急成長中の中古スマホ市場、リファービッシュ品プラットフォームBack Marketの取り組みとは(石野純也)

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石野純也

石野純也

ケータイライター/ジャーナリスト

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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

特集

スマホなどのリファービッシュ品を取り扱うBack Marketが、急成長しているという同社の取り組みを解説しました。19日の説明会には、本国から来日したCEOのティボー・ユグ・ドゥ・ラローズ氏が登壇。日本代表の山口亮氏も、日本での展開について解説しています。

Back Market は21年に日本に上陸したフランス企業。リファービッシュ品を直接みずから販売するかわりに、業者が参加する「プラットフォーム」を展開する点が特徴です。

▲Back MarketのCEO、ラローズ氏が来日。同社の取り組みを説明した
▲リファービッシュ品を販売するプラットフォームを展開しているBack Market

ラローズ氏によると、同社のミッションは「リファービッシュをユーザーの第1の選択肢にすること」。「何十年もの間、世界中でテクノロジー製品が過剰消費、過剰生産され、これによって多くの原材料を費やされ、二酸化炭素の発生源になっている」ことに疑問を呈し、立ち上げたのがBack Marketというプラットフォームとのこと。

▲新品ではなく、リファービッシュ品をユーザーの最初の選択肢にするのが同社のミッションだという

プラットフォームと銘打っているのは、同社自身が直接的にリファービッシュされた製品を販売していないからです。ユーザーに対して販売を行うのは、Back Marketに登録した個々の店舗。日本のBack Marketにも、大小さまざまな事業者が登録しており、Back Marketを通じて購入した製品もそこから届く仕組みです。リファービッシュ製品版の楽天市場やAmazonと言えば、その役割はわかりやすいかもしれません。

▲Back Marketを見ると、販売者が明記されている。あくまで立ち位置は中古のスマホなどに特化したマーケットプレイスだ

Back Marketが提供する価値は「プロセスを設けて厳格な審査を加えること」(ラローズ氏)。独自の基準を設けて、それに沿って製品のランクを表示するなど、その「役割はきちんと品質を保証すること」(山口氏)と言い換えることもできます。単に基準を設けるだけでなく、身分を隠して購入するミステリーショップなどを通じて、本当にうたい文句どおりの製品が届くかどうかのチェックまでおこないます。

▲品質保証の基準を設け、それを保証するのが同社の役割だと語る山口氏
▲「品質憲章」と銘打った基準が設けられており、販売者もこれを満たしている必要がある
▲ミステリーショップで“抜き打ち検査”を行い、品質にブレがないかどうかをチェックするのも同社の役割だ

ただし、同社のリファービッシュ品は、一般的な定義とはやや異なっている点には注意が必要です。リファービッシュという言葉が一般に浸透しているかどうかはさておき、少なくとも、アップルやキャリアなどがリファービッシュや整備済みをうたって販売、もしくは交換に使用する製品は、外装のパーツが交換されているなど、見た目だけでは新品との区別ができません。これに対し、Back Marketで販売する製品について山口氏は「修理していることは必須ではない」と言います。

▲Back Marketのリファービッシュ品の定義。メーカーやキャリアの認定中古もリファービッシュを名乗っており、外装交換されているものも多いため、実際より四角が大きすぎる印象も。日本の場合、中古の品質も高いので、どちらかと言えば実態はもう少し左寄りのイメージになる

事実、日本のBack Marketに並べられている製品を見ると「Aグレード」のものでも微細な傷はついている場合があることが明記されています。同社の定義では「きちんと専門家やメーカーに検査され、すべての機能が動くことが補償されているもの」(山口氏)をリファービッシュ品と呼んでいるそうです。パーツの交換にも原材料は必要で、コストがかかるうえ、不要なCO2の排出もあります。そのため、同社は「使えるものは使っていくのがポリシー」(同)だとしています。

▲3段階でグレードが設けられているが、Aランクでもわずかながら傷があることも
▲ただし、Aランクであればその傷はほぼ見えないレベル。写真左はBack Marketの製品だが、新品との見分けがつかなかった

とは言え、一般的な中古店で販売されている製品も、各店舗やリユースモバイル・ジャパンのような業界団体が設定した基準で格付けはされており、動作チェックも実施済みです。

複数の店舗を束ねて統一基準で運用している点は、プラットフォームであるBack Marketならではと言えますが、リファービッシュという言葉から想起されるような新品同然の見た目ではなく、イメージとしては中古寄りである点には注意が必要になります。

少々複雑なのは、特に日本では、修理済みの端末が少ないことです。これは、電波法や電気通信事業法で定めている“技適”と関係があります。日本では、無線機の分解や組み立てを含む修理を行った場合、メーカーなどが取得した技適が失効する立て付けになっています。ただし、これでは修理がメーカーやその委任を受けた業者にしかできなくなってしまうため、2014年に「登録修理業者」という制度が設けられ、規制が緩和されています。

この制度ができて以降、マジメな事業者や、ぶっちぎって大炎上したことがある事業者は、登録修理業者としての登録を行うようになりました。日本でも、Back Marketで修理済みの製品を販売しようとした場合、「販売者自身が登録修理業者の資格を取り、直していただく」(同)ことになるようです。

▲2014年に制定された登録修理業者制度

ただ、登録修理業者は、事業者を丸っと認証する制度ではなく、端末ごとの登録が必要。iPhoneだけに絞っても、年4機種から5機種を新規で追加しなければならず、電波特性などまで調べなければならないため、コストもかかります。こうした事情もあり、修理依頼の少ない端末まで登録している事業者は限定的です。そのため、Back Marketで扱う端末は、どうしても未修理品、いわゆる中古品に限定されてしまうのが実情と言えるでしょう。

とは言え、日本ではスマホの中古市場も成長分野の1つ。新品、特にハイエンド端末の価格が高騰しているなか、比較的性能の良い中古品が選択肢に挙がりやすくなっているのも事実です。

Back Marketも、四半期ごとに取り扱い数を増やしており、「急成長している」市場だとラローズ氏。その規模は「昨年と比べると、3倍、4倍の売上げになっている」(山口氏)と言います。そのコンセプトから、転売の可能性がある未使用品は基本的に取り扱っていないといいますが、状態のいい中古スマホを必要としている人にとっては、いい選択肢の1つになりそうです。

▲中古スマホ市場の拡大に合わせ、同社の売上げも四半期ごとに伸びている

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《石野純也》
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慶應義塾大学卒業後、新卒で出版社の宝島社に入社。独立後はケータイジャーナリスト/ライターとして幅広い媒体で執筆、コメントなどを行う。ケータイ業界が主な取材テーマ。

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