Ankerのカード型忘れ物防止タグ「Eufy Security SmartTrack Card」はAirTagを補完できるか(西田宗千佳)

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西田宗千佳

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フリーライター/ジャーナリスト

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1971年福井県生まれ。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、ネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。

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筆者はアップルの忘れ物防止タグ「AirTag」を愛用している。発売以来荷物などにつけているから、もうすぐ使い始めて2年ほどになる。

とても良い製品だとは思うが、不満点もある。分厚くて、使いにくい場面もあることだ。

そこに解決策をもたらす新顔が現れた。

Ankerの「Eufy Security SmartTrack Card」だ。出荷開始と同時に、Amazonではすでに売り切れとなっている人気製品である。

▲AirTag(左)とEufy Security SmartTrack Card(右)。AirTagは財布に2年入れ続けているものなので、傷などが目立つ点ご容赦を。

▲Eufy Security SmartTrack Cardのパッケージ。価格は3999円(税込)

どの辺が便利であり、AirTagや他の忘れ物防止タグとの違いはどこにあるのか? 筆者も予約して購入しているので、ちょっと確かめてみよう。


※この記事は、毎週月曜日に配信されているメールマガジン『小寺・西田の「マンデーランチビュッフェ」』から、一部を転載したものです。今回の記事は2023年3月6日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額660円・税込)の申し込みはこちらから。コンテンツを追加したnote版『小寺・西田のコラムビュッフェ』(月額980円・税込)もあります。



「忘れ物防止タグ」とは

最初に「忘れ物防止タグ」の仕組みをおさらいしておこう。

すごくざっくり言えば「Bluetoothの電波を使い、機器がある場所を把握する機器だ。といっても、把握の方法には、さらに3つのやり方がある。

1つ目は「スマートフォンの近くにあるかどうかを把握する」方法。スマホとBluetoothで通信できる範囲にあるかを把握する、というやり方であり、一番シンプル。欠点は「スマホを持っていないとタグも意味を持たない」ことで、現実的には「スマホを持ち歩いているとき、自分の近くから荷物が数m以上離れた」ことを認識する仕組み、といっていい。

これだけでは不便なので、より本格的な手法として使われているのが、「あらゆる場所にある対応機器と連携する」方法だ。自分のスマホだけでなく、街中にある機器や他人のスマホとも連携すれば、離れた場所にいる忘れ物防止タグの場所も把握できる。

AirTagにしろ「Tile」や国産の「MAMORIO」も、使っているのはこの手法。ただAirTagが有利なのは、アップルの「探す(Find My)」ネットワークを活用できる点だ。

忘れ物防止タグの課題は、「いかに機器を探すためのネットワークを作るか」にある。一般には同じ忘れ物防止タグを使っている人同士でネットワークを作るが、それだと数が少なくなるので「世界中を網目状にカバーする」のは難しくなる。だから、駅などに感知用の機器を設置してもらい、実効性を高める仕組みを採用するところもある。MAMORIOはこのパターンだ。

一方、この課題を解決してしまったメーカーもある。それがアップルの「探す(Find My)」ネットワークだ。世界中の人が持っているアップル製品(主にはiPhoneだが、MacやiPadでもいい)をすべて「探す(Find My)ネットワーク」の中に組み込むことで、他社とは文字通り桁違いのカバー率を実現している。

さらに、AirTagには3つ目の手法として「UWB」を組み込んでいる。UWBはBluetoothよりさらに狭い範囲を想定した短距離通信技術だが、これを活用することで、「どの方向・どのくらい離れた場所にAirTagがあるか」をピンポイントに把握可能になる。ただしこれは、UWBを搭載したiPhoneでしか使えない。

▲AirTagとiPhoneを組み合わせると、UWBで「どの方向・どのくらい離れた場所にAirTagがあるか」がわかる

というわけで、これら3つの方法は「自分の周囲数メートルから離れたときに有効」「街のどこにあるかを把握するのに有効」「同じ部屋のどこにあるかを把握するのに有効」と、それぞれ価値が異なっており、全部兼ね備えているのがAirTagだ……ということになる。

AirTagの弱点をカバーする製品

その上で、AirTagには複数の弱点がある。

まず「iPhoneかiPadを使っている人でないと使いづらい」こと。初期登録すらできない。

次に「形状にバリエーションがない」こと。分厚いボタン型で、キーリングなどをつけるにもホルダー的なものを併用しないといけない。鞄の中に入れておくならいいが、鍵につけたりするのが面倒だ。また、財布の中に入れる場合にも、厚みが邪魔になることが多い。

というわけでようやく本題。この2つの課題を解決する商品として出てきたのが「Eufy Security SmartTrack Card」、ということになる。

▲Eufy Security SmartTrack Cardのパッケージに入っているもの。本体とマニュアルのほか、クリップが付属

Eufy Security SmartTrack CardはAnkerの製品だが、アップルの認証を得て「探す(Find My)」ネットワークが使える。

他方で自社アプリ「Eufy Security」も使えるので、Androidしか持っていない場合でも使える。ただし、「Eufy Security」は基本的に、前出の「スマートフォンの近くにあるかどうかを把握する」ことにしか使えない。

