アップル初のAR / VRヘッドセットは開発が遅れに遅れた末、ようやく今年6月のイベントWWDC(世界開発者会議)で初公開されるとの予測が有力でした。
しかしまたもや遅れが生じ、WWDCでも発表は見送りになるとの説を唱える有力アナリストを現れました。その一方で、すでに第2世代ヘッドセットが準備中であり、2025年には第一世代を引き継ぐハイエンド機に加えて、購入しやすいローエンド機の2種類が発売されるとの情報も出ています。
アップルのサプライチェーン情報に詳しいMing-Chi Kuo氏は、第1世代ヘッドセットの大量出荷スケジュール予想に変更はないとしつつ、発表が遅れると示唆。さらに2023年第3四半期に「iPhone 15」とともにローンチする可能性が高まっていると述べています。
今回の遅延がどんな理由かは、詳しく触れられていません。が、昨年末に遅れを予想したときの「ソフトウェア関連の問題により」とのツイートを引用していることから、ハードウェアの欠陥ではなく、引き続きソフトの調整に手間取っているとほのめかしているようです。
これまでKuo氏はヘッドセットの発売予想時期を「2023年第2四半期(4~6月)」から「2023年の後半」に修正していました。さらなる遅延ということは、iPhone 15と同時に9~10月発表、年末以降に発売と解釈できるでしょう。
さて第2世代ヘッドセットに関して、Kuo氏はブログ記事で詳しく述べています。
それによれば、アップルの第2世代AR/VRヘッドセットは(高価な)ハイエンドモデルと(廉価な)ローエンドモデルの2種類あり、どちらも2025年に発売される予定。ハイエンド版は中国Luxshareと台湾Pegatron(どちらもアップルの組立サプライヤー)の合弁会社Luxcaseictが製造、ローエンド版はFoxconnが組み立てる予定とのことです。
ちょうど数日前、Nikkei Asiaが初代AR/VRヘッドセットの製造をLuxshareが受注したと報じたばかり。同誌は第2世代ヘッドセットのうち廉価版をFoxconnが生産準備中とも述べており、Kuo氏の見解と一致しています。
ただ、気になるのがKuo氏のレポートで、アップルがARに楽観的な一方で、サプライヤー側がアップルとの協力に前向きではなく、電気自動車などの新規事業に投資を優先していると指摘されていることです。それは、初代ヘッドセットの出荷台数が極めて少なく、Luxshareが短期的に利益を得ることは難しいという観測と関連があるようです。
アップルの初代AR / VRヘッドセットは高解像度のマイクロOLEDパネルを片目ずつ1枚の計2枚、高度なカメラやセンサーほか最先端技術を山積みしているため、およそ3000ドル(約40万円)前後になるとの予測が一般的です。
要は初代製品が高すぎるため販売台数も限られ、サプライヤーにとって美味しい受注ではない。アップルとしても今後ユーザー数を増やしていき、サプライヤーに乗り気にさせるには、より安価で出荷台数も伸びやすいローエンド製品を用意するのは必然、ということでしょう。
ローエンド版がどのぐらい安くなるのか、まだ十分な情報は出ていません。初代ヘッドセットの製品イメージをいち早く伝えていたThe Informationは、プロセッサーをMac級からiPhone級に落とし、センサー類を減らして画面も低解像度に置き換え、iPhone並みの価格を狙っていると報じていました。
初代ヘッドセットはApple Watchのようなデジタルクラウン(竜頭)を捻ることでARとVRを自由に行き来でき、FaceTimeベースのビデオチャット機能や会議室を備え、カスタム(度付き)レンズにも対応。手と目をトラッキングすることで物理コントローラーなしの手ぶら操作ができ、Macの外付けディスプレイとしても使える付加価値を備えるとされています。
おそらくアーリーアダプターや開発者以外のユーザーの多くは「そこまで求めていない」、単純に高価すぎて買えないことを考えれば、アップル製AR / VRヘッドセットの本格的な普及はスペックをそぎ落として安価にした第2世代以降を待つことになりそうです。