです。
iPhone 2023特集