昨年イーロン・マスク氏が買収して以来、Twitterは混乱が続いています。収益改善のためサードパーティ製クライアントを締め出そうとAPIアクセスを制限したところ、大量解雇でエンジニアも少なかったため、自らにはね返り不具合が起こった事態も記憶に新しいところです。
こうした状況を見て、Twitterから流出したユーザーの受け皿、あるいは後がまを狙う動きが諸方面で進んでいます。
その筆頭に挙げられるのが、Twitterクライアントアプリ開発者らが相次いで駆け込んでいるMastodonでしょう。
またTwitterの創業者ジャック・ドーシーも分散型の代替SNSに取り組んでいます。
そんななか、Facebook親会社のMetaがTwitterのようにテキストベースながらも、Mastodonのように分散型のSNSを立ち上げる計画を練っていることが明らかとなりました。
米MoneyControl とPlatformerによると、MetaはMastodonにも使われている分散型SNSプロトコルActivityPubを使って「従来のサービスとは独立した、テキストベースのコンテンツ」アプリを構想しているとのことです。
このアプリはInstagramの認証情報を使って登録/ログインでき、開発コード名は「P92」。アプリの機能や特徴を詳しく説明した社内資料はあるものの、アプリの本格的な開発が始まっているのか、まだアイディア止まりなのかハッキリせず。開発チームに近い事情通は「まだ作業中だ」と言葉を濁しているようです。
しかしMetaの反応は素早く、この記事が事実だと認める声明を発表。広報担当者は「テキストで近況やアップデートをシェアするための、独立した分散型ソーシャルネットワーク」を模索しており、「クリエイターや公人が自分の関心事につきタイムリーな最新情報を共有できる独立した場所」にはチャンスがあると信じている、と述べています。
MetaといえばFacebook時代に英データ分析会社ケンブリッジ・アナリティカに個人情報を不正使用させたことから、個人のプライバシーの扱いに疑念が寄せられがちです。が、MoneyControlが見た製品概要によると、サインアップ後はInstagramからのデータ共有は「ないとは言えないまでも、最小限」にされているとのこと。
分散型SNSは、ユーザーが自由にサーバーを設置して独自ルールを設定できる「インスタンス」同士を繋ぐしくみ。その使いやすさも、島宇宙のようなインスタンス間に属するユーザーらのやり取りが、どれだけスムーズにできるかに掛かっています。
記事執筆時点での仕様としては、「ユーザーが他のサーバーにいる人に自分の投稿を流せる」のは間違いなし。ただし、他のサーバー(インスタンス)にいる人とフォローし合ったりできるかはまだ不明です。
もっとも、このアプリがActivityPub対応であれば、Mastodonほか同じプロトコルを使っている他の分散型SNSとのやり取りはある程度は期待できるかもしれません。
さらにアプリの初期バージョンから、プレビュー付きのタップできるリンク、シェア可能な画像や動画、検証バッジなど、Twitterのような機能の実装も目指されているとのこと。
ほかフォローやいいね!もできるが、コメントやメッセージング(おそらくDM的な)は最初からあるかどうかは不明だが、「いずれ」搭載される予定だと報じられています。
なぜユーザー情報の集中管理を得意とするMetaが、分散型SNSアプリを選ぶのか。Platformerは、コンテンツモデレーション(投稿規制)に対するトップダウンの姿勢や、他ネットワークへの乗り換えを困難にして競争を阻害する行いに対して、規制当局の厳しい監視の目が向けられている事情があると指摘しています。
実際、まさにTwitterが競合のInstagramやMastodonへのリンクを禁止した一件もありました。
それでも、これまでに分散型SNSは世界規模に発展もかなわず、高い収益性を実現しているとはいえません。先月Fedivese(Mastodonなどを含めた分散型SNSの総体)のアクティブユーザー数は約260万人に過ぎないとのデータもあり、20億人以上のデイリーユーザー数を擁するFacebookと比べれば誤差に過ぎない範囲に留まっています。
逆にいえば、Twitterを大きく上回るInstagramユーザー人口が繋がる導線が引かれ、Metaの豊富な資金がアプリやサービスに注ぎ込まれるのであれば、分散型SNSは今度こそ本当にブレイクするのかもしれません。