SpaceXは、大型ロケット兼宇宙船Starshipの初の起動試験飛行への準備をほぼ調えており、あとは米連邦航空局(FAA)の承認待ちといった状態でしたが、その承認が米国時間金曜日の午後に下り、正式に試験打ち上げの日程が4月17日に決定されました。
FAAは声明で「包括的な打上げライセンス評価により、FAAはSpaceXが安全、環境、政策、ペイロード、空域統合、財政的責任の要件をすべて満たしていると判断した」とし、この承認が5年の有効期間を持つと述べています。
Starship打ち上げのために必要だった規制当局の認可の最後のひとつが下りたことで、Starshipリフトオフの予定日時は現地時間(CDT)で4月17日の7時になることが決まりました。これは日本時間では17日21時になります。
また、もし打ち上げまでの間になにか技術的な問題や不具合が発生したときに備え、4月18~19日もバックアップ用の日程に指定されています。イーロン・マスク氏が事前にTwitterで「4月第3週」と述べていたとおり、SpaceXはすでにテキサス州ボカチカの施設周辺で4月17日から数日間、道路、上空、海上の通行の制限や注意喚起を設定しています。
Starshipの軌道試験飛行は、上段ブースターとペイロード区画が合体した設計のStarship本体に、1段目ブースターとしてSuper Heavyを統合したフルスタック状態で行われます。SpaceXはこの試験飛行を「integrated flight test(統合飛行試験)」と称しています。
FAAの承認後すぐに出された最新の飛行計画によると、打ち上げ開始後Super HeavyはStarshipを宇宙空間まで押し上げて分離、テキサス州から約30~35km離れたメキシコ湾に制御された状態で「着水」することになっています。また、Starshipのほうも高度235kmの「ほぼ軌道到達」をクリアしたのち、惰性で約1時間「ほぼ軌道」を飛行、打ち上げから90分後にハワイ・オアフ島の北約225kmの沖合に、こちらも「着水」する予定です。SpaceXは「最初の飛行試験では、チームはStarshipの垂直着陸やSuper Heavyブースターのキャッチを試みない」と述べています。
SpaceXといえば、もはやロケットブースターの垂直着陸と再利用がお家芸と化していますが、Starshipの場合は今回が初の軌道試験飛行であるため、あえてフックによる回収や垂直着陸を行わず、ブースター、本体ともに打ち上げ性能と将来の回収のためのデータ取りにフォーカスするとのことです。
Starshipは開発期間短縮のために、実験的な手法を用いた開発を行って来ました。今回の初試験飛行が、予定どおり何事もなく完了する保証もありません。たとえばSN8、SN9、SN10と呼ばれたStarshipのプロトタイプは、いずれも必要な試験の最中に爆発しています。
3月上旬に行われたモルガン・スタンレーのイベントでは、マスク氏が初の軌道試験飛行が成功する確率は50%だとインタビューに答え「軌道に到達するかどうかはわからないけど、興奮することは保証するよ」と述べて聴衆の笑いを得ていました。ちなみに、SpaceXがウェブページに示しているカウントダウン中のイベントリストでも、最後のTマイナス0秒のところには「Lift Off」ではなく、「Excitement Guaranteed(保証付きの興奮)」と書かれています。