米カーネギーメロン大学の研究者、Wi-Fiルーターで室内にいる人たちを外から「観る」技術を開発

テクノロジー Science
Kiyoshi Tane

Kiyoshi Tane

フリーライター

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著書に『宇宙世紀の政治経済学』(宝島社)、『ガンダムと日本人』(文春新書)、『教養としてのゲーム史』(ちくま新書)、『PS3はなぜ失敗したのか』(晋遊舎)、共著に『超クソゲー2』『超アーケード』『超ファミコン』『PCエンジン大全』(以上、太田出版)、『ゲーム制作 現場の新戦略 企画と運営のノウハウ』(MdN)など。

特集

カメラや高価なLiDAR製品(レーザー光を使い、対象物までの距離や位置、形状を正確に把握できる装置)を使わずに人体を「観る」ことは、長年にわたり研究者らが取り組んできたテーマです。

その最新版として、米カーネギーメロン大学の研究チームが、Wi-Fiルーターだけで室内にいる人体の3D的な形状や動きを検出する技術を開発したと発表しました。

こうした研究は、まず2013年にMITの研究チームが携帯電話の電波を使い、X線のように壁越しで人の動きをリアルタイムに追跡できる装置を発表。さらに2018年には別のMITチームが、Wi-Fi信号を利用して別の部屋にいる人の動きを検知し、AIにより棒人間に変換する技術をお披露目していました。

さてカーネギーメロン大学の研究は、プレプリント(学術雑誌に掲載されることを前提とした原稿の完成版を査読の前にネット上で公開したもの)を含む様々な論文を扱うarXivにて掲載されたもの。この論文は年末に公開されましたが、それを米MOTHERBOARDがクローズアップしている次第です。

それによれば、研究チームはWi-Fiルーターが送受信する信号の位相と振幅を人体の座標にマッピングするディープニューラルネットワーク(DNN)を開発。そのベース技術として、人間の姿勢を2D画像から推定して人体表面にテクスチャをマッピングできるシステム「DensePose」 利用。この技術はFacebook AI ResearchとINRIA(フランス国立情報学自動制御研究所)が共同開発したもので、オープンソースとして公開されています。

同研究者らは、通常のRGBカメラの代わりにWi-Fi信号が「ユビキタスな代用品」つまり汎用性がありコストもかからないと捉えているもようです。この方法であれば、通常のカメラに付きまとう照明の問題や閉塞感などを克服できるとメリットが強調されています。

今や世界のどこにでもあるWi-Fiルーター、しかもカメラのようにレンズがないために、当然のようにプライバシー問題が懸念されるところです。が、研究チームは逆にこれこそ「個人のプライバシーを保護し、必要な機器はリーズナブルな価格で購入できる」と主張。この技術は高齢者の健康状態を監視したり、家庭での不審な行動を特定することに使えるかもしれないと構想を膨らませています。


その「不審な行動」とは具体的になんなのか、見守りが必要な家族のケアを分厚くすることか、あるいは外部から侵入した不審者を検知することか、具体的な説明はありません。

しかし、アマゾンが家庭用のカメラ付きドローン「Ring Always Home Cam」を販売している(日本未発売)状況を考えると、固定カメラもドローンもなしに、手軽にWi-Fiで室内を監視できるサービスの需要は確かにありそうです。

とはいえ、それは「家の住人が知らないまま監視される」ことにも繋がりうるため、商業化への倫理的なハードルは高いかもしれません。

《Kiyoshi Tane》

Kiyoshi Tane

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著書に『宇宙世紀の政治経済学』(宝島社)、『ガンダムと日本人』(文春新書)、『教養としてのゲーム史』(ちくま新書)、『PS3はなぜ失敗したのか』(晋遊舎)、共著に『超クソゲー2』『超アーケード』『超ファミコン』『PCエンジン大全』(以上、太田出版)、『ゲーム制作 現場の新戦略 企画と運営のノウハウ』(MdN)など。

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