すなわち、
・iPhoneやiPadと組み合わせるとAirTagに近いことができる
・Androidだけでも限定的な忘れ物防止タグとして使える
と考えればいいだろう。

その上で、写真のように形状がカード型。

▲Eufy Security SmartTrack Card本体はほぼクレジットカードと同じサイズ

薄すぎて曲がっているのが気になるが、無理に力をかけなければ問題なさそうだ。AirTagの「形状」に関する課題をカバーする製品としては有用である。

▲薄いせいか、最初からちょっと曲がっている。ちょっと不安だが、用途を考えると、曲がっている部分に強い力をかけるようなことはないだろうから、さほど問題ではない

この種のカード型忘れ物タグはいくつもある。ただ、「探す(Find My)」ネットワーク対応のものはまだ少ない。昨年「Chipolo CARD Spot」という製品が発売になっているのだが、Eufy Security SmartTrack Cardはそれに続くもの、と言える。

Chipolo CARD Spot

ただ、Chipoloのものが5000円程度で売られているのに対し、Ankerの製品は3990円と1000円ほど安い。今回は、せっかくの新製品なのでEufy Security SmartTrack Cardを選んだ次第だ。

実は財布よりパスポート向けだった

さっそく財布に入っているAirTagと入れ替えて……と思ったのだが、ちょっとここで冷静になった。

筆者の場合、どうも財布の中のAirTagと入れ替えても、あんまりいいことはなさそうなのだ。

たしかに、AirTagは財布の中で邪魔なのだが、そもそも財布が分厚いので、小銭入れの中でちゃんと定位置さえ決まってしまえば、そこまで問題なかったのである。

▲普段使っている財布とAirTag。財布の中で邪魔といえば邪魔なのだが、入ってしまえばさらに厚くなるわけでもない

「だったら買う意味ないじゃん……」という話になるのだが、そうでもなかった。

これは買ってから気づいたことなのだが、SmartTrack Cardには「クリップ」がついてくる。パスポートなどにSmartTrack Cardを留めて使うことを想定したものだ。

AirTagをパスポートケースの中にも入れていたのだが、こちらは明確に邪魔だった。写真のようにクリップをつけて挟んでしまえば、かなり使いやすくなる。

▲クリップをつけるとパスポートなどに挟んでおける。写真ではあえて表側に見せているが、実際には反対にして挟み込む

というわけで、筆者の場合は、パスポートと一緒に使うことに決まった。SmartTrack CardにはUWBがないので「部屋のどこにあるか」は判別できないのだが、パスポートは毎日持ち出すわけでもないので、その点は妥協できる。

安心して使えるが「3年使い捨て」がちょっと気になる

設定はシンプルだ。「Eufy Security」アプリと「探す」アプリで登録をするだけでいい。特別な設定もない。

前述のように、「街中でどこにあるか」を認識するには「探す(Find My)」ネットワークとの連携が必須なので、「探す」アプリへの登録が必須になる。iPhoneでしか使わないなら、「Eufy Security」アプリを使う意味はあまりない。

五反田駅前のカフェで位置認識をしてみたが、ちゃんと出てくる。とはいえ、画像は手元にiPhoneを持っている際のものだから、「ちゃんと動いているんだな」と判断できた以上のものではない。自宅に置いてきて位置を確認してみたが(プライベートな情報が絡むので画像は公開できない)、こちらでもちゃんと位置把握はできた。謳い文句通り、「探す(Find My)」ネットワークを使うアップル製品と同じ、と考えていい。

▲「探す」アプリで位置を確認。上がSmartTrack Cardで、下がAirTag。位置は当然同じように出る。UWBがあるAirTagには「探す」メニューが出るのが違い

一方、Androidでの利用も含め「探す(Find My)」ネットワークを使わないなら、「Eufy Security」アプリから、スマホの近くにあることを把握できる。

▲一見「探す」アプリに見えるが、iPhone上の「Eufy Security」での画面。タイミングの問題かちょっと場所が上記写真からずれているが、本質的な問題ではない

▲Galaxy Z Fold 4で「Eufy Security」を使ってみた。置き忘れ通知などに使うならこれでもいい

というわけで、設定ができてしまうと拍子抜けするくらい普通に使えるので、それ以上語ることもない。安心して使える製品と考えて良さそうだ。

1点懸念があるとすれば、バッテリーの交換や充電はできない、というところだろうか。AirTagは1年強で電池を交換して使う形だが、SmartTrack Cardのバッテリーは交換できない。ただし、スペック上では3年間動作する、とされている。

4000円を3年で使い捨て、というのはもったいない気もするが、3年も経てば新しい製品も出てくるだろうから、いろいろ見直すことも考えるとちょうどいいくらい、とも言える。

4000円で3年掛け捨ての保険、と思って使うのが良さそうだ。

それでも、リユース・リサイクルが重要な昨今。メーカーとしては、使い終わった後にリサイクルし、また次の製品を買ってもらう仕組みを組み込んでおいた方がいい、とは思うのだが。


Apple AirTag 4個入り
¥13,031
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
《西田宗千佳》

西田宗千佳

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