アップル初のAR/VRヘッドセット「Reality Pro」は開発に7年もの歳月をかけ、リッチなハードウェア仕様ゆえに小売価格は40万円超との噂があったばかりです。
今度はソフトウェアやコンテンツ面について、プログラミングのできないユーザーでも音声アシスタントSiriを通じて独自のARアプリを作り、配布できるツールを用意しているとのうわさがあります。
発信源であるThe Informationは、ここ数年にわたり独自の情報源からアップル製VRヘッドセットの進捗状況を報じてきました。現在、ヘッドセットの予想レンダリング画像として出回っているものも、元はといえば同誌が報じた予想図がベースとなっています。
同誌によると、このソフトウェアツールを使うことでコンピュータ・コード(プログラミング言語)を知らない人でもSiriを通じてARアプリを作り、App Storeで他の人にも配布できるようになるとのこと。
たとえば3Dモデルを自分でゼロからデザインしたり、アニメーションや3D空間での動きを計算するといった技術がなくても、Siriとの対話でバーチャル動物が現実の空間を動き回るアプリを作れるといった仕組みです。具体的なイメージとしては、誰でも3Dツールを使って世界を構築できる「Minecraft」や「Roblox」を挙げています。
アップルが2017年に買収したスタートアップ「Fabric Software」の技術を基盤としており、同社が3年以上前にリリースした iOS / iPadOS向けAR作成ツール「Reality Composer」をヘッドセット向けに拡張する可能性をあるとしています。
具体性のあるレポートではあるものの、情報源として2019年にツールのデモを見たという人物の話を引用しているため、現在ではそれ以上に開発が進んでいるか、あるいは開発が中止された可能性も否定できません。
とはいえ、VRヘッドセットで競合するMetaも、ソーシャルVR「Horizon Worlds」向けにコーディング知識なしに3D空間を構築できるツールを提供することで、VRChat のようにユーザーの創造力を活用してコンテンツを増やすことを狙っており、アップルがその後に続くことも不思議ではありません。
またアップル自体も、ヘッドセット用のARコンテンツを開発中とのこと。同社のヘッドセット向けコンテンツ戦略に詳しい人物によると、Appleの幹部らは瞑想や運動を支援するARアプリの提案を含め、健康とウェルネスを重視しているとのことです。
初期のARデモの1つは、ユーザーが「禅の庭に座る」(座禅を組んで庭に座る?)ものもあったと4人が証言しています。また初期のアップル幹部向けARデモでは、米国の絵本作家ドクター・スースの冒険絵本「きみの行く道」の幻想世界と現実世界を融合させ、ユーザーがその中を歩けるものもあったとのこと。
Apple Watchがスマートウォッチ市場で成功したのも、健康とウェルネスというユーザーに分かりやすい価値をアピールしたことが大きいとは多くの論者が指摘することです。
AR / VRヘッドセットのように、すごい技術であったとしても日常生活での実用性が伝わりにくい製品が人々の心を広くつかむには、体調を整える役に立つという分かりやすい実用性が必要と考えたのかもしれません。
アップル初のヘッドセットは今年(2023年)春に正式発表、秋には出荷を迎えるとみられています。アプリがホーム画面に格子状に配置されて並び替えできるiOS風のインターフェース、10以上のカメラによる視線および手の動きの追跡、Macの外付けディスプレイとしても使うことができるとの噂もありました。
もしも秋に製品を出荷するのであれば、おそらく6月に開催されるWWDCでソフトウェア開発ツールが発表される可能性がありそうです(むしろ発表しなければ、製品ローンチ時のサードパーティ製アプリ開発が間に合わない)。そのツールから、さらに具体的な情報が引き出されると期待したいところです。