アップルが長年かけて開発してきたと噂のAR/VRヘッドセットは、一時は量産が遅れているため6月の世界開発者会議WWDC23での発表も見送られるとのアナリスト予測もありました。
が、その後にアップルの内情に詳しい著名ジャーナリストMark Gurman記者が、ヘッドセットは「ショーの主役になる」としてWWDCでの発表は確実と主張し、あと1カ月半ほどでお披露目されるとみられています。
そこで最も心配されていたのが、なんと言ってもアプリ不足です。まだ外部の開発者にサンプルや開発機材も渡されておらず、年末発売としても、WWDCから数カ月でゼロから豊富な専用アプリを用意するのは間に合わないと危ぶまれていました。
が、Gurman氏は新たな記事で、何百万本もあるiPadアプリをヘッドセットで使えるかもしれないと報じています。
アップルの計画に詳しい情報筋によると、同社はヘッドセットの3Dインタフェースを使ったスポーツやゲーム、ウェルネス体験アプリを開発しているそうです。アップルは定額制ゲームサービス「Apple Arcade」を持っているほか、Apple Watchユーザー向けフィットネスプログラム「Fitness+」を展開しており(日本では未提供)、自社サブスクリプションを新プラットフォームでも提供するのは理に叶っています。
また昨年6月には『アイアンマン』や『マンダロリアン』で知られるジョン・ファブロー氏らハリウッド映画の大物をヘッドセット用コンテンツ開発に起用したとの報道もあり、年末には「VRで3Dコンテンツを再生できるヘッドセット」向け動画サービスの構築を検討しているらしき求人情報も確認されていました。
今回のニュースで最も注目すべきは、やはりiPadアプリへの言及でしょう。アップルは努力の大半を「仮想現実と拡張現実を融合させた新型ヘッドセット用にiPadアプリを適合させること」に注いでおり、「サードパーティーの開発者が提供する何百万本もの既存アプリを、この新たな3Dインタフェースで利用できるようになる」見通しだと伝えています。
ほか、予想されているアプリを以下に箇条書きしておきます。
カレンダー、連絡先、ファイル、ホームコントロール、メール、マップ、メッセージ、メモ、写真、リマインダー、音楽、
ニュース、株式、天気予報などのアップル製サービス
ヘッドセット版FaceTimeとApple TV+。「iPadアプリと似たような機能を持つ」との情報
カメラアプリもテスト中。噂の(外側にある)複数のカメラを使って写真を撮れる可能性あり
Apple BooksでVR読書をしたり、ヘッドセット瞑想ができるかも
「フリーボード」(iPhoneやiPad、Macユーザーが共同作業できるホワイトボード)のヘッドセット版は、複合現実で他人と共同作業できる可能性あり
スポーツ観戦を「よりリッチな体験」にすることも目指している(2020年に音楽ライブやスポーツ等の360度動画配信を行うNextVRを買収済み)。
ゲームは「このデバイスの魅力の中心的な部分となる」
ヘッドセットのホーム画面とコントロールセンターもiPadに似ている
アップル製ヘッドセットは高度な視線およびハンドトラッキングを実現(そのため内外に10個以上のカメラを搭載)、高解像度のマイクロ有機ELパネルを片目ずつ1枚の計2枚、ログインや決済できる虹彩スキャン、VRとARを切り替えられるデジタルクラウン(竜頭)などのハイテクが満載。そのため価格も約3000ドル(約40万円前後)になるとの予測が有力となっています。
また、これだけの高負荷処理をスタンドアロンで行うために、Mac並のプロセッサやMac並みの96W電源アダプターを同梱し、腰に着けた外付けバッテリーも2時間しか持たないとの噂もありました。
高性能・高価格・高消費電力と三拍子そろっているため、アップル社内予想でも初代の大ヒットは考えづらく、2025年の第2世代で廉価版に期待しているとの報道もありました。
アップルとしては、初代Apple Watchに100万円超のEditionモデルがあったものの実用性はほぼ皆無の状況から、世代を重ねて健康関連センサーなど追加してスマートウォッチ業界の覇者に押し上げた成功体験を思い描いているのかもしれません。